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HAMA/運命の逆賊  作者: わらびもち
第四章 イスダン迷宮
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第24話 悪く思うな

 「くっく……!人間というものは脆いな……!16年生きてこの程度とは……私達は生まれながらに強いからなぁ……哀れだなぁ!グランデュース!!」


 「ゔッ……!!」


 一つ一つの動きの速度スピードでは上回っている。天現融合に加えて“叢雲剣”も使っているから攻撃力も充分に足りていることだろう。だが瞬間移動という圧倒的機動力には追いつけない。No.6の動きは確かに鈍くはなっている。が、それに関してはオレも同様だ。むしろ少しずつ毒を身体に入れられている分、弱っていっているのはオレの方だ。

 No.6は能力スキルを昇華させてから常に魔眼を発動している。そのせいで瞬間移動のタイミングを予測しづらい。想像以上に戦闘が長引いてしまっているのはそのためだ。


 「しかしことごとく……貴様とは戦いたくないな…!!私の魔力が壊されていなければ!貴様などとうに殺せていたのだ……!」


 「はぁ……はぁ………そんなこと言うならな……お前が毒なんざ使わなければとっくに終わってんだ。…………こんなつまらねぇこと言ってんのはロックじゃねぇよな?戦いはもっと楽しむもんだろうがよ!!」


 「違ぇねぇ!私としたことが悪かったな!恨むのはどっちかが死んでからにしよう!!」


 オレの刀が、白い炎がNo.6の拳、脚、短剣と衝突する度に大きな衝撃を生んでいた。毒が筋肉を蝕んでいるのか、それとも天現融合と“叢雲剣”の掛け合わせで限界が近づいているのかは分からないが、刀を振る度に腕の筋肉がちぎれるような痛みに襲われた。何度斬ろうとしてもすんでのところで回避されてしまう。どうすればいい……?当たるまで斬り続けるか?それが妥当ではあろうが……もう少しやりようはないだろうか。


 「何を考えているんだ!?」


 「かッ……!!」


 No.6は目の前に現れ、オレは首を掴まれた。その掴んでいる腕をオレは力の限りに握り、八雲で斬ろうとした。そのときNo.6が短剣で攻撃しなかったのは間に合わなかったか、あるいはその攻撃の方が有効だと考えたからだろう。


 「楽しかったぞ!グランデュース!!」


 「ッ!?」


 「“魔攻拳”『穿魔ゼンド』!!」


 「がッ……あッ……!」


 魔力によって鋭くなった五つの指がオレの胸に突き刺さった。深く刺さった指は身体を完全に貫き、心臓も掠めていた。なんとか身体を捻ったために心臓が傷つけられることはなかったが、肋骨も砕けたせいで呼吸が苦しく、ほんの少し身体を動かすだけで肺の中に異物が入っていくのを感じた。


 「なん……だっ……今……の…は………。」


 なんとか左手で八雲だけは握っていたが、もはや脚に力は入らず、オレは膝をついた。地面に頭突きをし、八雲を地面に突き刺して身体を支えた。八雲からはいまだに白い炎が噴き出しているが、少しずつ赤い炎に戻りつつあった。肺からはゴロゴロという音が聞こえ、骨や筋肉からはギシギシという音が鳴っていた。


 「はぁ……はぁ……。魔攻拳……これは王のお力だ。王の武術、剣術、魔術……私達歴史の破壊者(デスティニー)はこれらを使うことができる!………流石に身動きも取れんか?……よく頑張った方さ。……人間の限界というものだろう……。」


 「ぐッ……。」


 身体が悲鳴をあげている。いや、悲鳴にもならないほど軋んでいる。自分の身体が言うことを聞かない。あと……あと一振りだ。八雲を……刀を触れるのはあと一回。それが限界だ。


 (ねぇ、ミラ!もう出ていいでしょ!?私が出たらアイツを止めるから!帰還石に魔力を……。)


 (いいや……その必要はねぇ。)


 (必要ないって……!)


 (次で勝てる……!セリアの魔力は……治癒に使えるか?)


 (……分かったよ。でも痛みを和らげる程度のものよ?)


 (充分だ……!)


