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【PV・文字数 100万越え!】マイペースエルフのシードリアテイル遊楽記  作者: 明星ユウ
三章 はじめての公式イベントを楽しもう
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四百十二話 気になるご同業と新情報?

 



 ご挨拶後、盛り上がった室内で、ばさりと翼を動かす音が鳴る。


 窓から射し込む朝の陽射しを浴びて、より神々しさが増したアドルフさんが、甘やかな美貌に微笑みを浮かべた。


「みんな、ロストシードとも仲良くね」


 みなさんへと向けた言葉に、さまざまな表現で了解の言葉が響く。


 嬉しさに微笑みを深めていると、アドルフさんが私にも微笑みかけてくださった。

 つい二人そろって、にこにこと笑顔を交わし合う。


 広い室内はすぐに、にぎやかな歓談がはじまった。


 アリーセさんとアドルフさんのお二人が、するりと椅子に腰かける姿を見て、私もアリーセさんが案内をしてくださった席に着く。


 すると、何やらアリーセさんが涼やかな蒼の瞳を細めて、こちらを見た。


 その瞳が、まるで獲物を捕らえる手前のようにキラリと煌いて見えたのは……気のせいだと思いたい。


「さっきの上での戦闘中、なんかロストシードさん、また強くなってなかった?」


 その言葉に、少し前におこなっていた、浮遊大地での戦闘を思い出す。


 途中から、【タクティクス】のみなさんと合流して、集団の近くで戦っていたのだが……強くなったように見えたのは、間違いなく神々の恩恵によるバフのおかげだろう。


 ――さて、これはどうお答えしたものか……。


「あぁ、えぇっと。

 それには少々、理由がありまして……」


 苦笑をしながら、そう切り出した時だった。


「その話、私も聴いて良いかな?」


 隣の席から、穏やかな声がかけられる。


 そちらを振り向くと、波打つ蒼色の長髪と、淡い水色の翅がゆれる姿が、緑の瞳に映った。

 優しげな美貌にそろう、翅と同じ水色の穏やかな瞳が、好奇心を宿してこちらを見つめている。


「あぁ、ディアはこういう話、気になるよね」

「ディアのことは、ロストシードさんに紹介しないとって、けっこう前から思ってたから、あたしは大歓迎!」


 穏やかな雰囲気を持った、フェアリー族の青年の問いかけに、アドルフさんは納得を、アリーセさんは肯定を返して、私へと向き直った。


「ロストシードも、良いかい?」


 アドルフさんの確認に、攻略系のかたがたにならば、恩恵のことを伝えても大丈夫だろうと、すぐに判断してうなずきを返す。


「えぇ、構いません」

「ありがとう」


 嬉しそうに礼を紡ぎ、席をこちらの机へと移したフェアリー族の青年は、やわらかな表情で、私へと水色の瞳を注いだ。


「私はディア。

 見てのとおりのフェアリー族で、魔法使いだよ。

 ――ようやく会えたね、シードリアの魔導師殿?」


 私やアリーセさんと同じ、魔法使いだと告げたフェアリー族の青年、ディアさん。

 そのやわらかな表情に、楽しげな色が混ざる。


 一方で、こちらは少しの気恥ずかしさに、眉が下がった。


「はじめまして、ディアさん。

 その……よろしければ、ロストシードと呼んでいただけると、ありがたいのですが……」

『しーどりあは、はずかしがりやさんなの!』


 何やら、右肩に乗る可愛らしい小さな水の精霊さんに、サラリと暴露されてしまった気がしますね??


「恥ずかしがり屋さんだったのか。

 それなら、ロストシードと呼ばせてもらうね」

「はい、そちらでお願いいたします」


 とにもかくにも、ディアさんに名前で呼んで貰えるようなので、良しとしましょう。


「ディアは、攻略系で一番の魔法使いって言われるくらい、オリジナル魔法が得意な人よ、ロストシードさん!」


 そっと上げた右手で、小さな水の精霊さんをよしよしと撫でていると、アリーセさんが楽しげに口角を上げて、そう私に教えてくださった。


 攻略系で一番の魔法使い。

 その評価はたしか、以前にもアリーセさんから聞いたことがあった。


「もしかして……レギオン参加のお誘いの時に、おっしゃっていたかた、ですか?」

「アタリ!」


 ――これは私も、楽しくなってきましたね!


 思わず、緑の瞳を煌かせるような笑顔で、ディアさんを見つめてしまう。


 私の視線に、にこりと優しげな微笑みで応えてくださったディアさんは、かすかに水色の翅をゆらしてから、お返しのようにキラリと翅と同じ色の瞳を煌かせた。


「もしかして、私の知識が役立つような理由なのかな?」

「そうだった! それでそれで!? 理由って!?」


 綺麗に本題へと話題を戻してくださったディアさんと、わくわくなアリーセさん。

 その隣で、静かにキラキラと瞳を煌かせるアドルフさんを前に、ついこちらも微笑みが深まる。


 それでは――ご希望どおり、私がまた強くなったように見えた理由を、お伝えいたしましょう。


「実は、恩恵のバフを活用していたのです」

「恩恵って……あの、祝福とは別のやつよね?」

「自動的に勝手に発動する、バフ効果のことだよね」


 密やかに、小声で告げた私に合わせて、アリーセさんとディアさんもこそこそと、声量を落として話してくださる。


 お二人の言葉にうなずくと、今度はアドルフさんも、そっと机に身をよせた。


「たまたま、あの時に恩恵が発動したの?」

「いえ。今回の戦闘時に授かった恩恵は……たまたま、と言うよりは、必然的なものでしたね」


 そう――なにせあの時は、お祈り効果によって、ほぼほぼ必然的と呼べるほど確実に、恩恵を授かっていたのだから。


「待って、いきなりわかんなくなった」


 サッと片手を上げて、待ったをかけるアリーセさん。


 その隣で、思案するようにゆるく握った片手で口元を隠したディアさんが、ふっとその手を外して、真剣な表情で口を開いた。


「私たち自身の意思で発動できない恩恵を、必然的に発動させた……と言うことかい?」

「事実上、そのような状態でした」


 ディアさんの疑問に答えながらうなずくと、アドルフさんが不思議そうな表情をうかべて、ディアさんを見る。


「ディアは出来るかい?」

「出来るなら、まっさきに君やアリーセに方法を伝えているよ」

「あぁ……それはそうだね」


 うん、と笑顔でうなずくアドルフさんに、ディアさんが小さく苦笑したところで、アリーセさんが机に撃沈した。


 ゴンッとなかなかにいい音が鳴ったのだけれど……大丈夫だろうか?


「アリー? 大丈夫かい?」


 そっと肩に手を当て、そうたずねるアドルフさんの声音は、少し心配そうな響きを宿している。


 たっぷり、一拍の間ののち。


 ガバッと身を起こしたアリーセさんが、大きく口を開く瞬間を見た。


「これで語り板に情報載ってなかったら、また新情報発見してるってことだからねロストシードさんっ!!」

「あっ、はい。

 ……えっ?」


 もしかして、今回の恩恵の件は。


 ……攻略系のみなさんでも、ご存知ないものでした?




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― 新着の感想 ―
はわぁ〜ディアさん何だか雰囲気が穏やかかつ知的でとても素敵です!そしてロストシードさん〜攻略系内でも流石の無自覚っぷりですねw まさかの素晴らしい手土産( *´艸`) 小さな水の精霊さんのフォローもと…
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