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【PV・文字数 100万越え!】マイペースエルフのシードリアテイル遊楽記  作者: 明星ユウ
三章 はじめての公式イベントを楽しもう
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四百三十二話 薬草採取と魔石細工の村

※軽い戦闘描写あり!


 



 しっかりと夕食を楽しんだ後は――再び【シードリアテイル】に、ログイン!



『おかえり、しーどりあ~~!!!!』

「ただいま戻りました、みなさん!」


 ベッドの上で瞳を開くよりも素早く、小さな精霊さんたちが胸元で上げた声に返事をしながら、ゆっくりと身を起こす。


 窓から注ぎ、白亜の室内を美しく照らすのは、夕方の時間を知らせる橙色の光。


 その眩さに緑の瞳を細めながら、多色や水の精霊さんたちをお呼びして、各種オリジナル魔法と共にいつもの準備を素早く整えた。


「それでは、お祈りをしてから、薬草採取にまいりましょう」

『はぁ~~いっ!!!!』


 肩と頭の上でぽよっと跳ねた、小さな四色の精霊さんたちに微笑み、宿部屋から出て階下のお祈り部屋を精霊神様から順に巡り、しっかりと神々へのお祈りをおこなったのち。


 ジオの街の神殿を後にして、次の目的地を目指し石畳の大通りを進んでいく。


 ログアウト前に、冒険者ギルドでうけた依頼の内容は、薬草採取とそれを届けるおつかいクエスト。


 そして、その採取する薬草サナヘルバが生えているとされる、もっとも身近な場所が――ジオの街の外に広がる、大草原だった。


「さて……小さな土の精霊さん」


 ジオの街の外に出てすぐに、足首ほどの高さに伸びた下草が広がる大草原を前にして、左肩に乗る小さな土の精霊さんへと呼びかける。


『うん! やくそう、こっち~!』

「ご助力、感謝いたします」


 呼びかけ一つで、私の思いを察してくださる姿に、ありがたさと感動が胸ににじむ。


 小さな土の精霊さんは、リヴアップルやマナプラムなどの錬金素材を探す時に、いつも先導して教えてくださるので、今回もお力を貸して欲しいと願う予定ではあった。


 それを、願うまでもなく叶えてくださるあたり、もはや以心伝心ということなのかもしれない!