 オレは八雲を握り、魔力を流し込んだ。逆流した滝のように炎が巻き起こり、その炎は八雲の中へと入っていった。異変に気づいたNo.6はすぐに構えたが、オレの傷では動けまいと油断している。オレは残りの魔力を脚に込めて高速の一太刀を繰り出した。


 「『天翔轟炎てんとのなるほ』……!!」


 「ッ!?“魔攻剣”『一咲乱カリズラ』…!」


 オレは突進しながら円を描くように袈裟斬りをし、No.6はそれに反応して技を繰り出した。短剣の刃とそれを超える鋭さの手刀が同時にオレの首を切り裂いた。呼吸器が損傷するほど深くはなかったが、それでも充分致命傷にはなり得た。傷が浅かったのは炎の熱がその刃を溶かしていたからだ。突進した勢いでオレはNo.6から10メートルほど離れていた。疲労のせいか毒のせいか、詳細には見えないが酷く血を流しているのは分かった。そしてオレの魔力は完全に底をついたのだろう。天現融合も“叢雲剣”も解除されてしまった。


 「………はぁ……はぁ………ふはは!!貴様は……貴様はもう限界だろう……!!私は……死んでなどいないぞ………!!感謝しよう!グランデュース……!!そしてもう会うことはない……私にも……王にもな……!!」


 「くッ……。」


 No.6はダメージのために足取りも悪く、呼吸も荒くなってはいたものの、今の一撃では決定打に欠けていた。殺せていない。オレの刃はヤツの命には届いていなかったらしい。No.6はゆっくりと、しかし確実にオレの前へと歩いてきた。


 「さらばだ……!」

 「……ぐあッ!?な、なんだッ!?」


 No.6が短剣を振り下ろそうとしたその瞬間、白い炎が彼を包み込んだ。炎は地面から、正確には地面の魔方陣から召喚されている。


 「ぐッ……くッ!いつ……仕掛けた………!?こんな……魔方陣を……いつ……!?」


 「……お前が作ったんだろ……主を召喚するための……魔方陣……。」


 召喚魔法は複雑なために、咄嗟に発動することはなかなか難しい。そして魔方陣というものは大半は一度発動すれば消滅するものだが、No.6の使った魔方陣からは魔力の残滓が感じられた。それをオレ用にほんの少し組み替え、刀に吸い込ませた炎を召喚したというわけだ。


 「焼き尽くせ……!『天翔嵐てんとのあらし』!!」


 「がッ………かッぁあ!」


 巨大な火柱が立ち上り、その熱気はオレの身体にも火傷を負わせた。炎が消えると煤になったNo.6が現れ、かろうじて息はあったがそう長くはもたないだろう。


 「王は……!」


 「?」


 No.6は充分に動かせない口を無理やり動かし、息も吸えない肺を使って大きな声を出した。


 「……王は始まりである。王は終焉である。王は必然である。王は運命である。王は歴史そのものである。王は……歴史の破壊者である……!」


 「……お前らは……カルト集団なのか?そんな遺言を残すなんて……。」


 「くっく……。グランデュース……貴様は私よりロックだった………。もはや私に貴様を止める権利なぞないが…………悪く思うなよ。私の忠誠はただ王にのみある……!!」


 「………なるほど。その忠誠心の高さには敬意を表すよ。」


 No.6はオレの言葉を聞くと、倒れ込んで身体を崩壊させた。運が良かったか……。それを見てオレも倒れ込んだ。もう身体を動かすことはできない。毒のせいで身体中の筋肉が引き攣っているが、休憩してもう少し魔力が回復すれば問題ないはずだ。あるとすればこんな迷宮ダンジョンのど真ん中で身動きが取れないという点だが………。考えていると、灰となったNo.6の身体から魔力が噴き出し、何かが現れた。


 「ク……ソッ………まずったな……。」


 「………………………。」


 現れたのはNo.6に取り込まれたはずの迷宮ダンジョンの主、彼岸騎士リナイトだった。長く巨大な剣を持ちながらオレの方に近づいてくる。ロイドは離れたところで魔物を倒しているだろう。オレは身体も動かせず、帰還石を発動させることもできない。天現融合を限界まで使っていたせいでセリアに実体化してもらうこともできない。万事休すといったところか……?オレはなんとか助かる方法がないかと思って考えていたが、どうにもそんな方法はなさそうだった。オレは目を瞑って剣が振り下ろされるのを待つしかなかった。しかし待っても剣がオレの首を落とすことはなく、何かと衝突する音が響いた。


 「………?」


 「ミルアルト、我々は生徒会だ。いつ何時も余裕のある立ち振る舞いをせねばな!」


 「ふっ………あんた……にゃあ…敵わねぇな……。」


 ジンリューが魔物の剣を受け止めていた。そしてそのことに怒ったのか、魔物は力の限りに剣を振ったが、ジンリューはそれを軽々と躱し、手から無数の泡を出した。その泡が魔物を包囲し、それが魔物に向かって集まった。魔物は泡によって身体を失い、瞬く間に消滅した。


