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べ、別に、病弱なわけじゃないんだからね?!

実録 マヌケすぎる理由で【眼科】夜間救急に行ってきた話

作者: 亞月こも



 眼科に夜間救急があることをご存知だろうか。私は知らなかった。


 自分の人生の中で、病院の症状記入欄に、こんなマヌケなことを書く日が来るとも思っていなかった。


『目にゴミが入って痛くて開けられない』



 事の始まりは地域のお祭りだ。

 昼頃、子どもがお腹を空かせたため、食べ物を買って路肩に寄った。子どもの高さに合わせて屈んで、少し食べさせたころに、ビュオッと突風が吹いた。


 バチッ!!

(??!)


 真正面から風が向かってきて、擬音のまんまの感覚と同時に、目に痛みが走って開けられなくなった。


「目があっ! 目があああっっっ!!!」


 とはさすがに外で叫ばなかったけれど、気分はム◯カだ。


 自己対処1。その場で目をパチパチする。

 涙が出てきているから、それで流れないかと思った。無情にも、ゴロゴロして痛いだけだった。


 何に驚いたか。痛いのは片目だけなはずなのに、無事な方の目もあまり開けられない。

(なーんーでー?!)

 半開きがせいぜいで、ほぼ視界を確保できない。


「目が開けられなくてほとんど見えないから連れて帰って……」

 頼んで連れ帰ってもらう。大人が自分一人じゃなくて本当によかった。


 この時はまだ甘く見ていた。家に帰ればなんとかなるだろう、と。



 自己対処2。目薬。

 点眼1回目。パチパチ。しかし何も変わらない。

 点眼2回目。パチパチ。しかし何も変わらない。

 点眼3回目。パチパチ。しかし何も変わらない。

 点眼4回目……。

 変わらなさすぎてあきらめた。


 自己対処3。常温真水で洗眼。

 洗面器に水を溜めて、息はできるようにして目を浸す。

 パチパチ。しかし何も変わらない。

 手でまぶたを開いてパチパチ。しかし何も変わらない。

 数回繰り返して、変わらなさすぎてあきらめた。


 自己対処4?。寝る。

 寝たら寝ている間に治るかなと思って、子どもの昼寝の寝かしつけをして一緒に寝る。

 治るわけがなかった。

 鏡で見たら目が真っ赤に充血していて、まぶたも腫れていた。


 自己対処5。温水で洗眼。

 今度は治るまで目を洗おうと思って、温水に入れてまぶたをいじくり回す。

 しかし何も変わらない。

 根性がないから数分で断念。


 自己対処6。薬用液で洗眼。

 家族が買ってきてくれたので、薬用の洗眼液で目をパチパチ。10秒以上は使ってはいけないらしいから、マックスの10秒洗う。

 しかし何も変わらない。


 運が悪いことに、日曜日だった。翌日は祝日。眼科が開くのは翌々日、火曜日の朝になる。

 と思っていたから半日いろいろ試しながらガマンしていたが、家事すらできなくて、生活に支障しかない。し、何より痛い。

 半開きの片目で必死に、休日診療がある病院を検索。


(あった……!!!)


 3駅隣だ。そのくらいなら行ける。

 見つけた時は、病院が閉まる5分前。


(昼の時点で調べればよかった……!!!)


 やっているところがあるかもしれないという発想がなかったし、自己対処でなんとかなると思っていた部分もあった。けれど、早く調べればよかったとは思ってしまう。


 とりあえず翌日の予約を取ろうと電話してみる。


「すみません、明日の予約を取りたいのですが……」

「明日は予約がいっぱいでして……」


 そう言われた瞬間に、何かが決壊けっかいした感じがした。


「すみません、急ぎで……」

「あ、でも大丈夫ですよ!」

「目にゴミが入って、痛くて目が開けられなくて、涙もだばだば出てて……」

「その症状でしたら、明日まで置いて大丈夫なのかがお電話ではわからないので、◯◯駅にある夜間救急に行ってください」


「……眼科がある夜間救急ですか?」

「はい。◯◯駅にあります。8時から診療開始ですが、7時半から受付をしています」

「ありがとうございます。行ってみます」


(眼科に夜間救急があるんだ……!!!)


