夜襲
目が覚めると辺りは真っ暗、月明りだけが頼りだ。
この暗がりに乗じて鬼の住処に夜襲を仕掛けてみようと考えている。
鬼の住処に誰も帰ってないことで異変には気が付いているはず。
夜も警戒はされているだろうが日中に攻め込むよりましなのでは無いだろうか?
ひとつ気がかりなのは、過去何度か挑戦した鬼ヶ島だが未だ鬼の頭領を見ていないと言う事だ。
鬼どもを束ねる存在はどれほど強いのだろう。
――
鬼の住処はあちこちに篝火が焚かれていて、見張り役と思われる鬼がウロウロしていた。
流石に一体も戻らなかったら警戒するか……。
だが、見張りは1体のみ、『まさるさん』の言わざるプロトコルで仕留められればチャンスはある。
足音を殺し、ジリジリと見張りの鬼に忍び寄り機会を伺う。
周囲を警戒している鬼が完全にこちらに背を向けた――
華麗に決まった俺と『まさるさん』の連携。
見張りの鬼の倒れる音さえ出さない徹底ぶりで、他に気が付いた鬼は居ないようだった。
鬼の住処は玉座がわりだろうか中央に盛土がされていて、鬼はその周辺で思い思いに寝ているようだった。
3体ほど眠っている鬼に引導を渡すと他に鬼の姿が見当たらくなった。
頭領がどこにいるのか……。
まさか今仕留めた中に頭領がいたなんてオチはあるまい。
そう思っていたすぐ近くで、盛土が動き出した。
俺が盛り土だと思っていたのは寝転がっていた巨大な鬼だったのだ!
体全体を構成するはち切れんばかりの筋肉。赤と黒が斑になった皮膚は禍々しい雰囲気を纏っている。
何よりでかい、ちょっとした山のようだ。
間違いない、こいつが鬼の頭領だ!
鬼の頭領はその巨体から想像もつかない速さで動いてみせた。
振り下ろされた右拳をギリギリで避けたが、地面をうがった拳の衝撃でよろめいてしまう。
とても反撃を入れる余裕はなかった。
背後から『はやたろう』が噛みつきにいったが足首に小さな傷をつくるので精一杯。
ドスドスと足踏みされて、簡単に振りほどかれてしまう。
力押しでは厳しい相手、かといって山まで呼び込んだとしてもこのサイズを想定した罠は作っていない。
幸い、こちらには仲間がいる。
鳥目の『きぎし』は夜の活動ができないので山で待機してもらっているが、それでも『はやたろう』と『まさるさん』がいるのだ注意を逸らしつつ戦える。
こちらの攻撃は小さな傷をつけるので精一杯。だが、逆を言えば小さな傷は与えられるのだ、ならば――
そこからはいつ終わるとも知れない、死と紙一重の持久戦の始まりだった。




