表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【PV・文字数 100万越え!】マイペースエルフのシードリアテイル遊楽記  作者: 明星ユウ
三章 はじめての公式イベントを楽しもう
425/441

四百二十四話 ダンジョン【咆哮の洞窟】

※戦闘描写あり!


 



 アドルフさんのひと声を合図に、さっそくダンジョンへと踏み入る。


 二列に並んで入ったダンジョンの内部は、やはり天然の岩肌をさらす大きな洞窟だった。


 靴音を鳴らして進んでいくと、周囲はすぐに夕陽の橙色が届かない、暗闇の世界になる。


 スキル《夜目》があり、ぽつぽつと光る苔も生えているため、見えないわけではないが……それでも、集団で移動するには少々暗すぎるだろうか?


 そう考えていると、かなり広々とした洞窟内を、ぱっと白光が照らし出した。


「明かりを灯す魔法が使える人は、照らしていって~!」


 魔法を使ったアリーセさんが、そう声かけをすると、周囲を照らす魔法を使えるかたがたが、次々と魔法を発動していく。


 ――これは私も、懐かしい魔法を使う、好い機会だ!


 口元の微笑みを深めて、一つの光魔法と、一つの精霊魔法を唱える。


「〈ルーメン〉

 〈ラ・ルンフィ・ルン〉」


 とたんに、頭上に出現した煌く球体状の白光と、またたきの間に現れた小さな光の精霊さんたちが、周囲を明るく照らした。


「光の精霊魔法……」


 ふよふよと漂いながら、辺りを照らす小さな光の精霊さんたちを見て、そう感心したような声音で呟きを零すディアさん。


 ディアさんの呟きに、私の頭に乗っていた小さな光の精霊さんが、ぽよっとどこか得意気に跳ねた。


『えっへん!

 ぼくたち、ぴかぴかじょうず!』


 可愛らしい反応に、ついつい頬がゆるんでしまいそうになりながらも、深々とうなずきを返す。


「えぇ、本当にお上手です。

 明るくて、とても見やすくなりましたよ」

『えへへ~!』


 頭上の嬉しげな声に、こちらを見ていたディアさんと二人、小さく笑みを零す。


 本当に、精霊さんたちは愛らしい!


 もちろん可愛らしいだけではなく、それぞれの属性ごとに魅力もある。

 今回のような機会があれば、その魅力を存分に発揮していただけるよう、私ももっと心がけよう!


 密かに決意をしながら、はじめてのダンジョン探索に心を躍らせ――たところで、ふと気づく。


 そう言えば……私はまだ、このダンジョンの名前さえ知らなかった!