 目からうろこが落ちた。ついでにゴミも落ちてくれればよかったけれど、そんなことは起きない。

 電話した病院より更に何駅も先だけど、背に腹は代えられない。


 ありがたいことに、病院に電話する少し前に、家族が夕食を作ってくれると言っていた。夕食は任せて、夜間救急へと向かう。

 移動時間を計算するとまだ受付にも早いけれど、家にいても何もできないから早めに出た。


 普段、電車の移動時間が一番好きな自由時間で、小説を書いたり校正したりしているのだけど、目が痛いとそれができない。

 通勤よりずっと短い移動時間が、それよりもずっと長く感じた。


 夜7時5分。夜間救急センターが見えた。字がぼやけているけれど、字数的にも位置的にも間違いなさそうだった。

 我ながらどれだけ切羽詰まってるのという早い時間に着いた。


 冬に入り始めたころで、日が落ちた後が寒い。暖をとるためにも他の店で時間をつぶしてから行こうかと思ったけれど、慣れていない場所だ。

 カフェに入るにしてもメニューが読めない。ウインドウショッピングをするにしてもビルのフロアマップが読めない。あきらめて早めに救急センターに向かった。


 矢印に従って薄暗い駐車場をドキドキしてのぞくと、警備員さんがいた。


「病院ですか?」

「はい、眼科で……」

「こちらでお待ちください」


 大きく入り口と書かれた扉の前に立つ。一番乗りだ。

 5分くらいで他の人が来た。ちらりと振り返ると、ガタイがいい男性2人が並んでいる。何かあるとは思わないけれど、警備員さんがいる安心感が半端ない。


 思っていたよりみんな早く来るようで、受付開始時刻には10人以上来ていた。

 内科、小児科、眼科、耳鼻咽喉科がある夜間救急病院だ。


 受付時間少し前に開く。

 科を聞かれて、問診票を書かされる。見えない。書くのが辛い。症状の選択欄をざっと眺めて、たぶんなさそうだと判断して、その他に書く。


『目にゴミが入って痛くて開けられない』


(マヌケーっ!!!)

 こんなマヌケなことを書く日が来るとは思っていなかった。


 一番乗りで受付をして、眼科1と表示される。

 7時50分くらいに個人ファイルを渡された時の待ち人数はこうだった。


 内科5

 小児科6

 眼科1

 耳鼻咽喉科3


 眼科、人気なし。一番乗りで並ぶ意味皆無。

 他に比べて急ぐトラブルが少ないというのもあるのだろうし、そもそも眼科に夜間救急があるという発想がなかったから、他の人もそうなのかもしれない。


 何年か前に近隣の内科・小児科の夜間救急に行った時は、もっと子どもが多かった印象がある。

 今回の救急センターは住宅地ではなく商業地にあるから、このくらいの比率だったのかもしれない。


 ファイルを持って、診察エリアへ。科ごとの受付にファイルを渡して、状況を聞かれる。

 8時、診察開始。


 荷物を置いて、患者用の席に座る。


(なんかキタ!!!)


 黒いメカメカしいものが動いてくる。真ん中が青く光っている。


(たぶん、顕微鏡的な……?)


「目を開けてまっすぐ前を見てください」


(できませんっ……!!!)


 内心思いつつ、がんばるも、何度か言われる。上を見たり下を見たりもさせられる。


 一応、両目を確認。

 痛い方の目に、しみるかもと言われつつ点眼。元が痛いからそんなに痛くは感じず。


「何が入ったかはわからないんですね」

「はい」

「尖ったものではなさそうですね」

「よかったです」


 綿棒が用意されて、目に入るの痛いんじゃないかなと思っていたけど、まったく痛みはなかった。


「ゴミ、取りましたよ」

「ありがとうございます! 痛くなくなりました!」

「麻酔入れたのでね」


(麻酔!!!!!)


 その発想はなかった。道理で、綿棒で取っても痛くないはずだ。文明すごい。


 その後、点眼2種類、軟膏1種類。

 しばらく白くぼやけて見えると言われる。片目の視界が乳白色でガウスぼかし状態だけど、痛くないからどうでもいい。

 何より、もう片方の目がちゃんと開けられるようになって、世界が見える!!!


 全部で5分かからずに処置完了。抗生物質が入った目薬を一本処方してもらう。


 痛くなくなってルンルンで帰っていたら、最寄り駅に着くころにまた少し痛みだした。

(あれー?)

 前は見えるけれど、位置によっては痛いし違和感がある。麻酔が切れたからかなと思う。

(え、どうしよう。ゴミ2個入ってて片方見落とされたとか?? 明日も病院??)


 処方の目薬を指して真っ赤に腫れたままの目で就寝。

 寝て起きたら、痛みが引いていた!!!

(先生! 疑ってごめんなさい!!!!!)


 病院すごい。文明すごい。昔の人だったらこれ、一生あの痛みとつきあって生きるしかなかったんじゃない???


 目にゴミが入った時の対処法のサイトに、軒並み「病院に行く」って書いてあった意味を身をもって体験した。



 ちなみに、今回目に入ったゴミの値段。


 夜間診療+処方=3,120円

 交通費×往復=636円

 合計:3,756円


 たーかーいーっ!!!!!(悲鳴)



読了ありがとうございました。

もしよければ、連載小説『魔法使いジュリアは元夫を愛しすぎてる 〜2周目なのに想定通りにいきません〜』もよろしくお願いします。

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