表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/19

とってんぱらりのぷう

 鬼の頭領が一際大きな声で唸り声を上げる。

 威嚇のつもりかもしれないが、あの黒い気配がない今の状態では迫力不足だ。


 ここにきて覚悟が決まったのか、後ろから噛みついて来る『はやたろう』たちの攻撃に対処するのを止めた。

 喰らいつかれようが、鎌で切りつけられようがお構いなしで執拗に俺だけを狙ってくる。


 怨念の籠った目、だが俺も負けじと睨み返す。

 お前たちが襲ってこなければおれは、コミュ障の村人として一生を終えていただろう、自業自得というものだ!

 

 振り回される腕をかいくぐり前腕を切りつけ、蹴り上げた躱して足を切りつける。

 弱体化した影響か、刃も通りやすくなっているのが分かる。鬼の頭領は手詰まりだった。


 激しいが、戦い自体はそれほど長くは続かなかった。

 山のような巨体が倒れ、動かなくなる。


 その後、黒鬼が現れる事もなかった。


 ホッと一息ついたところに『きぎし』が戻って来た。

 ヨーシヨシヨシと撫でまわすと少し嫌そうだった。

 

 ――

 

 鬼の拠点には宝物が沢山集められていた。

 おれはつつましく小さなつづらだけもらって帰る事にした。中身は空けてからのお楽しみだ。


 帰りの道中、『はやたろう』が道を分かれた。

 何やら新しい別の物語が始まるのだそうだ。今までありがとう、感謝の気持ちを込めて残っていたきびだんごを全部渡した。


 村に近づくと『まさるさん』が山に帰るという、まさるさんはこの後猿山のボスとの戦いがまっているらしい。

 鬼との激戦を乗り越えた『まさるさん』が負けるはずもない。鎌は選別に持って行ってもらった。


 『きぎし』は半分、俺の子どもみたいなもんで、おそらく向こうもそう思ってくれている。

 一緒に仲良く村に帰った。


 久々の家は良い物だ、お爺さんもお婆さんも元気にしていてくれた。

 小さなつづらを開けて見ると小判が詰まっていた。


 正直村で小判なんて使うこと無いんだけど、なんかピカピカしてるからヨシ。

 鬼ヶ島土産として村の皆に1枚ずつ配ったらちょうどなくなった。


 俺が村に戻り鬼退治が済んだと皆に報告。

 小判配りなどして三日三晩お祭り騒ぎが続いたが、それも収まってようやく日常が帰って来た。


 俺は今日、お婆さんの代りに川に洗濯をしに来ている。

 思えばこの川を桃に入って流れて来たんだなあ……目を閉じ、川の緩やかなせせらぎに耳を澄ませる。

 

 ふと目を開くと、川上からお椀が流れてきていた。

 お椀の舟には……。


 新しい別の物語が始まっていることを感じた。

 頑張れ、諦めなければなんとかなるぞ、と少し偉そうに先輩面してエールを送る。


 俺の物語はこれでおしまい。

 ここからは1人の村人、桃太郎としての人生が始まるのだ。


 さて、仕事をすませちゃいましょうかね。


 鬼の居ぬ間に衣類の洗濯、と。


 おあとがよろしいようで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