 「悪かったね。魔物の群れとセンパイが戦ってたから遅れてしまったよ。」


 「………なん……。」


 「ああ、無理に喋らなくていいよ。ほら、これを飲みなさい。」


 ジンリューはオレに回復薬ポーションを渡してくれた。上級回復薬ハイポーションだろうか?オレはそれを一瓶飲み干すと、傷は多少治ったがまだ身体を動かすほど回復しきることはできなかった。


 「嫌な予感がしたんで様子を見にきたんだ。生きているようで良かったよ。」


 「……嫌な予感?」


 「ああ。………尋ねるが君、一体何と遭遇した?」


 「“何”?……戦ってたのはあんたがさっき倒してくれた魔物と融合したヤツだが……。」


 ジンリューは何やら動揺しているようだったが……No.6はそう警戒するほどだっただろうか?いや、警戒すべき強さではあったが、一応オレでも対処できる相手だった。


 「君が勝てたというなら俺が言っているのはソイツじゃない。今日か昨日か一昨日か……何者かと接触しただろう?君の未来が見えなくなってしまった。……いや、正確には見えるがどうも歪んで見えてしまう。恐らく世界の流れを変えられるほどの者と接触したのだと思うのだが……。」


 「…………心当たりがあるとすれば十法帝会議だけど……。」


 「それよりずっと最近のことだ。君が十法帝会議に行ったときは異変はなかった。」


 つまり、法帝達よりもずっと強い何者かと接触していたということか?セリアやベルドットさん、ユリハ様よりも強い何者かと……。そんなヤツいたか?そんなヤツ……いるのか?いたとすればセリアが気づいていると思うんだが……。


 「……心当たりがないなら仕方ない。今のところは帰るとしよう。君の傷を癒さなければならないからね。」


 「悪いな。迷惑かけるよ。」


 オレはジンリューの肩を借りて上層へ続く道を歩いた。ジンリューはロイドの戦っていた魔物を始末したらしく、ロイドのことは外へ帰らせたらしい。歴史の破壊者(デスティニー)については知られるべきではない、とのことだ。帰還石を使えばすぐに帰ることはできるが、アレは魔力を込めた本人しか帰還できない上にかなり高価なものだ。徒歩で帰れるならばそれに越したことはない。

 しばらく歩いているとカツカツと音が響いた。始めはオレ達の足音かと思っていたが、その音は次第に近づいてきたのですぐに違うと分かった。が、魔力は大したものでもなかったために警戒はせずにそのまま歩いた。それが間違いだった。こんな階層に大した魔力を持っていない者が入ってくるわけがなかったのだ。


 「おっと……大丈夫ですか?なかなか酷い怪我をしているように見えますが………。」


 「あんたは……。」


 オレ達の前に現れたのは仮面の男だった。男とは昨日一度だけ会ったが、依然として黒いコートを着ている。仮面の中からは眼光がキラリと光っていた。


 「心配はいりませんよ。応急処置はしていますから。」


 「そうですか。ところで私は人を探してるんですがね……。」


 人?七階層にはそう人はいないと思うが……こんなところで人探しか?いるとすれば八階層以下だと思うが……。


 「No.6を殺したのは君かね?グランデュース=ミルアルト……。」


 「ッ!?」


 「何者だ……あんた……!!」


 「悪いが君に用はないんでね……邪魔はしないでもらおうか、サンダーグラス=ジンリュー。」


 敵意を見せた仮面の男にジンリューはすぐに反応して攻撃を仕掛けたが、敵はいとも容易くそれを回避して蹴り飛ばした。動きが普通じゃなかった。あんなに速く動くものを、オレは未だかつて見たことがない。ジンリューでもどうすることもできないほど強く、恐らくセリアやベルドットさんよりもずっと………この男だったか……。しかし……歴史の破壊者(デスティニー)か?いや、そんな魔力は感じない。何者なんだ?

 ジンリューの支えを失ったオレは立つことすらままならず、すぐに倒れ込みそうになった。そんなオレの首を仮面の男が掴み、仮面の中から瞳を覗かせていた。なぜだかオレはそれに抵抗することすらできなかった。その気力すら湧かなかったのだ。


 「王は君を邪魔だと言っていましたが……君の死を望んでいるわけではありません。とはいえ君を放置するわけにといきませんから………。」


 「なッ……なに……を………!?」


 仮面の奥から見えた渦巻き状の魔眼に引き寄せられる感覚に陥った。何をされているのか、一切理解することができなかった。次第にオレの意識は闇の中へと引き摺り込まれ、視覚も聴覚も嗅覚も、少しずつ消えていった。そうして気づけばオレは、鎖で壁に牢の中に拘束されていた。

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