 絶妙なうっかりに、内心慌てながらも自然な振る舞いで、隣の空中を滑るディアさんへと問いかける。


「あの、ディアさん。

 まだ伺っていなかったことを一つ、思い出したのですが……」

「うん? 何かあったかな?」

「えぇっと……このダンジョンのお名前を」


 ディアさんの水色の瞳が、ぱちりとまたたく。


「そうか、ロストシードはまだ知らなかったんだね。

 ここは――【咆哮(ほうこう)の洞窟】、という名前のダンジョンだよ」

「なるほど、ありがとうございます」

「どういたしまして」


 お礼を伝えつつ、咆哮の名を冠するダンジョンには、どのような魔物たちが出てくるのだろうかと想像をふくらませる。


 ほえる、と言う言葉に表すと、思い浮かぶ魔物はやはり狼姿の魔物たちだ。

 ただ……あまり、洞窟内にいるイメージはない。


 むしろ、洞窟と言えば。


「前方の地面、避けて進んで。

 ロックワームが落とし穴の罠をしかけているから」


 凛と注意を促したアドルフさんの言葉に、前方を見やる。


 すでに《存在感知》が示していた場所には、おそらく落とし穴の罠をはる魔物が隠れているのだろう。


 このダンジョン内の地面は土の地面ではなく、岩の地面であることから、ロックワームとは岩版アースワームだと予想できた。


 そっと、片手を上げる。


「落ちてみても構いませんか?」

「なんて???」


 くるりと振り返ったアリーセさんに、思い切り不思議そうな疑問の声を返された。


 たしかに、注意を受けた罠に自らかかってみようとしているのだから、ずいぶん奇妙な行動に思われても仕方がない。


 ここはしっかりと、説明をつけ加えておく。


「はじめて遭遇する魔物なので、どのような罠なのか、確認をしたいと思いまして」

「あっ、そゆこと」


 無事に、アリーセさんから納得のうなずきが返って来た。


 とは言え、隊列を組んで移動しているのだから、あまり足並みを乱すのも良くない。


 短い相談の結果――ロックワームの罠は、帰りの道中で試すことになった。


「あははっ! 本当に面白いことを考えるね、ロストシードは!」

「さすが先駆者。

 根本的な視点から、すでにかなり私たちとは違うことが分かったよ」

「そうでしょうか?」


 アドルフさんとディアさんが、楽しそうにそう声をかけてくださる。


 それほどまでに、面白く奇抜な挑戦をしようと思ったという自覚はないのだけれど……攻略系のお二人がそうおっしゃるのならば、やはり面白く奇抜だったのだろう。


 その後も、ロックワームの落とし穴に気をつけつつ、隊列を組んだまま前進して行く。


 奥へ奥へと進む道中、ふいにロックワームとは別の魔物が《存在感知》に引っかかった。


 小さめの灰色の岩を二段重ねたような岩。

 以前にも戦ったことがある、岩に擬態する魔物、ツインロックだ。


 攻略系プレイヤーの集団である【タクティクス】の一団にとって、本来ならば苦戦をすることなどあり得ない相手。


 すぐに倒して、先へ進むのだろう――そう思ったのは、一瞬だけだった。


「……数が多いですね」

「あ、さっすがロストシードさん。

 もうツインロックの群れに気づいたんだ?」


 ぽつりと零した私の呟きを、不敵な笑みで拾ったアリーセさんに、微笑みを消してうなずきを返す。


「はい。広間のような空間全体に、数えきれないほど密集していますね。

 あの広間を、通り抜けるのですか?」


 私の問いかけに、アリーセさんが強気な笑顔を見せた。


「そう! 護り固めて、突っ切るよ!」


 ハッキリとした断言に、深くうなずき、覚悟を決める。


 今回のダンジョン攻略の本題である、いわゆるボス戦までは、なるべく魔力や気力を温存しておきたいところ。

 そのため、防御系の魔法で護りつつ、一気に走り抜ける作戦なのだろう。


 広い空間の入り口にさしかかった次の瞬間には、アドルフさんが腰の剣を抜き払った。


「総員、突貫!」


 大きな白い翼がバサリと動き、突風が吹く。

 前方に集まっていたツインロックたちが吹き飛ぶ姿を合図に、全員で駆け出した。


 四方八方に各々の魔法が飛ぶ中、私も〈オリジナル:吹雪き舞う凍結の細氷〉を発動して、周囲一帯を凍結させることでツインロックの動きを封じ、進む道を確保する。


 それでも、次から次へと飛び上がって襲い来る二段岩の魔物たちに、たしかにこれはいちいち相手をしてはいられないと悟った。


 飛んでくるツインロックたちに向けて、〈オリジナル:昇華一:風まとう水渦の裂断〉と〈オリジナル:昇華一:風まとう氷柱の刺突〉を発動し、退けつつ。


 素早く広間を抜けて、先へとつづく通路へ何とか駆け込んだ。


 とたんに、パタリと襲撃が止まる。


 ほっと一息つき、後方を確認すると……。


「あ~~! 石化した~っ!」

「解除ポーション、解除ポーション……」


 口々にそう語るみなさんは、腕や腹部を艶やかな灰色にそめている。


 あれは、ツインロックの攻撃を受けたことによる、石化の状態異常。

 やはりさすがに、あの数の魔物たちがくり出す攻撃をすべて防ぐことは、難しかったようだ。


 取り出された石化の解除ポーションを見て、とっさに口を開く。


「あの、私が解除いたしましょうか?

 石化を解除する、オリジナル魔法を使えますので」


 今こそ、以前習得した〈オリジナル:石化崩し解く旋風の白砂光〉の出番!


 そう思い声を上げると、半数以上のかたがたのお顔に、驚愕がうかんだ。


「やっぱり、ロストシードも解除魔法を使えるんだ」

「予想はしてたわよ、予想だけはね!」

「あははっ! 心の準備を忘れていたんだね、アリー?」

「すっかり忘れてたのよ~~っ!!」


 どうやら私と同じく解除魔法を習得しているらしいディアさんと、何やら心の準備を忘れていたらしいアリーセさん。


 薄暗い洞窟内にはしばし、アドルフさんの笑い声と、石化解除時の感謝の声が響いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
実力者揃いなタクティクス皆さんとのダンジョン攻略ワクワクします♪ そして罠に関しては確かに、ロストさんは今までも敢えて嵌って色々確認していましたねぇ。団体行動ではしっかり節度を弁えているロストさん、流…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