〜邪王真眼、無双の果てに孤高(勘違い)へ〜
「我が名は……邪王真眼。貴様のチャクラを断ち切り、魂を闇の彼方へと送る!」
バトルフィールドが展開されるたびに、その声は高らかに響いていた。
雷鳴と共に現れる漆黒の刃。
重力がねじ曲がるような威圧感。
敵は一撃で吹き飛び、戦闘終了時には必ずこう締めくくられる——
「……闇の帳は、すでに降りているッ!!」
——沈黙。
《◯◯が退出しました。》
《バトル終了。勝者:邪王真眼》
***
「最近のとんぼ、バトルの演出にさらに磨きかかってない?」
「いやもう……厨二って言葉すら超えてるよね。あれは“闇の文化財”……」
「この前なんか、**“ダークネス・リザレクション・フェイズ・オブ・オメガ”**とか言ってたぞ」
「え、何それ技名?コース料理?」
生徒たちが小声でざわつく中、邪王真眼はひとり、学園の渡り廊下をゆっくり歩いていた。
マントをなびかせながら、口元には自信の笑み。
(……この学園において、俺に敵う者は……いない。
バトルにおいては、俺はすでに“完成された存在”……)
すれ違う生徒たちの視線を、自分への畏敬と信じて疑っていない。
「なんか、すごいよね……あそこまでやりきれるって」
「むしろちょっと羨ましい……鋼のメンタル……」
彼の背後でひそひそと交わされる“称賛(?)”の声にも気づかぬまま、邪王真眼は一人、空を見上げた。
「今日も世界は……救われたな」
マジの顔で言ってた。
***
放課後。談話スペースにて。
「おつかれ〜〜〜、とんたんバトルまた勝ったらしいねぇ」
「……ああ、また一人、闇の深淵に落ちていったな……」
「うんうん、マジでカッコイイ〜(※棒)」
にぎり飯がスマホ見ながらテキトーに返す。
その横で、ちーずが静かに燃えていた。
「邪王様の美学が理解できぬとは……世の中、愚か者ばかり……」
「いやお前も“ダークネス・すべり・モード”入ってたやん」
「うるさい!!」
遠くで聞こえる、まさとの溜息。
「また“あれ”やってたのか……言葉は強いけど、現実との乖離が拡がっていくやつだな……わかる?」
「うるせぇ!!誰が乖離だ!!俺は統合されし混沌だッ!!」
「それってたぶん医学的にアウトな言葉だよ……?」
——そんなこんなで、
邪王真眼の名は、今や学園中で“最強”の存在として知られるようになったのであった。
【つづく】