四百三十九話 参戦予定とスキル習得!
「それじゃあ、またね、ロストシード」
「お先に~!」
「また後で」
「はい、みなさんお疲れ様でした!
また、のちほど!」
浮遊大地の戦場の中、そう言葉を交わして、先に強制帰還する【タクティクス】のみなさんを見送り。
もう少しだけ、精霊さんたちと一緒に戦ったのち。
こちらも一時間の区切りとなり、神殿の白亜の宿部屋へと戻ってきた。
窓から射し込む朝の光の眩しさに、緑の瞳を細めながら、〈フィ・ロンド〉を解除する。
『いっぱいたたかった~~!!!!』
頭上からふわふわと下り、肩と頭の上に乗った小さな四色の精霊さんたちが、ぴかぴかとまたたく。
得意気に響いた幼い声音が、なんとも可愛らしい!
視界の端に浮かぶお知らせをいったん置いて、自然とゆるむ表情を微笑みに整えながら、口を開く。
「えぇ、今回は本当に、たくさんの魔物と戦いましたね。
お疲れ様です、みなさん」
『しーどりあも、おつかれさま!!!!』
「ふふっ、ありがとうございます」
そうしてひとしきり精霊さんたちと笑みを交し合った後、今度こそ視界の端に浮かぶお知らせへと、視線を移す。
「メッセージが送られてきているようですね」
確認をしようと念じると、目の前に石盤が現れ、【タクティクス】の各種情報が載っているページが開く。
分かりやすく光る連絡欄には、【タクティクス】参加メンバー全員へのメッセージが刻まれていた。
[公式からの新情報について考えた結果、今回のイベントに関しては、攻略系も先駆者も遠慮なく力を発揮したほうがいい、と言う結論が出た。
このあと現実時間の午前中は、ゲーム内での昼と一の夜の時間、計二回、イベントに参戦予定。
時間が合う人は、積極的に参戦をして、魔物の数を減らそう!]
書かれていた文章を読み、内容を整理する。
最初の遠慮なく戦う、と言う部分はまさに、ログイン直後の会話で決まった内容だろう。
それから、今後の浮遊大地への参戦は【シードリアテイル】の大地で、昼の時間と一の夜の時間におこなう予定、と。
一の夜の時間とは……夜を宵の口・夜・深夜の三つの時間に分けて考えた際、宵の口にあたる時間のはずだ。
これはおそらく、【タクティクス】内か攻略系プレイヤーの間で使う、時間の呼び方なのだろう。
もう一度最初から最後まで文をなぞり、一つうなずく。
「つまり――引き続き、殲滅戦に励みましょう、と言うことですね」
あえて不敵な笑みを浮かべてまとめを紡ぐと、精霊さんたちからきゃっきゃと楽しげな歓声が上がる。
それにまたもや頬をゆるめてしまいながら、チラリと窓の外を見やった。
朝の時間はすでに、その半分近い時間を浮遊大地で過ごしている。
次の殲滅戦がはじまる昼の時間までは、残り半分……現実世界の時間に置き換えると、およそ三十分ほどだろうか。
この時間で出来ることの候補は、いくつか思いつく。
ただやはり、一番しておいたほうがいいと思うことと言えば。
「――神々の祈りの間へまいりましょう。
先の戦闘でお力をたまわったお礼と、もう一度恩恵をいただくためのお願いは、この時間にしておきたいので」
『はぁ~~いっ!!!!』
精霊さんたちの返事を聴き、すぐに行動を開始する。
宿部屋を出て、一階の広間へと移動し、まずはと精霊神様のお祈り部屋へと入った。
美麗な神像の前に置かれた長椅子に腰かけ、両手を組んでスキル《祈り》を発動。
――刹那、しゃらん、と綺麗な効果音が鳴った。
「おや?」
スキルや魔法を授かる際に鳴る聴き慣れた音に、閉じていた瞳を開いて、目の前の空中に光り浮かぶ文字を読み上げる。
「スキル《精霊勇姿》?」
精霊、と名のつくはじめましてのスキルに、思わず精霊神様の像と私とを楽しげに行き来している、小さな四色の精霊さんたちを見た。
可愛らしい精霊さんたちは、すぐに私の視線に気づいたようで、ひゅんっと素早くそばへと寄ってくると、ぴかりとその身の色を輝かせる。
『えっへん!!!!
ぼくたち、もっとじょうずにたたかえるよ!!!!』
……まだ何が何だか分からないが、とにもかくにも一つだけ、分かった。
胸を張って宣言している時の精霊さんたちは――普段より二割増しくらい可愛らしい!!
反射的に咲いた満面の笑みをそのままに、形をくずして白い光となり、すぅっと胸元へ吸い込まれていくスキル名を見送ってから、灰色の石盤を開く。
すぐに《精霊勇姿》の名前を見つけ、刻まれていく説明文を視線でなぞった。
[戦闘時、精霊たちの戦意が高まり、より攻撃系の精霊魔法の発動速度を上げ、威力も高めてくれる。常時発動型スキル]
……なるほど。
だから精霊さんたちは、もっと上手に戦えると宣言したのか!
まさに、スキルの内容通りの言葉だったと言うことだ。
「これはますます、みなさんと一緒に戦うことが楽しみになりましたね!」
『うんっ!!!! たのしみ~~!!!!』
心から紡いだ私の言葉に、精霊さんたちがくるくると嬉しげに舞う。
もう一度精霊神様に感謝の念を捧げ、また恩恵を願う。
――この願いは、きっと叶えてくださる。
確信のような敬愛を胸に、お次はと天神様のお祈り部屋へ移動した。
長椅子に腰かけ、祈りを捧げて――しゃらん、と再び鳴った効果音に、ぱちりと瞳を開く。
目の前の空中には、またもやスキル名が浮かんでいた。
「なんと……お次は、《浄化の使い手》と言うスキルですか」
『わぁ~~!!!!』
歓声を上げて、ひゅんっと私の目の前へと集まってきた精霊さんたちへと、また灰色の石板を開いて情報を開示する。
刻まれゆく説明文を、今度は読み上げた。
「[浄化効果を持つ魔法のあつかいに長け、効能が少し向上する。常時発動型スキル]」
一拍だけ、間をあけたのち。
思わず、白亜の天井を仰いだ。
「……浮遊大地では、特効攻撃なのですよね。
浄化魔法の……〈プルス〉は」
今現在でさえ、周囲一帯の魔物たちを一掃し、空白地帯をつくることができる〈プルス〉。
この効能がさらに、少しとは言え向上するとなると……とにもかくにも、とんでもない結果になることだけは、間違いない!
これはまた、とんでもないスキルをいただいてしまった、と言うことだ!!
呆然と見上げていた天井から、天神様の像へと視線を戻す。
さきほど精霊神様からいただいたスキルも、天神様からいただいたこのスキルも。
どちらも、今回の大規模戦闘イベントで活躍することは、すでに約束されているようなもの。
それほどまでに、殲滅を願われているのであれば――これはもう全力で、ありがたく使わせていただくほかに、私が選ぶ道はない。
再度深く、感謝の念を捧げる。
続けて他の神々にもお祈りを捧げ、とくに何も授かることなくお祈り部屋から出た後は、また宿部屋へと戻り。
各種ポーションを飲んで準備を終えると、不敵な笑みを口元に浮かべた。
「それでは……神々のご期待に応えるためにも、また【タクティクス】のみなさんと一緒に、浮遊大地で戦いましょう!」
『はぁ~~い!!!!』
たっぷりの戦意と共に――再び浮遊大地へ、転送!




