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HAMA/運命の逆賊  作者: わらびもち
第三章 会議
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第16話 予定

 「ミルアルト君、今日は校長先生が呼んでいました。十法帝会議についての話のようですが、放課後時間はよろしいですか?」


 魔法戦闘学の授業中、ランファ先生が声をかけてきた。そういえばそんな話もあったな。確か……今週か来週くらいではなかったか?


 「ああ、分かりました。生徒会もありますが、そっちには遅れると伝えておきます。」


 「そうですね。日程や場所を伝えるだけとのことなので、そこまで時間はかからないかと。」


 「そういうわけでカミュール!伝言よろしく!」


 「自分で伝えるわけではないのか。まぁ私としても断るほどのことではないから構わないが。」


 「おう!ありがとな!」


 さて……獄境の大洞窟での戦い以降、部分的な天現融合はできるようになった。しかしあのときほどの力は引き出せていない。火事場の馬鹿力というものか、あのときの融合率は異常だったのだろうな。あの力を自在に引き出せるようにならなければ、今のオレはルーシュにもジンリューにも届き得ない。法帝に届くことなど絶対にないだろう。しばらくは五星級を超えることはないだろうし、今のうちに部分的であろうが完璧な天現融合を習得するしかない。………難しいことでもないはずだ。一度経験しているのだから。しかし肝心の混沌竜カオスドラゴンを倒した際に発動した天現融合は左腕だ。そしてその左腕はユリハ様によって作られたもので、まだ馴染んではいない。今は左腕では発動できないけれど、もしかすると馴染めば完璧な天現融合を使えるのかもしれない。

 セリアの魔力属性は炎だ。だからオレは炎を受け入れる必要があるし、身体を燃え上がらせる必要がある。今以上にもっともっと燃やせば、融合率も高くなるだろう。だがそれがなかなか難しい。オレの魔力とのバランスも取らなければ皮膚や体内が焼けてしまうし、熱は体外に放出しなければならない。やはり自分とは違う属性を制御するのは難しい……。よくみんなできるなと感心してしまう。


 「では今日の授業はこれで終わりです。」


 おっと……もうそんな時間が経っていたのか。熱中するとどうも時間の流れが早く感じる。………っと、それなら早いとこ校長室に行かないと。


 「カミュール、生徒会の方は頼むぞ!」


 「ああ、分かってるよ。あまり遅れるなよ。」


 「おう!」


 オレは早歩きで校長室に向かった。今日は連絡だけなのだからさっさと終わらせてしまおう。生徒会の方では何やら話をするそうだし。………そういえばそっちも大事な話だったりするのか?その辺はちゃんと聞いておけばよかったな。


 「グランデュース=ミルアルトです。」


 「おお、来たか。入ってくれ。」


 校長室の扉をノックすると、部屋の奥から声が帰ってきた。そして部屋へと入ると、いつもの通りに校長と副校長が待っていた。そして促されるように席に着き、校長先生が口を開いた。


 「こうして顔を合わせるのは久しぶりだね。身体の方は大丈夫かい?獄境では深い傷を負ったと聞いているが。」


 「問題はないですね。順調に回復に向かっていますよ。ところで歴史研究はどうですか?」


 「セルセリア様のおかげで上手く進んでいるよ。まぁ証拠を探すのが厳しいからまだまだ難しいところだがね。」


 セリアの生きていた時代の文献などはほとんど無いらしいからな。セリアだって全てを記憶しているわけではないし、現段階では情報の確実性に欠けているのも頷ける。まぁ決定的なものではなくとも一つの説として考えるには充分ではあろう。


 「それでまぁ、十法帝会議についてだが……開催は今週末ということになった。14時に私の下に来てくれ。」


 「分かりましたけど、だいぶ急ですね。まぁ元々このくらいの時期だとは聞いていましたけど。」


 「法帝は皆、自分勝手な輩だからね。計画性という点で見れば学生の方がよくできてる。しっかりしているのはほんの二、三人だよ。」

 「それと、会議には付き人を一人まで連れていくものなのだが、君のことはそれとは別で連れていく。上から許可されたのでね。竜帝が掛け合ってくれたらしい。」


 シャルテリアさんか……あの人はやっぱりだいぶ協力的だな。活動期間から考えて歴史の破壊者(デスティニー)と繋がっている可能性もないだろう。困ったときには助けを求めたり、相談をしてもいいかもしれない。……まぁ忙しい人ではあるだろうけど。

