幕間 散歩に連れていくか(おじいちゃん視点)
「実家の片付けは俺とユキとでやっておくから、親父は孫の相手をしておいてくれ」と、息子から言われた。
はんだごてを使って基板の修理を……というわけにもいかないから、外に連れていくことにする。
――はんだごてで、万が一にも、カケルに火傷をさせるわけにもいかない。
今日は外があったかいから、散歩に連れていくか。
近場ならいいだろう。
ユキさんからは、「何かあったらこのボタンを押すように」と、水色の防犯スイッチを預かっていた。
カケルが小学校に入った頃に使っていたもので、カケルのお下がりらしい。
息子の守は何も言わないように「している」。自分の子供の事なので、さすがにそれは分かる。
守がかつて通った、”丘の上小学校”に向かうこの道は、二本の道路の間に、細い川が流れている。
「今日はどこにいくの?」
カケルが、おれを見上げた。
「ん、そうだねぇ。スーパーに行って、おかし買って来たりするか」
「チョコバットがいいなぁ」
「へぇ、チョコが好きなの?」
「うん」
「スーパーにあるかなぁ。見てこよう」
「おじいちゃん、この前、そこの川の所で寝てたんだって?」
「えっ、なんで知ってるの?」
「パパがそう言ってたよ」
「ははは。パパ、おしゃべりだなぁ」
「『おじいちゃん、所かまわず寝る大物だからさ』って」
「まぁね! おじいちゃん山育ちだからさ。学校まで山道を2時間ぐらい走って通ってたんだぞ」
「2時間って! 遠すぎじゃない?」
「おじいちゃんの実家、すっごい田舎だったからねぇ」
コーラとミルクティーとコーヒーと、あとお菓子をちょこちょこ買って、家に戻る。
「あっ」
カケルがつまづいて転びそうになったので、前に回り込んで、斜めに軽く受け止める。
「ありがと」
「んあ? だいじょぶだいじょぶ」
道はイチョウの葉っぱで、まっ黄色だ。
春になれば、今度はあそこの公園が桜でいっぱいになる。
ただ、ぎんなんは変なニオイがするし、桜は散った花びらの掃除係が大変なんだよな。
毎年、なんか掃除係の話が回ってきてしまうから、困るんだけど。
「おじいちゃん、ちょっと競走してみる? 公園のとこまで」
「お? どうしようかなぁ?」
ちょっと前なら、「お? いいよ!」と即座に受けて立っていたところだ。
山育ちは伊達じゃない。腕相撲でも駆けっこでも、負けたことはなかった。
「スタート!」
「あっ」
抜け駆けで、孫は駆け出した。
あぶないから、おれはゆっくりと追いかける。
「ヨーイ! って言ってないぞ? カケル」




