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【PV・文字数 100万越え!】マイペースエルフのシードリアテイル遊楽記  作者: 明星ユウ
三章 はじめての公式イベントを楽しもう
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四百十三話 精霊と恩恵の先駆者でした

 



 間違いなく、攻略系プレイヤーであるアリーセさんやアドルフさん、それにディアさんが、どうやらご存知ないらしいと気づいた、今回の恩恵バフの一件。


 ……な、何はともあれ、ひとまずご説明をしてみましょうか!


 さきほど私がお伝えした、必然的に恩恵を授かったという部分だけでは、そもそも単純に説明不足ですからね!


 コホン、と軽く咳払いを響かせてから、改めて三人へと説明を紡ぐ。


「神々へのお祈りの際、恩恵をより授かれるようにお願いをしましたところ、それはもう、驚くほどの頻度で発動する、バフ祭りのような状況になりまして」

『おんけい、いっぱいだった!!!!』


 あぁ、可愛らしい小さな四色の精霊さんたちのわくわくなお声に、なぜか今は特に癒されますね!


「それは凄いね!」

「お祈り……バフ祭り……」

「バフ祭りのような状態になりまして――って、そんなのはじめて聞いたんだけど!?」


 えぇ、はい。

 説明不足などと言う次元のお話ではありませんでしたか、そうですか……。


 純粋に青の瞳を輝かせている、アドルフさんはともかくとして。

 思考の海に沈んでいるディアさんと、明らかに全力で驚いているアリーセさんを見ても察することができないほど、私もにぶくはないつもりですとも!


 つまり、お祈り効果による恩恵バフ祭りは――攻略系のかたでも、はじめて聞くような方法だったということですね!?


 少しだけ引きつりかけた口元を、気合いと根性で整えて、穏やかな微笑みに戻していると、頭を抱えていたアリーセさんがバッと立ち上がった。


「ちょっとみんな!! 協力して!!