 一通り日程や場所を聞いた後、オレは校長室を後にし、今度は生徒会室へと向かった。校長室にいたのはほんの五分か十分程度だっただろうか。最後の最後で校長先生が長話を始めようとしたとき、副校長が止めてくれて助かった。あのまま止められていたら数十分はあの部屋に閉じ込められていたことだろう。そして生徒会室に着くと、他の役員達はみんな揃っていた。


 「おお、早かったな、ミルアルト。校長にはもう少し捕まってるかと思っていたよ。」


 「危なかったけどな、なんとか抜け出したよ。」


 校長とは別に積もる話もなかったからな。捕まってたとしても案外すぐに解放されてたかもしれない。………いや、そんなことに関係なく校長の話が長いのは決まっていることか。


 「まぁとりあえず話をしようか。今月末に霊明祭が控えてる。我々生徒会はその運営や各クラスのサポートをしていくわけだが……そもそも霊明祭が何か、一年は知ってるか?」


 「オレは知ってる。」


 「私も。」


 霊明祭、それはこの学園において序列戦に並ぶ二大イベントだ。これは学園のみならず街や国としても盛り上がる行事であり、守護者、つまり現世に舞い降りた魂を敬い感謝する祭りだ。そして学園では屋台や出し物の他に武闘大会、“霊明武会”も行われる。基本的にその大会では守護者の力を使って、あるいは守護者本体を顕現させて戦うこととなり、守護者と契約者の総合的な強さを競うものとなる。基本的には天現融合をして戦うものだが、稀に守護者だけの戦闘も見られるために序列戦とはまた違った盛り上がりを見せる。


 「霊明武会には学園内外を問わず参加者がある。そんな中で生徒会からも何人かは出てもらいたい。まずはそれを決めよう。」


 「オレはパスしてもいいか?あまり深くは言えねぇけど、守護者が特殊なんで人目につく場で力を出したくはない。」


 「私もパスするよ。守護者がいないんじゃ話になんないもんね。」


 「………そうだな。ルーシュはいつも通りだが、ミルアルトについても今回はパスにしよう。」


 ジンリューの許可によってオレとルーシュの不参加は認められた。オレに関しては理由を言えないだけに不審がる人もいたけれど、ジンリューの一言でその不信感は解消された。流石は生徒会長といったところか、言葉の価値がオレなどとはまるで違い、カリスマ性のようなものさえ感じた。


 「それならウチは出ようかな。会長は今年も出ないんだろうし、“格”を考えるならウチが出ればいいんじゃない?」


 「私も出たいかな。せっかくだし、色んな人と戦いたい。」


 「ボクも出させてくれ。せっかくの機会を逃したくない。」


 「………他がいないなら三人に任せるとするか。君達には後日ちゃんと説明するよ。」


 霊明武会に出場するのは序列三位のフリダム=ミライアと序列五位であるカミュール、そして序列無しのヴァンルージに決まった。ミライアはジンリューやルーシュとは大きな差があるけれど、オレやカミュールよりもずっと強かった。魔力量で言えば六星級でルーシュと同じ階級だったか。実力で言えば三番手、それでも充分だとは思うが、正直人柄の良さで言うなら生徒会で一番じゃないかな。


 「そういえば一年の学外学習は二週間後だろ?そう考えると君達はなかなか忙しいかもな。」


 ジンリューはオレとカミュール、ヴァンルージを指差してそう言った。………恥ずかしながらオレにはその言葉の意味がよく分からなかった。


 「学外学習ってナニ?」


 「………知らないのか……。もう少し人の話は聞いておけ。」


 ジンリューは呆れたように言った。先生の話は聞いてたと思うんだけどなぁ……何かを考えてるときに話されてたのだろうか。オレが悩んでいるところでジンリューが説明してくれた。


