きびだんご
その後、村の皆とめちゃくちゃ宴会した。
旅立ちの日、おばあさんが『きびだんご』を持たせてくれた。
これだよ、これ。こいつがなくちゃこの先やっていかれない。
お婆さんにあらためて感謝。
お爺さんもありがとう、腰を大事にね。
ゴン爺にも別れを告げ、村を出た。
次のやるべきことは仲間集めだ。
犬、猿、雉。
そして道中も腕を磨くことを怠らない。
走り込みを終え、野宿の準備を強いると、一匹の犬が寄って来た。
これはきびだんごチャンスではないだろうか。
きびだんごを差し出すと、フンスフンスと匂いをかいで、パクリと口にした。
きびだんごを食べ終えた犬は、俺のそばに寄ってきてゴロリと横になった。
これは良い感じで仲間に出来たようだ。
その後、犬は俺が作った晩飯も半分くらい食べた。
腹が減った。
昨晩はあまり食えなかったからな。
よく考えたら、犬の食事がきびだんごひとつだけで済むはずないんだよなあ。
そうなると、猿と雉についても同様に食事をなんとか工面しないといけないのだろう。
こいつは困ったことになった。
当然のように朝飯を要求してくる犬。
仲間が増える都度、食料確保のために時間を取られることが多くなってきた。
最初にきびだんごを渡したせいか、どいつもこいつもロクに自分で食べ物を探そうとしないのだ。
必然、自分の食糧確保のスキルは上がるものの、剣術の稽古が疎かになって行った。
だが桃太郎と言えば、犬、猿、雉だ。
このラインを守らないと、また何か酷いことが起こる気がする。
これでいい、自分に言い聞かせながら鬼ヶ島へと急いだ。
鬼ヶ島
鬼たちが住む、恐ろしい島だ。
当然行くには船が必要になるが、鬼ヶ島まで行ってくれる船頭さんなんていない。
あちこち駆けずり回って、ようやっとボロ船を一艘譲ってもらった。
当然漕ぎ手は俺しかいない。
手伝ってくれないかと言うが、猿は耳を抑えている。
鬼ヶ島にこっそり上陸した俺たちは、まず偵察をする事にした。
犬が鬼の匂いを辿っていく。
息を潜め、歩いて行くと鬼の住処が見えてきた。
珍しく犬が役に立っている。
いいぞ……。
ケ――――ン!
雉が、鳴いた。
犬は脱兎のごとく逃げ出した。
口を押さえている猿と俺の目が会う。
そして、鬼たちの雄叫びが響いた。
鳴き声を聞きつけた鬼たちが、こちらに迫ってくる。
くそ! 珍しく犬が役に立っていると思えばこれだよ!
目を隠していた猿が、早々に殴り殺された。
逃げ出した犬は足を踏み外し崖から落ちた。
飛び回っていた雉は鬼の投石により撃ち落された。
何の役にも立たない仲間たち。
これなら村人の方が何倍もマシだったぞ?!
覚悟を決めた俺は1人奮闘する。
山を逃げ回りつつ、鬼と戦う。
足場が悪い山を走り回るのは俺の方が慣れている。
鬼達を相手に何日も1人ゲリラ戦を繰り広げていたが、それも限界がある。
お腰につけたきびだんごも尽きてしまった。
疲労と空腹、睡眠不足が重なる。
迫る足音が聞こえても俺の体は動いてはくれなかった。