 神殿でお祈りする時に、恩恵発動してほしいって願ったら、ホントに発動した――みたいな情報が出てないか、探して!!」


 広々とした部屋に、凛と響き渡るサブリーダーの声は、なかなかに効果絶大だったらしく。


 並ぶ机を囲んで談笑していたみなさんが、あっという間に石盤を出現させて、操作をはじめる。


 なんとも身も蓋もない言いかたで、検索されているような気がするけれど……今は横に置いておくとして。


「新しい分野の先駆者が確定するかもしれないから、念入りに探したほうが良いかもね」

「それよ! それ!!」


 ディアさんの穏やかな水色の瞳と、アリーセさんの涼しげな蒼の瞳が、同時にこちらを見た。


「新しい分野の……先駆者、ですか?」

『しーどりあのこと????』


 半ば反射的に問いかけると、肩と頭の上に乗る四色の精霊さんたちが、コテッと小さな身体をかたむけて、そうお二人にたずねる。


 お二人は、片や微笑んだまま、片や真顔で、深々とうなずいた。


「ロストシードならありえる気がしてくるから、不思議だな」


 そこに関しましては、私のほうが全力で不思議だと思っていますよ、アドルフさん。

 ついつい、視線を窓の外に広がる、晴れ渡った朝の青空へと放り投げる。


「あった?」

「ない」

「こっちも無い」

「見つからない」

「もしかしなくても、やっぱり新情報?」


 そう、確認の言葉たちが部屋の中を飛び交う時間が、しばらくつづいた後。


「やっぱり、ないわよね」

「ないね」

「無いみたいだね」


 アリーセさん、アドルフさん、ディアさんの言葉により、事実上の確定を察した。


「ロストシードさん、やっぱりお祈りで恩恵バフ祭りにする方法は、ロストシードさんが先駆者っぽいよ」


 真顔で伝えてくださったアリーセさんの結果発表に、思わず苦笑が零れる。


「いえ、その、お祈りと言うよりは、お祈り中におこなった、神々へのお願いの結果なのですが……」

「なら、恩恵お願いバフ祭り?」

「神頼み恩恵バフ祭り、とか?」


 さらに身も蓋もない感じが増してしまった。


 いや、そもそも、本題はそこではない。

 そこも大切だけれど、もっと重要な部分を、反射的に横に置いてしまった。


「……私、精霊の先駆者だけではなく、恩恵バフ祭りの先駆者にもなってしまったのですね……」

「少なくとも、恩恵を意識的に活用する方法を見つけたという情報は、ロストシードがついさっき、誰よりも早く情報開示したことになるかな」

「そうですか……」


 若干悩ましげな私の呟きに、ディアさんが穏やかな表情で、的確に答えてくださる。


「ほら、石盤を出して、ロストシード。

 こういう感じで、情報を書き込むんだよ」

「あ、えぇ、承知いたしました」


 アドルフさんが出していた石盤のページ――語り板の情報を書き込むページを確認して、自ら開いた新しいページに情報を書き込んでいく。


 正直なところ、これほどハッキリと新情報を提供する行動をしていても、まだ私自身がこの方法の先駆者であるとは、信じられないのだけれど……。


「そう言えば、ロストシードさんってそもそも、お祈りの先駆者だったりしない?」


 おっと? なんだか流れがあやしくなってきましたね!?


 いきなり、そのようなことを言いはじめたアリーセさんに、情報を書き込む指先を止めてしまう。


「うぅん……?

 それはちょっと、分からないね。

 元々神官ロールプレイをしようとしていたプレイヤーのほうが、早かった可能性があるんじゃないかな?」

「あ、そっか!」


 ディアさんの冷静なご判断が、不思議ととても頼もしく感じます!!


「それなら、恩恵の先駆者とかは?」


 アドルフさん!?

 そのなぜか私に先駆者要素をつけ足そうとする流れには、出来れば乗らないでいただきたかったのですが!?


「恩恵は……あるかも」


 ディアさん!!

 そこは否定をしてくださるところでは!?

 違いましたか、そうですか……!


「ロストシードさん、一つ目の恩恵を習得したのって、いつだった?」


 アリーセさんに問われて、書き込みを終えた石盤を消しながら、記憶をさかのぼってみる。


 種族特性により、エルフ族のプレイヤーが最初から習得している、〈恩恵:シルフィ・リュース〉は例外として。


 最初に習得した恩恵は……〈恩恵:ラ・フィ・ユース〉。

 恩恵により発動する、永続型の補助系下級精霊魔法であり、下級精霊の力で、精霊が関わるスキルや精霊魔法の効能を引き上げてくれる、すぐれもの。


 この恩恵を授かったのは、たしか精霊神様へお祈りをしていた時で……。


「一日目の夜頃だったかと」

「ハイ確定! 恩恵の先駆者だった!!」

「えっ」


 そこまで速攻で確定する内容でした!?


 あまりにも勢いよく確定するアリーセさんに、つい助けを求めるような視線を、ディアさんに向けてしまう。


「一日目の夜は早すぎる。

 二日目以降なら、もしかすると私のほうが早かったかもしれないけど、一日目の夜はさすがに……うん」


 否定の余地がありませんでしたか、そうですか……。


 波打つ蒼色の長髪をゆらして、首を横に振るディアさんに、そろりと肩を落とす。


「ロストシードさんは、精霊と恩恵の先駆者だったのね!」

「その……ようですね」


 しみじみと、しかしどこかやり遂げた満足感をかもしだしながら、そうしっかりとトドメを刺し……いえ、確定した事実を伝えてくださるアリーセさんに、かろうじて微笑みを返す。


 個人的には、究極的なマイペースを発揮して、遊んでいたサービス開始初日。


 あの日に、二種類の分野での先駆者になっていたという事実を前にして……もう、驚きが隠せませんよ!!




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― 新着の感想 ―
恩恵までも…流石はロストシードさんですね〜! タクティクスの皆さんも、本当に先駆者であるかどうかの精査が迅速かつ正確で流石は攻略系の方々だと感心してしまいました〜! そしてすぐさまロストシードさんに掲…
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