幕間 ゲーム会社には『秘密保持』という掟があるらしい
「ねぇ、パパ」
――ん? なんだい?
「パパたちが作っているゲームって、ネットゲームなの?」
――ええと、急にどうした?
「こないだ、国会図書館に行ってきたでしょ。CCOをどうすればいいかって、カケルくんたちががんばってて」
――そうか。えらかったよねぇ、ハルくんたち。
「ネットゲームが入ったサーバーっていうのは、パパの会社にあるの? それとも”データセンター”っていうところにあるの?」
――うぇ?! どこでそんな言葉知ったの? データセンターとかさ。
「ハルくんのお家で、AIさんから聞いたの。」
――小4で生成AIを使い倒してんのか。油断してるとパパなんか、あっさり抜かれちゃうなぁ。
「どうなの? どっちにあるの?」
――うーん……。ミホ、ごめんなぁ。
「えっ?」
――そういう事は、もし仮にパパが知ってたとしても、守秘義務って言って、誰にも教えられないんだよ。……ミホにも教えられない。
「しゅひぎむって、何?」
――そうだなぁ。一般公開されていることだけなら言えるか。ゲーム会社がゲームを作るのに、どれぐらいの時間がかかると思う?
「ええと……、1か月ぐらい?」
――いやいや、ケタが違う。3年ぐらいはかかっているはず。
「さん年?!!」
――規模とか進み具合にもよるんだけどね。ミホが遊んでいるゲームは、ものによっては、ミホが幼稚園の頃から作り始めてるものもあるかもしれない。
「そんな前から……。全然知らなかった」
――すごい人数で、時間をかけて作っているからね。そんなゲームのヒミツやアイデアが、もし途中で外に漏れちゃったら、どうなると思う?
「ええと……」
――ほかの会社が、そのアイデアをマネして、先にゲームを発売してしまうかもしれない。そうしたら——
「そうしたら?」
――マネされた方のゲーム会社の人たちは、ご飯が食べられなくなるかもしれないんだよ。このお家も無くなるかもしれない。自分達のゲームが売れなくなったらね。
「えー。だったら、急いで作って、半年ぐらいで出しちゃえばいいんじゃないかなぁ?」
――いやいやいや、そうはいかない。プレイヤーさんが喜んでくれるように、クォリティ——ゲームの面白さをしっかり磨かないといけない。面白いものを作るには時間がかかるんだよ。
「そうなんだね……。じゃぁ、そんなに時間をかけて作ったゲームが、途中で終わりになっちゃうのは、どうしてなの?」
――サーバーを続けるのに必要なお金が、ゲームを売ることで入るお金を上回っちゃうと、ゲーム会社が損をするようになるんだ。損をしたままゲームは続けられないんだよ。会社は「利益」っていうのを出すためにあるから。
「リエキって、お金もうけのことだよね?
じゃあ、いっぱいお金が会社に入れば、ゲームは続くってことになるのかなぁ?」
――大雑把に言うとそうだね。利益が出ている間は、ゲームは続く可能性が高い。つまり、『支えてくれるプレイヤーさんたちがどれぐらいいるか?』っていうところなんだ。
「じゃぁさ。お金が入ってこなくなったゲームは、このあいだ行った国会図書館とかにあずけておく……とかはできないの?」
――それは難しいと思うよ? 理由はいろいろあって。……でも言えないけど。
「さっきパパが言ってた、しゅひぎむっていうもの?」
――まぁ、そんなところかな。ゲーム会社がネットゲームを外に預けるっていうのは、よっぽどのことが無い限りムリだと思う。現実的じゃない。そもそもそんなことを考えている会社さんは無いんじゃないかな。
「じゃぁ、パパも、CCOは無くなっても良いって思ってるってこと?」
――それはちょっと違うかな。
「違うの?」
――ミホ。これはわかっていてほしいな。ゲームを作った人たちは、自分たちが作ったゲームを、みんなに長く遊んでほしいと思ってるよ。クリエイターの素直な気持ちはそう。でも、現実ってものがあってね。だからまだムリなんだ。
「『まだ』って?」
――「まだ」あきらめない! っていう人が、ゲーム会社の中にも居るってことさ。全員ではないけどね。……まぁ……。
――ミホが大人になれば、いろいろとわかるようになるさ。




