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山のライバル

 ゆらゆらと、揺蕩う感覚。


 嗚呼、なんてえ事だよ。

 あれだけ頑張ったのにまた此処からか。


 大きな桃の中で俺はため息をついた。

 前回の反省点は明確だ。


 犬、猿、雉だよ!

 よくよく考えてみると食べ物につられてホイホイ寄ってくるようなのでは、戦場では役に立つはずもなかった。

 食料集めに労力と時間を取られたのも痛い。

 

 どうする……今回は犬、猿、雉が居ないパターンを試してみるか?

 

 と、その前に!

 

 「オギャアアアアア! オギャアアアアアア!」



 薄々は感じていた事なのだが、ループするたびに思考がクリアになったり、体が強くなったりと俺は強化されているようだった。

 そしてまた修練を積むことによって俺はさらに強くなれる!


 

 7才の秋、俺は山中を駆け回っていた。

 この山には、俺のライバルがいる。

 草木の間に見え隠れする、白い獣の後ろ姿。

 

 奴との出会いは6才の春、山菜採りに山へ入った時のことだった。

 ふきのとう、こごみ、タラの芽。

 山菜がいい感じに採れた俺は鼻歌交じりに荷物置き場へ戻った。

 

 そこには俺の昼飯に置いてあった『きびだんご』をガツガツと喰らっているでかくて白い山犬が居た。

 唖然としている俺を見ると、笑うようにフッと息を吐いた。

 コイツ!

 

 俺が動くと、山犬も走り出した。

 流石に速い。6才ボディでは追いつけぬ、と思っただろう!


 あれから、仲間がいないパターン。数を増やしてみるパターン。種類を増やしてみるパターン。

 度重なるループを経た俺はもう通常の6歳児のソレではないのだ!

 猛然と追いすがる俺をみてギョッとした山犬だったが、それがやつの闘志に火をつけたのか、さらなる加速を見せ縦横無尽に山中を駆け回った。

 

 負けた。


 くそう、6歳児相手に本気になるなんて大人気ない犬め。

 やつはとても速いので、『はやたろう』と名付けることにした。


 そうして7才になった現在も未だに『はやたろう』を捕えることが出来ていないのである。

 少しずつ距離は縮んできている、おそらく来年にはなんとか捕まえることができる……と思いたい。

 

 朝から走り回って、そろそろ昼を過ぎた頃合いか。

 「『はやたろう』もう帰るぞ。あと、じきに冬になるから暫くは来られない」


 口惜しいが、俺も色々手伝いがある。

 村は冬の備えに忙しくなる時期なのだ、お爺さんお婆さんだけに任せておくわけにはいかない。

 

 俺の声を聞いた『はやたろう』が近寄ってきて、いつものブツを要求してくる。

 きびだんごを渡すと、ガツガツと喰らい、フッと息を吐いて山中へと消えて行った。

 ウヌウ。

 

 戻るすがら、目についた食べられる物をひょいひょいと集めていく。

 実りの秋、村に着くころには籠はいっぱいになっていた。

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