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【PV・文字数 100万越え!】マイペースエルフのシードリアテイル遊楽記  作者: 明星ユウ
三章 はじめての公式イベントを楽しもう
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四百二十三話 美貌には破壊力があるらしい

 



 しっかり腹ごしらえの昼食を楽しんだ後――再び、【シードリアテイル】へログイン!



『おかえりしーどりあ~~!!!!』

「ただいま戻りました、みなさん!」


 可愛らしい小さな四色の精霊さんたちに、ついつい満面の笑顔であいさつを返して、ベッドから身を起こす。


 ジオの街の神殿、その宿部屋の窓から外を見ると、まだ昼の陽光が射し込んでいた。


 陽光の眩しさに緑の瞳を細めつつ、精霊さんたちへと告げる。


「【タクティクス】のみなさんとお約束した、午後からのダンジョン攻略に遅刻しないよう、さっそく準備をいたしましょうか」

『はぁ~いっ!!!!』


 元気な返事に微笑み、素早く各種精霊魔法とオリジナル魔法を持続展開して、慣れた準備を完了。


 少し早く戻ってきたとはいえ、お約束の集合時間は、この大地での夕方に切り替わる頃。


 あまり時間に余裕がないため、神々へのお祈りは広間の中で心を込めつつおこない、すぐに神殿を出る。


 向かう先は――冒険者ギルドの近くにある、青いお屋根の一軒家。


 ノンプレイヤーキャラクターである街の人々が、足早に行き交う大通りを進み。

 たどり着いたレギオン【タクティクス】のクラン部屋の扉を開いて、中へと入る。


 とたんに、すでに集合していたお仲間のみなさんが、いっせいにこちらを見た。


「あ! ロストシードさんだ!」

「来てくれたんだ~!」

「いらっしゃ~い!」


 十人ほどの方々から、次々とかけられる歓迎の言葉をうけて、微笑みながら歩み寄り、ご挨拶を返していく。


 その内、昼から夕方へと時間が移り変わり。


 ディアさんや、アドルフさんとアリーセさんもログインして、さらに十数名のお仲間が集まった。


「みんな~! ポーションとか武器防具の忘れ物はない~?」


 集まった数十人の戦友たちへと、サブリーダーのアリーセさんが最終確認をする。


 みなさんに混ざって、私も確認や準備完了の旨を告げたのち。


「それじゃあ、ダンジョンに出発!」


 天人族特有の大きな白い翼を、バサリと広げたアドルフさんのひと声で、ダンジョンへの移動を開始した。


 クラン部屋を出て、大通りを進み、左の石門から外へ。

 なかなかに大所帯な数十人の行列に混ざって、ジオの森を進み、ダンジョンへと移動して行く。


 これほどの大人数での大移動は、【シードリアテイル】のサービスが開始した初日に、目醒めの地からエルフの里へと移動した時以来ではないだろうか?


 思わず、その新鮮さを楽しみながら歩くことしばし。


 たどり着いたダンジョンの入り口を目前にして、隊列が組まれることになった。


 私の立ち位置はどうなるのだろう、と大人しく眺めていると、スゥ――と空中を滑って現れたディアさんが、さらりと告げる。


「ロストシードは、私の隣だよ」


 フェアリー族自慢の美しい水色の翅を揺らして、ディアさんはそのまま私の手を引き、隊列の前列へと導いて……いえ、前列と言うより、ここは。


「私と一緒に遠距離魔法を撃ちつつ、状況に応じてアリーセのように前に出て戦うと良いよ」


 そう微笑んだディアさんに、うっかりこの位置で本当に大丈夫なのかと、たずねてしまうところだった。


 なにせ、今回の隊列におけるディアさんと私の立ち位置は、先頭を行くアドルフさんとアリーセさんのすぐ後ろ。


 つまり、比較的自由に動く前のお二人を除くと、事実上の最前列なのだ。


 たしかに、集団での戦闘方法は、浮遊大地での大規模戦闘時に学んではいる。

 実力も、一応この実力者集団の足を引っ張らないていどにはあると、分かってはいるけれども。


 それでも、まさか。


 はじめて探索する最前線のダンジョン攻略で――隊列の最前線と言う、激戦確定の位置に立たされることになるとは、さすがに予想外ですよ!?


