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急行列車に飛び乗って

ある土曜日の午前7時、会社員の草村は凸凹のない車道を雨の中、悠々自適に走りぬけるバスに体を少し揺られていた。

雨の音に耳を傾け、まだ少しウトウトして重たい瞼に身を任せそっと目を閉じる。

バスが駅に着くと草村は閉じていただけの目をいやいや開いてバスを降りていった。雨だったからだろうか、今日は少し車が多かったらしい。目的の急行列車は今にも出発しそうなオーラを醸し出している。周りの目も気になるので、少し早歩きで近づく。おそらくもう少しで出発だ。最後の1、2歩は駆け足で飛び乗る。乗車した扉のすぐ近くが自分の場所だとアピールするまもなく扉は閉まり列車は動き出す。

少し息の上がった体と、発車の揺れで揺れる体幹のバランスを取りながら、心を落ち着かせられる窓の外に目線を置いた。

実の所、彼は今日仕事ではないし、目的地だもこれといってない。思い立ったが吉日、財布とスマホだけ持ってバスに乗りながら電車の時刻を調べるという無計さであった。 

乗りこんだ列車はいつもとは真逆、つまり会社のある方とは逆に向かう列車に乗り、ここぞというときが来れば降車する算段であった。

それにしても、目的のない旅の列車から見える景色はいつもと違っている。もちろん見えている景色自体違うのだ。それはわかっている。そういうことではなく、何か違う気がする。会社に向かう列車からの景色に何かを感じることはない。どれだけ目の前が変わってもそれは会社への途中でしかないのだ。だがどうだ、あてもない道中の景色を一目見ればそれは私の中の何かを少しだけ動かしてみせた。そのことが私にはとても驚きだった。遠くにある山影とか、雨に包まれ落ち着く感覚だとか刺激としてはあまりに小さい日常のなんてことない風景に、しかし今はそれ以外に注目すべきことはないのだ。つまり退屈だ。

まぁ、結局のところ2、3駅したところで缶ジュースと朝のおにぎりを食べて帰ってきただけなのだが、何というか、、、

うん、満足だった。

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