七十六話 幕間四 とあるエルフたちの世迷言板にて
※誰かの視点ではなく、情報掲示板内のやり取りの記録です。
それは【シードリアテイル】サービス開始から二日目、現実世界では宵の帳が降りる頃の、とあるエルフたちの世迷言板にて。
[あ~、そういえば。少し前に例の人が、ウルフの狩り場で戦っている姿を見まして]
[え! あの人戦ってたんです!? おれ一回も見たことなかったんですけど……]
[いや、こちらも初観戦だったのですが、なんというか……]
[? 何かあったんですか?]
[なんでしょうか?]
[それなりに、予想はできますね]
[たぶん、予想通りです。……例の人、優しそうな顔して、使う魔法凶悪でした]
[え!?]
[えっ?]
[はい、予想通りです]
[ですよね。いや、正直驚きました。どこかで習える魔法なのか、それとも今話題のオリジナル魔法なのかまでは分かりませんでしたが。とにかく火力がデタラメで、あの厄介なホーンウルフを、魔法三つくらいで倒してました]
[わ~! すごいですね!]
[それホントすごいです!! おれは魔法だとアースウルフを倒すのもたいへんです! よくわからないけど、やっぱりすごい人だったんですね、あの人!]
[本当に予想以上に凄い人、みたいですよ。例の人は]
[具体的には、どのような魔法を使っていました?]
[あ~、それが、実はよく分からなくて。たぶん、風と水、あと土の魔法だと思うんですけど]
[よく分からない、とは?]
[見えない魔法がありました]
[え?]
[みえない?]
[見えない魔法……ですか?]
[文字通り、ウルフに当たる瞬間まで、魔法が見えなかったんですよ。だから、魔法の属性の特定が難しくて]
[ええ……?]
[……えっと、そういう魔法があるんでしょうか?]
[見えない魔法……? え、でもそれ魔物も見えないなら、絶対あたる魔法ってことになりません?]
[必中かまでは、ジロジロ見るのも失礼でしたから確認できていませんが、ウルフたちが対応できているようには見えませんでしたね~]
[ちょっと理解が追いつきませんね]
[同じく。実際に見ても分からなかったくらいには]
[ちなみに、見えたほうの魔法はどのような?]
[あ~っと……]
[ど、どきどきしてきました!]
[おれもです!!]
[単体型でズバッと一撃入るタイプの風魔法と、範囲型の雨みたいな水の魔法は見えました。後、角度的にあまり見えませんでしたが、土魔法で足止めみたいなこともしてました。ちなみに全部詠唱の声は聞こえませんでした]
[すご!?]
[わー! そういう魔法、使ってみたいです!]
[詠唱が聞こえなかったなら、やっぱり無詠唱のオリジナル魔法の可能性が高そうですね]
[そこそこ遠い位置にいましたから、単純に聞こえなかっただけかもしれない……と言いたいところですけど、たぶんオリジナル魔法だと思います]
[威力が桁違いなら、ほとんど間違いないですね]
[攻略系の方がそう思うなら、もう確定みたいなものですね]
[あ、そういえば! あの人まだ里にいるってことですか?]
[一応、少し前までは間違いなく里にいました]
[えっ? でも、あのお兄さんも攻略系のかたなのでは……?]
[それは私も気になっていたところです]
[おれも! おれも気になってて! なんで街に来ないのかなって!]
[あ~、そう言えばそうですね?]
[――そもそも、あの人明らかに先駆者だと思っていたのよね]
[同じく。ただ、攻略系にしては、言われてみるとのんびりしているみたいで]
[そうですよね……]
[あの、すみません……先駆者って、なんですか?]
[おれも知らないので、教えてくれませんか!?]
[あ、先駆者は……改めて説明するとなると、難しいですね]
[あ~っと。別名はパイオニア。古くからの意味は辞書で調べてもらうとして。ゲーム用語としては、いわゆる情報の第一発見者、みたいな?]
[そうそう。最初にその情報を知ったり、使ったりした人のことを、そう呼ぶの]
[わー!! そうだったんですね! 知らなかったです!]
[なるほどー! ありがとうございます!!]
[ありがとうございます!]
[どういたしまして]
[どういたしまして]
[あ。それで、先駆者で攻略系みたいなことをしているのに、まだ街に来ていないって話でしたね]
[そうです。ちょっとおかしいなと思って]
[そう言われてみると……たしかにそうですね?]
[おれも、へんだなっておもってました! ぜったいおれより先に、街にいってるとおもってたので!]
[同じく。戦闘の凄さに気を取られてましたが、よく考えるとおかしいなとは]
[やっぱり、おかしいと思いますよね。攻略系ほど早く動きたいと思っていなくても、あの人絶対精霊のことだけの先駆者ではないと思っていて]
[あ~、あり得る]
[ほかの情報の先駆者になっているかも、ですか?]
[そうです]
[おおー!!]
[すごいですね!]
[でも、もし先駆者狙いなら普通は、攻略系の次くらいには街についていると思うのに、来ていないので……]
[あ~、まさかの無自覚系?]
[あり得ると思うの]
[正直、あり得すぎます]
[無自覚?]
[無自覚系?]
[新作ゲームの先駆者って、ちょっとした憧れなんですよ]
[そうなのですね!]
[へぇー!! でもなんかカッコイイっておもいます!]
[それを無自覚でやっているのが、いわゆる無自覚系先駆者]
[な、なるほど……!]
[おあ、そう言う!]
[……これが正解だった場合、街に来ても無自覚で先駆者になっていそうで……]
[それは……あ~、いつ街に行くかによるのでは?]
[そう思います?]
[あ~……]
[無自覚系って、根本的にものの見方が違うのよね]
[分かる。とんでもない所に目をつけるのが無自覚系先駆者の典型例だ。
……ですからね]
[コホン。そうですよね]
[ですね]
[そう、なのですね?]
[なるほ、ど?]
[――よし。別の話題に移りましょう]
[そうしましょう]
――そうしてまた、尽きない雑談は弾んでいくのであった……。
※明日は、
・二日目のつづきのお話し
を投稿します。
引き続き、お楽しみください!




