仲間と赤鬼戦
ゆらゆらと、揺蕩う感覚。
また、負けてしまった。
鍛えた刃は確かに鬼に通用したが、俺が油断をしてしまったのが文字通り命取りだった。
落とし穴作戦が嵌りすぎて浮かれてしまった。
あの後、村はどうなったんだろう?
俺への罰なら俺が真っ先にやられたんだから鬼は引き返したのかな?
それともまた皆……。
俺に確かめるすべはない。
だがやり直すチャンスはあるんだ!
「オギャアアアア! オギャアアアア!」
そこからの俺は、鬼気迫るものがあった。
鬼退治のために鬼気迫るとか笑える話だよ。
だが、それでも俺はひたすら打ち込んだ。
お爺さん、お婆さんは勿論。
村の人々からも、心配の目を向けられるようになる。
今回、お千代ちゃんは俺を怖がって近寄ってはくれなかった。
それでもいい、なんとしてもこの村を、皆を守らなくてはいけない。
一心不乱に修行に打ち込んだ。その甲斐あってゴン爺から12才で刀を受け取った。
何をそんなに焦っているのか、そう問われたが答える事が出来なかった。
信じてもらえるだろうか? 3年後に赤鬼が来て皆殺されるのだ、と。
言葉に詰まる俺を、ゴン爺は黙って行かせてくれた。
残り3年、全てやれることをやらなくては行けない。
村で力仕事が必要な時は率先して買って出た。
体力づくりのため芝刈りをしながら山中を駆け回った。
そして、やはり肉が必要だ。
山で罠を仕掛け、猪を捕まえたりもした。
初めて捌いたときは、その匂いに吐いてしまった。
切った肉を鍋に入れ、煮て食べる。
調味料も乏しく、そんなに美味しくは感じられなかったが、強くなるためには喰らわなければならない。
14才の秋。
俺のあまりにも切迫した様子に、ゴン爺が理由を言うまで梃子でも動かんと家の前で座り込んだ事があった。
そうなると流石に黙ってはいられず、15才になると赤鬼が襲いに来るという話をした。
最後まで黙って聞いていたゴン爺は「そうか」と言うと帰って行った。
15才になった。
前と違う事は、今回の俺は厳しい特訓の成果なのかスクスクと背が伸び、村一番の長身となっていた。
そうはいっても7尺もある鬼から比べると頭ひとつ半くらいの差はあるが。
さらに大きな違いが1つ。
今回の戦いには村人の皆が協力してくれる事になったのだ。
俺の話を聞いたゴン爺は村の皆に話をしてくれたらしい。
村の皆は、俺があんまりひたむきに打ち込んでいる姿を見て、1度くらいは騙されてもいいかと腰を上げてくれたのだ。
優しすぎるだろ。
1人では作りきれなかった、落とし穴の底に杭。
さらにいくつかの罠を設置。村の皆は投げ網や油と火種の準備をして隠れて待機してもらっている。
準備は完全に整った。
果たして、ヤツはやって来る。
前回と同じように、悠々とした足取り、いいぞもう少しだ。
あと一歩で落ちる、と言ったところで。ピタリと赤鬼の足が止まった。
何故動かない、汗が額を伝う。
俺もうかつには動けない。
ニヤリ、といやな笑みを浮かべると、落とし穴を飛び越えた――
飛び越えた先で赤鬼は地面の中に消えて行った。
馬鹿が! その飛び越えた落とし穴は気づかせる用なんだよ!
穴に落ちた先で、杭が突き刺さったのだろう。
赤鬼の悲鳴が聞こえた。
「今だ!」
網を投げ込みさらに動きを封じると、油壺をなげつけ、火種を落とした。
今のお前がやったわけじゃないが、村を焼いた罪、償ってもらう!
「ウゴオオオオオオオオ」
赤鬼の断末魔が響き渡る。
俺たちの勝利だ!