 危うく真顔になりかけて、なんとか穏やかな微笑みを保つ。


「えぇっと……ご期待にそえるよう、励みます」


 もはや、無難な言葉しか出てこない。


 正直なところ、あまりにもはじめましての状況がすぎるので、許していただきたく……!


 そう、思わず心の中で慌てていると、肩と頭の上でぽよっと軽く、小さな四色の精霊さんたちが跳ねた。


『ぼくたちもたたかう~!!!!』


 どうやら、精霊さんたちはやる気に満ちているようで。

 反射的に微笑みを深めながら、可愛らしいみなさんにうなずきを返す。


「えぇ、ぜひご一緒に。

 怪我をしないように、気をつけて進んでまいりましょうね」


 刹那、「精霊って怪我するの??」といった、盛大に疑問符を浮かべたような言葉が、周囲から零れ落ちた。


 その声に、油断をしてはいけませんよと、胸の内で呟く。


 思い出すのは、もうずいぶん前に感じる、サロン【ユグドラシルのお茶会】のみなさんと釣りを楽しんだ時の帰り道。


 急な混戦となった戦いの最中……アルテさんのお友達である、小さな緑の精霊さんが、フォレストウルフに襲われて痛みをうったえた時のこと。


 あの一件で、精霊さんたちが痛みを感じることを知った身としては、この【シードリアテイル】の自由度ならば。


 ――精霊さんたちが怪我をすることさえ、充分にあり得ると思うから。


 そう考えていると、精霊さんたちがまた、ぽよぽよと跳ねる。


『しーどりあも、きをつけて!』

『はじめてのまもの、いるかも?』

『じめんのわなも、あぶないよ~!』

『くらいときは、あかるくしてね!』


 あぁ……本当に、精霊のみなさんは優しくて可愛らしい!!

 この先もいったい何度、あるいはどれほど深く、私の心を射抜くおつもりですか!?


 思わず、にっこりと満面の笑顔を咲かせてしまいますよ!


「はい! ご助言をありがとうございます。

 その上で――大切なみなさんが怪我をしないように、お護りいたしますね」


 せめてものお返しにと、心を込めてそう伝える。

 とたんに、小さな四色の光がぽわっと強まった。


『わぁ~いっ!!!!

 しーどりあは、ぼくたちがまもる~!!!!』

「ふふっ! 嬉しいです」


 これほどまでに可愛らしい一方で、力強い頼もしさも感じる。


 さすがは精霊さんたちだ、と指先で順番に撫でていると、目の前に立っていたアリーセさんが急に半歩、身を引いた。


「すっごい美貌の破壊力!」


 叫び声に、緑の瞳を精霊さんたちからそちらへ向けると、口元をかすかに引きつらせたアリーセさんが、私を見ていらっしゃる。


「破壊力……とは?」

「ううん、口から出ただけだから気にしないで」


 驚きながらの問いかけには、どこか真剣な表情で首を横に振りながら、そう返された。


「えぇっと、分かりました……?」


 何一つ分からなかったけれど、アリーセさんがそうおっしゃるのならば、追及はしないほうが良いのだろう。


 疑問をぬぐえないまま、しかし会話を終えようとした、その時。


『えっへん!!!! しーどりあはうつくしいの!!!!』


 そう、なぜか精霊さんたちが自信たっぷりな声音で、アリーセさんへと告げる。

 それに、アリーセさんは深々と神妙なお顔でうなずいた。


「ほんとにね」


 はて? と、ついつい首をかしげてしまう。


 たしかに、ロストシードの姿は美しいけれども。

 結局、破壊力の意味は何だったのだろう……?


 最後までよく分からなかった会話は、アドルフさんの翼がはためく音で、今度こそ終わりを迎える。


「さぁ――ダンジョン攻略、開始!」


 凛と響いたリーダーの声に、レギオン【タクティクス】の一員として、応える声を響かせた。




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― 新着の感想 ―
ゲーム開始時にキャラクリを頑張っていた頃が懐かしいです〜♪ そしてその外見と内面が合わさった時…!!その辺りもまだまだ無自覚なロストシードさん、ですかね〜( *´艸`)w やる気満々だったり自慢気な…
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