 「学外学習、確か三日ほどあっただろ。どっかで何かするってやつが。」


 「すごい曖昧だな。アンタも言うほど知らないのか。」


 「そうじゃない。言ってしまえば各々が自由に行動できるということだ。許可さえもらえればどこに行こうと、何をしようと構わない。まぁセルフ遠足みたいなものだよ。」


 「へぇ…………へー!!そりゃいいな!!」


 「そう思うなら話を聞いておけ。」


 それからは霊明祭の内容について細かな説明を受けた。出し物については予算などもしっかり決まっているようで、そう大規模なものはできなさそうだ。一通り確認した後にその日は解散することになった。


 「ミルアルト、少しいいか?」


 「ん?」


 帰ろうとするオレを止めたのは、序列七位のタームレイド=シュベッツだった。昨年から生徒会に所属している……四年生だったか。彼の身長は190センチメートルを超えており、腕も脚も丸太のようにデカい。生徒会の中では最もガタイが良い気がする。


 「お前に争奪戦を申し込む。俺が勝ったら俺が六位、お前が七位だ。」


 「オレはいいけど……今からか?」


 「へぇ………いいんじゃない?ミルアルト君が休んでるうちにウチらは交流もしてたし、君の力も見てみたいもの。」


 「そうだな……なら俺が立会人になろう。結果は俺が管理する。」


 「じゃあカミュールとヴァンルージも残ってくれ。ルーシュも見ていくか?」


 「そうね、っていうかみんな見ていくんじゃないの?そういう雰囲気じゃない。」


 「そっか。よし。じゃあ行こうか、シュベッツ。」


 「ああ、迷惑をかけるな。よろしく頼む。」


 そうしてオレ達、生徒会は全員で闘技場に向かった。空は薄暗くなっているが、遅い時間でもない。校内に残っている生徒も少なくはないだろう。できる限り人とは出会わないように移動した。しばらく歩いて闘技場内に入り、オレとシュベッツ、ジンリューを残して残りは観客席の方へと向かった。


 「では二人の好きなタイミングで始めなさい。」


 「分かった。……シュベッツ、アンタに一応聞こうか。序列が一つ上の人間に争奪戦を申し込むのはおかしなことでもないけど……なんでオレに?」


 「強い者が上に立つのは当然のことだ。だが、カッコ悪いかもしれんが、後輩に劣っているというのも気に入らないんだ。カミュールは俺より強かった。だからお前も俺より強いのか、俺は納得したいんだ。」


 「なるほど、いいじゃんないか?上辺ばかり取り繕ってるヤツよりはよっぽどカッコいいと思うけどな。だからオレも全力でアンタに勝とう。」


 「全力とは言うが……剣は抜かないのか?」


 「傷が癒えてないんでね。手を抜くというわけじゃない。色んなスタイルを模索してるんだ。剣がないと戦えないんじゃ、戦いの中で戦えずに死ぬかもしれないから。」


 そう言ってオレは拳に魔力を込めた。ユリハ様に作ってもらった左腕はまだ馴染んでいない。こんなのでは片手でしか剣を握ることができないから違うスタイルでやった方がいい。まぁ慣れないことはするものではないが、肉体はずっと鍛えてきたからな。剣の有無は言うほど不利でもない。


 「ならば俺も武器を使うのはやめよう。同じ土俵で戦った方が公平だもんな。」


 「優しいな。惚れちまうよ。」


 シュベッツは薙刀を使っていた記憶がある。彼の嵌めている指輪に空間収納アイテムボックスの魔法が刻まれているんだ。序列戦ではそれをバチバチと鳴らせながら取り出していた。その様子がないあたり、本当に使う気はないらしい。オレとしてはどっちでもいいと思っていたけれど、妙に律儀な人だ。


 「ほう……五星級の下位といったところか。」


 「行くぞ……!」


 「くッ……!!これは……!」


 オレは魔力を身体中に巡らせてシュベッツに飛びかかった。魔力を可能な限り高速で回し、なるべく体内に留めながら身体を動かした。身体強化も使って速度と膂力を底上げし、シュベッツのみぞおちに重い一撃を入れた。彼はなんとか意識を保ち、飛び上がって距離を取った。