 嬉しさに上がった口角をそのままに、さっそくと薬草サナヘルバの採取を開始する。


 土の精霊さんの案内もあり、草にまぎれて生えるサナヘルバはすぐに見つかった。


「これが、薬草サナヘルバですか」

『うんっ!』


 丸みを帯びた葉を数本伸ばした、艶やかな緑色の草。


 依頼紙の情報とも一致するその草の上で、くるりと回った小さな土の精霊さんにうなずきを返し、手早く一回目の採取を終える。


 必要な葉の枚数は、十枚。


 お次は……と大草原を見回した次の瞬間、軽く前方へと駆け、爆走ヒクイドリの攻撃を回避する。


 そう、今回の採取では、魔物たちにも注意をしなくてはいけない。


 緑色の羽毛を持つ魔物、グラスノンバードを見送り、近くにいる艶やかな茶色の毛並みの巨大兎の魔物、ラージグランドラビットの様子を見つつ、採取を続ける。


 薬草サナヘルバを採取し、グラスノンバードの爆走を避け、時折ラージグランドラビットが足下の地面に穴をあけてくる攻撃をかわしながら、大草原を歩き回ることしばし。


 採取した薬草サナヘルバをカバンに入れて、ふっと一息を吐く。


「――これで、十五枚目ですね。

 念のためにと、少し多く採取しましたが、小さな土の精霊さんのおかげで予想以上に早く集めることができました。

 とても助かりましたよ、ありがとうございます」

『どういたしまして~!』

『つちのこ、すご~い!!!』

『えへへ~!』


 土の精霊さんに感謝し、他の小さな精霊さんたちとの仲良しなやりとりを愛でつつ、それではいよいよ、と薬草のお届け先へ緑の視線を向ける。


 おつかいクエストの目的地は、ジオの街から見て右側に広がる森の奥。

 一度だけ、ひっそりと森の中にある姿をみかけた、隠れ里のような場所。


「お次は、あちらの森の奥にある――ウーヌスの村へ、向かいましょう」

『はぁ~~いっ!!!!』


 楽しげな精霊さんたちの声に、背を押される気持ちで軽やかに駆け出す。


 大草原を抜けて森へ入り、樹々の上を素早く移動すると、あっという間に目的の場所が見えてきた。


 ふわりと優雅に地面へと降り立ち、緑の瞳で前方を眺める。


 立ち並ぶ樹々を一部だけ切り倒して拓き、そうしてできた空間につくられたらしき、小さな隠れ里のような村。


「ここが、ウーヌスの村ですね」

『とうちゃ~~く!!!!』


 夕陽に照らされた木製の家々を視線でなぞり、ゆったりとした歩みで村の中へ。


 ――と、ちょうど横に建っていた、他より少しだけ大きな家の中から、ノンプレイヤーキャラクターだろうお爺様が出てきたことで、第一村人との出逢いと相成った。


 お互いに自然と視線が交わり、お爺様の好々爺然としたほがらかなお顔に、いっそうやわらかな笑顔が浮かぶ。


『これはこれは、栄光なるシードリア様。

 ようこそいらっしゃいました』

「こんにちは。

 エルフ族のシードリア、ロストシードと申します」


 お爺様の歓迎の言葉に、こちらも微笑みながら優雅にエルフ式の一礼をおこない、名前を伝える。


『ロストシード様、ここは魔石細工を生業にしておる、ウーヌスと言う名の村でしてな。

 わしはここの村長をしておる者です』


 ――魔石細工、とはこれまた、何やら魅力的な響きのお仕事ですね?


 とても気になりますが、ひとまずその前に。


「村長さん……と言うことは、もしや薬草サナヘルバの採取依頼について、何かご存知でしょうか?」


 もしや、と閃きたずねてみると、村長のお爺様は少しだけ驚いたように眉を上げた。


『おお、それはまさに、わしが冒険者ギルドに出した依頼ですな』


 それならば、お話は早い。

 ふわりと微笑みを重ねて、この村に来た本題を告げる。


「実は、私が冒険者として、その依頼をうけまして……」


 そう伝えつつ、カバンの中から冒険者の証であるトランプカードのような銅色のプレートと、依頼紙、そしてお届け物である薬草サナヘルバを取り出していく。


 ぱちぱちと、驚きに瞳をまたたかせていた村長のお爺様は、やがて再び嬉しげな笑顔を咲かせた。


『なんとありがたい……!

 サナヘルバは、魔法以外の怪我によく効くので、この魔物のいるウーヌスの森に住むわしらは、特に重宝している薬草なのです。

 依頼をうけてくださり、ありがとうございます、ロストシード様』

「こちらこそ、貴重な学びの機会をいただきましたので、お役にたててうれしい限りです」


 にこにこの村長さんに、こちらまで満面の笑みが咲く。


 依頼をうけ、薬草を採取し、この村へ届ける。

 この一連の一仕事で、これほど喜んでいただける上、知的好奇心を満たし、知らなかった知識を学ぶことさえ出来ているのだ。


 そう考えると、やはり冒険者としての仕事をすることは、お金を稼ぐことだけではなく、私にとっては色々と魅力的な報酬を得ることが出来るものだと言えるだろう。


『こちらが、依頼の報酬として書いておりました、この村の特産品――魔石細工のランタンです。

 どうぞ、お持ちください』

「ありがとうございます。

 あぁ……なんとも、美しいランタンですね」


 夕陽に煌く芸術作品に、思わず感嘆の吐息が零れ落ちる。

 村長のお爺様から手渡された品もまた、実に魅力的な報酬だった!


 繊細に形作られた美しいランタンは、金属を骨組みにして、ガラスのように磨かれた透明な石で作られており、中には美しいバラの花に似た形の赤色の魔石が飾られている。


 まさしく、アンティーク調と呼ぶにふさわしい見目の一品だ。


 まぁ、ランタンそのものが、現実世界では本当にアンティーク以外の何物でもないのだけれど……それは横に置いておくとして。


 これほどの芸術作品が、この【シードリアテイル】の大地では普段も使用されているものなのだと思うと、やはりロマンを感じざるを得ない!


 それに、この作品を作るにあたり、用いられている技術にも興味が湧いた。


 魔石細工、と呼ぶからには、おそらく私が作る装飾品のように、魔石を作り上げたり、削って形を整えたりしているのだろう。


 まさしく――このランタンの中に飾られた、バラの花をおもわす魔石のように。


 ついつい、こういう細工も素敵なものだなぁと、じっくり眺めてしまった。


 気を取り直し、改めて村長のお爺様にご挨拶をしたのち。


 湧き出た好奇心のまま――この後はさっそく、ウーヌスの村の探索をはじめよう!




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― 新着の感想 ―
おぉぉ〜っ魔石細工とはまたとても魅力的な響きのものが出て来ましたね♪ 美しいランタンを持つロストシードさんもとても絵になりそうです(´∀`*)
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