表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【PV・文字数 100万越え!】マイペースエルフのシードリアテイル遊楽記  作者: 明星ユウ
三章 はじめての公式イベントを楽しもう
427/440

四百二十六話 勘違いの訂正と不思議な生態

※戦闘描写(?)あり!


 



 無事に精霊さんたちとの再会を果たし、上機嫌で進むことになった帰路の道中。


 ふいに先頭を歩くアリーセさんが、ポニーテールにした黄緑の長髪を揺らして、くるりと後方を振り返った。


「そう言えば、けっこう【タクティクス】のみんなは勘違いしてるけど」


 切られた口火に、何事だろうかと雑談が止む。

 戦友のみなさんの視線を受けたアリーセさんは、平然とした表情で再度口を開いた。


「あたし、精霊魔法の先駆者、じゃないよ。

 そっちもロストシードさんのほうだから。

 って言うか、精霊の先駆者、にそのあたりぜんぶ入ってるから」


 ――それはまた、初耳ですね??


 思わず微笑みを固めていると、隣ではっとディアさんが息をのむ。


「えっ、あっ……。

 そう言われてみると……そうだね?」


 驚きを含んだディアさんの納得に、アリーセさんが深々とうなずき、再び口を開く。


「そうなのよ。

 精霊魔法が使えるようになったのは、そもそも精霊魔法を習得するために絶対必要な、精霊と仲良くなる方法を、初日の世迷言板でロストシードさんが助言をしてくれたおかげだから」

「そうか……だから、精霊魔法の先駆者もアリーじゃなくて、ロストシードなんだね」

「そーゆーコト!

 みんな、ずっと勘違いしてたでしょ?

 せっかくロストシードさんが入ってきてくれたんだから、ここは訂正しておかないとって思ってたのよ。

 今言えて、スッキリしたわ~!」


 納得の表情を浮かべたアドルフさんの隣で、ぐっと伸びをするアリーセさんからは、言葉通り解放感が伝わってくる。


 その清々しい表情に、つい微笑みを深めてしまいながらも、ふと思い返した。


 そう言えば――初耳だったのですよね、この情報。


 まさか、精霊さんたちと仲良くなる部分だけではなく、精霊魔法の習得という部分まで、先駆者になっていたとは。


 勘違いどころか、当の本人である私はそもそも知らなかった真実が、今ここで明らかになっていますよ、アリーセさん。


 心の中だけで呟きながら、ここで知ることができなかった場合に思いをはせる。

 その場合は……きっとまた、私は盛大に驚く結果になっていたことだろう。


 話題を出してくださったアリーセさんに、胸中で密やかに感謝を捧げる。


 こうして、多くのみなさんにとっては勘違いの訂正、私にとっては純粋に知識を得た会話が終わった後は――お楽しみの機会が巡ってきた!


「あ、ロストシード!

 ロックワームがいたよ」

「えぇ、お知らせをありがとうございます、アドルフさん」


 すでに気づいておりましたとも!


 スゥっと浮かぶ位置をずらして、身体と大きな翼を壁際に寄せてくださったアドルフさんが、手で示した先。


 前方の岩の地面、その一部が円形状に、うっすらと色を変えている。


 そこに、スキル《存在感知》が示す魔物の反応があった。


 フッと、半ば反射的に口角が上がる。

 これは、胸弾む楽しさの表れだ。


 行きの道中では見送ることを決め、この帰りの道中でおこなうと決めていたこと。


 そう、今からはじまるのは――落とし穴の魔物、ロックワームとの戯れ!!


『わくわくっ!!!!』


 肩と頭の上で、ぽよぽよと跳ねる小さな四色の精霊さんたちからも、期待が伝わってくる。


 であれば……さっそく!


「踏みますね」


 わくわくの気持ちをたずさえて、アドルフさんとアリーセさんの間にひらかれた道を歩み進む。


「うん、気をつけて」

「気をつけるのなら踏まないのよ、普通」

「あっ、そうだった」


 お二人の軽快な会話に、後方から上がった笑い声を聞きながら、目的地に到着。


 ピタリと、精霊さんたちがくっついてきた感覚に笑みを深め――そっと、右足で罠を踏んだ。


 刹那、ボコッと落ちくぼんだ低い穴に、そのまま優雅に着地する。


 おぉ! と短く上がった歓声に近いみなさんの声が、洞窟内に響く。


 私のほうは、と言うと……。


『しーどりあ、たべられてる!!!!』

「食まれていますねぇ……やわらかに」


 少しだけ慌て気味の精霊さんたちに、ことさら穏やかに言葉を返す。

 実際、そう切羽詰まった状況ではないのだ。


 と言うよりも、むしろこれは、なんと表現すればいいのだろう……?


 たしかに、食まれてはいる。

 ただそれがとても……やはり、ソフトタッチなのだ。


 さすがに、いい感じにぎゅっと挟まるタイミングの時は、少し多めに生命力が削られてはいるけれども。


 それさえ、隠して持続展開している〈オリジナル:見えざる癒しと転ずる守護の水風〉の回復力によって、すぐに全回復している。


 この浅い落とし穴の中は、魔物製の罠にしてはずいぶんと、脅威のない場所だと分かった。


 つまるところ、アースワームの時とほとんど同じ結果だと言えるだろう。


 一つうなずき、普通に動かせる足でトンと側面を蹴る。


 次の瞬間、もごもごと口を動かすように穴の中が波打ち――予想通り、ぺっと出された!!


 今回は心構えをしていたので、慌てることなく地面に手をつき身をひねって、華麗な着地に成功!


 軽く手を払いながら立ち上がると、どよめきと共にみなさんからの拍手が鳴り響いた。


『しーどりあ、だいじょうぶだった????』


 ぽよっと小さく跳ねて、私の状態確認をしてくださる精霊さんたちに、嬉しさでゆるみかける口元をなんとか整えつつ、返答を紡ぐ。


「えぇ、大丈夫ですよ。

 減った生命力も、もう回復しています」

『よかったぁ~~!!!!』


 穏やかな私の言葉に、精霊さんたちの小さなその身に宿す色が、ぽわぽわと強く光る。

 どうやら、無事に安心していただけたようだ。


 自然と深くなる微笑みをそのままに、お次はと【タクティクス】のみなさんに笑顔を向ける。


「学びを得る時間をつくっていただき、ありがとうございました」


 感謝を伝えた後、つい反射的にさきほどのロックワームとの戯れを思い出して、笑みが零れた。


「ふふっ、落とし穴の魔物は相変わらずでした」

「うん、なにが???」


 そこはかとなく、デジャブを感じる。

 またもや、アリーセさんに不思議そうな顔をされてしまった。


 ――いえ、私もさすがに、説明不足だったとは思います。


 目が点になっていらっしゃるアリーセさんに、内心少々慌てながらも、表面は穏やかに説明の言葉を返す。


「アースワームやロックワームなど、落とし穴型の罠をはる魔物たちは、不思議な生態の魔物だと思いまして」


 一拍、間があいたのち。


「……あたしには、ロストシードさんも、かな~~り不思議な生態かも」

「えっ?」


 そう返されたアリーセさんの言葉に、今度は私の目が点になってしまった。


 果たして……私はいったいいつ、不思議な生態を披露してしまったのだろうか?


 ――謎は深まるばかりである。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
言われてみれば…そうでしたねw もう精霊さんたちに関してはまるっとロストシードさんが先駆者なイメージで居たので、アリーセさんの経緯などもなるほど!となりました(⁎˃ᴗ˂⁎) そして謎に挑むロストさん、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