頭領の秘密
一発でも貰えば即死級の攻撃が繰り出される中、少しずつ、少しづつ、だが、確実に傷を負わせダメージを積み重ねていく。
『はやたろう』は右足首に狙いを定めたようで、隙あらば牙を突き立てた。
鬼の頭領がそうかと構えれば、反対方向から『まさるさん』と俺が仕掛ける。
初めは余裕そうにしていた頭領も、思い通りに行かない事に苛立ってきている。
乱れた精神状態により攻撃に力みが生まれ、雑な動きになっていく。そこをさらに攻め立てられる、鬼の頭領にとっては悪循環だ。
だがこちらもそれほど余裕があるわけではない。蓄積していく疲労はかなりのものだ。
日が昇り始め、辺りが明るくなっていく。もうどれくらい戦い続けているのか、あとどれくらいで終るのか。
鬼の頭領は若干右脚の動きが鈍って来たくらいで、他は複数の傷口から出血しているもののダメージがどこまで通っているのかわからない。
内心焦りが生まれ始めていた時『きぎし』が来てくれた。
『きぎし』が不意を突いての急降下で鬼の右目に怪我を負わせた。
右側が死角になり、流れが傾き始めた。
グアア……
日が高くなった頃、弱弱しい声を上げ、小山のようなその巨体が倒れた。
これでやっと終わりか、そう思っていた矢先。
鬼の頭領の体から黒い瘴気が立ち上っていく。赤黒かった肌が赤一色になり、黒い瘴気は集まって1体の小柄な黒鬼の姿をとった。
黒鬼は俺たちの戦いの健闘を称えるかのように、パチ、パチと拍手して見せた。
なんだ?
そう訝しんだ直後、黒鬼は俺の目の前に立っていた。
なにっ?! 咄嗟に振るった刃は空を切り、腹に響く、すさまじく重い衝撃。
吹き飛んだ俺は吐血する。さらに打撃跡からは、体を蝕んでくる黒い瘴気。これは……?
俺のピンチに『はやたろう』と『まさるさん』が同時に攻撃を仕掛ける。
やめろ! と声を出す間もなかった。
黒鬼は背後に目でもついているかのように悠々と攻撃を避けると、それぞれ一撃ずつで吹き飛ばす。
血をまき散らしながら転がっていって行き、倒れたまま動かない。
その時、『きぎし』が飛んできた。
少しでも妨害しようと目の前を飛び回ろうとする。
やめろ! お前だけでも逃げるんだ!
黒鬼はハエでも払うかのようにきぎしを弾き飛ばした。
歯噛みする俺をあざ笑うかのように、今度はゆっくりと近づいてくる。
俺は力を振り絞って立ち上がり刀を構える。
だがそれも、いとも簡単に刀を摘ままれピクリとも動けなくなる。
なんだよ、これ、無茶苦茶じゃないか。
ここまで来て、こんなの……勝てるわけない。
俺の頭に伸ばされる鬼の手。
視界が黒く染まった。




