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第1章 光を探す目
【プロローグ】
──記録とは、誰かの心の跡。
風が吹いていた。
灰のような街を抜け、崩れた塔の間を抜け、
少女は歩いていた。
名はユナ。十七歳。
生まれたときから、空に星はなかった。
世界は光を忘れた。
誰もが自分の記録を削除され、昨日を覚えていない。
けれど、ユナだけは――夢の中で見た。
“光の樹”というものを。
無数の枝が夜空に伸び、
葉の一枚一枚が、誰かの記憶のように輝いていた。
「……あれは、本当にあったの?」
誰も答えない。
足元で乾いた砂が鳴るだけだった。
ただ、胸の奥で何かが小さく呼んでいた。
──見つけて、と。
その声を信じて、ユナは旅をしている。
光を、記録を、そして“何か”を取り戻すために。




