この世界の綻びに気づいたかもしれない
ふとした違和感が、現実に“ひび”を入れる瞬間。
この作品は、そんな「気づき」を描いた短編です。
少しだけ不思議で、少しだけ怖くて、でもどこか身近な話かもしれません。
コーヒーでも飲みながら、気軽に読んでいただければ嬉しいです。
「なあ、考えたことないか? 俺たちの目に映ってるものってさ、結局この世界が“見せたい”と思ってるものにすぎないんじゃないかって。」
俺はマクドナルドの席に座って、チキンをかじりながら、目の前のアイツに向かって言った。
別に声を張ってたつもりはない。ただ、思いついたまま口にしただけだった。
「はあ!?」
突然の大声に、俺はビクッとなった。
チキンを落としそうになって、思わず手がテーブルのソースに触れてしまう。
動揺を隠すように、肘をついたままの姿勢で、声を少し落として続けた。
「……もし、目だけで世界を見てるなら、ずっと“偽り”の中で生きることになる。そんなの、しんどいだけだろ。」
そのときだった。ふと、周囲の空気が変わった気がした。
ストローをくわえたまま動かない女の子。
ハンバーガーを持った手を止めた母親。
レジの前で立ち尽くす店員。
そして、さっきまで笑い合っていたカップルまでもが——なぜか、こちらを向いている。
本当にそうだったのか?
それとも、俺が「そう感じただけ」なのか?
俺は確認しなかった。いや、できなかった。
見えたからといって、それが本物かどうかなんて、わかりはしない。
目に映るものは、本当に信じられるのか?
目の前のアイツだってそうだ。
他人から見れば、どう考えても変人。
やたら声がデカいし、言ってることもめちゃくちゃ。
……俺も以前は、そう思ってた。
でも最近は、わからなくなってきた。
アイツは本当に狂ってるのか?
それとも、俺たちより少しだけ早く、“何か”を見てしまっただけなのか?
判断できない。
俺もまた、この目でしかアイツを見ていないから。
そして今、俺にもそれが——
ぼんやりとだが、見え始めている気がする。
世界のどこかに、小さな“綻び”のようなものがある。
でも、それすらもただの思い込みかもしれない。
いったい、何を信じればいいんだ?
だからこそ、この文章を読んでいるあなたに尋ねたい。
あなたは、誰?
その目に映っているものは、本当に“本物”なのか?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
あなたの「目」に映っている世界は、どんなふうに見えていますか?
現実を信じること、疑うこと。
そのどちらも、きっと生きていくうえで大切な感覚なのだと思います。
もしこの作品が、あなたの中の何かを少しでも揺らせたなら、
それは作者にとって何よりの喜びです。
感想・レビュー等いただけたらとても励みになります!