 「……魔力そのものに刃があるのか。殴られただけなのに身体の内側までズタズタだ。グランデュース家特有の能力スキル……流石だな。」


 「今回は早く終わらせよう。正直言って相当無茶してるんだ。」


 魔力を相手に流し込むことで体内まで斬ることができるが、それを有効にするには相当な量の魔力を圧縮して流さなければならない。そうでなければ相手の魔力に相殺されてしまうからだ。オレの魔力が他の魔力を滅するとは言っても、シュベッツも五星級、そう楽ではない。

 オレの徒手空拳での戦い方を把握したシュベッツは、そこから猛攻に出た。素早い打撃が繰り出され、オレは受け止めたり身体を捻ったりしていなした。力も素早さも、魔力量でも、勝っているのはシュベッツの方だ。だがオレには圧倒的に勝っている部分がある。それが、それだけがオレを優位に立たせていた。


 「速いッ……!!」


 速さでオレを超えていても、最適な動きをすれば捉えられることはない。猛攻を回避し、地面を蹴り上げて飛び上がった。身体強化をより集中し、一瞬だけ、シュベッツには捉えられないほどの速度スピードで彼の頭上に移動した。手のひらに白天を作り出し、それを爆発寸前まで膨張させた。


 「『勾玉まがたま』!!」


 「ぐぬぁッ……!!」


 「ッ!!」


 膨張した白天を、爆発と同時にシュベッツの体内に流し込んだ。魔力は爆散し、彼の身体の内側から爆撃と斬撃が発生した。バリバリと鳴りながらシュベッツの身体は傷つき、彼は闘技台の結界外へと転移させられた。闘技台も随分とボロボロになってしまった……というか大破してしまったが、時間が経てば勝手に修復してしまうらしい。なので気にする必要はない。

 シュベッツはなかなかに強かった。オレ以上の力は持っていたけれど、そんな彼にオレが勝てたのはセリアと訓練をしていたからだろう。たぶんオレの強さは能力スキルや固有の魔力などではなく、ただこの経験なんだろうな。それが他の人達にはない圧倒的な優位性だ。


 「勝者、グランデュース=ミルアルト!異存はないな?」


 「もちろん……。負けたのは俺だからな。ありがとう、ミルアルト。」


 「ッ………いや、オレの方こそ楽しかったよ。」


 「………ねぇ、アンドラン君。……ウチ思ったんだけどさ……。」


 「皆まで言うな。俺だって分かるぜ。アレで本調子じゃねぇってんなら俺らも危ねぇよ。……ルーシュの奴との試合も見てたが、あのときより強くなってやがるな。」


 今の試合を見ていた生徒会のみんなが、ザワザワと話していたけれど、よく耳に入ってこなかった。騒ぐほどではないけれど、我慢するにはあまりにも辛いことが起こっていた。


 (大丈夫……じゃないか。白天は爆発させちゃダメだよ。)


 (試してみたかったんだ……先に言っといてくれよ………。)


 オレが右手の激痛に耐えていると、セリアが頭の中に話しかけてきた。白天は小さな弾丸ほどの大きさしかないけれど、そのエネルギー量は半端ではない。オレから少し離れたところで爆発させたというのに、腕の骨が悲鳴を上げている。そしてどうやら……結界では自傷は防げないらしい。この技はしばらく封印だな………。


 (昔エストが白天を大爆発させる技を使ってたんだけど、そのとき腕が吹き飛んだから本当に気をつけた方がいいわよ。まぁアレはミラのやつとはサイズもエネルギー量も違ったけど。)


 (怖ッ!先に言っといてくれよ!……エスト様の白天はどれくらいの大きさのヤツだったんだ?)


 (うーん……拳くらい……よりは大きかったかな。小さめの大砲の砲弾くらい?)


 (……そんな凄かったのか?)


 (うん。乱射してた。)


 マジか……やっぱり化け物なんだな。オレもそれくらい強くなりたいな。

 オレは闘技台から降り、みんなのところに向かった。少し試合の感想を話し、シュベッツとは改めて握手をした。これで認めてもらえただろうか。そうでなくとも、いくらでも受けて立とう。今の試合は楽しかったから、多少忙しくてなったとしてもこういった戦いは何度でもしてみたい。

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