四百九話 幕間四十三 狙ったエルフは捕まえてみせますの!
※主人公とは別のプレイヤー、レディ・フローラ視点です。
(幕間二十五のプレイヤーさんです)
素晴らしい没入ゲーム【シードリアテイル】にとって、第一回目の大規模戦闘イベントがはじまって、三日目の今日!!
「ロゼ! あちらを見てちょうだい!!」
「うん? ……あぁ、彼か」
つ・い・に!!!
わたくしたちのお茶会仲間、ロストシードの友人!!
アトリエの中でも有名なあの【紡ぎ人】に所属している、エルフ族での錬金術の先駆者!!
ステラとシルラスが【ユグドラシルのお茶会】に参加する時に、一度だけ語り合った、とっても気さくな方!!
あの――アルが!
一人でいる瞬間を、見つけてしまいましたわ!!!
「声をかけるのかい?」
「と~~ぜんでしてよ!!!」
かっこよく笑うロゼの質問に、パッとお気に入りの扇子を広げて宣言したあと、すぐにアルの背中を追いかけ、さっそく声をはって――まずは、ごあいさつから!
「ごきげんよう!!」
「うおっ、びっくりした……って、フローラさんたち!
久しぶりですね~!」
わたくしの元気なあいさつに、驚きながら振り返ったアルは、前の時と同じように穏やかな笑顔でわたくしとロゼにあいさつを返してくれて、ちょっとだけ安心しましたわ!
すこ~しだけ……すっかり忘れ去られていたら、どうしようかと思っておりましたけれど。
これが、杞憂、と言うことなのね!
「うん、久しぶり。
アルもイベント、楽しめているかい?」
「ま、それなりにってトコですかね~」
「ふぅん?
――そう言えば、これからどこかに行く予定が?」
「あぁ、いや、ちょうどそこの商人ギルドで、商品を渡して来たところです。
ここから先は、予定は未定ってやつですよ」
あらあらあら!!!
ロゼったら、わたくしよりも先に、アルの予定を訊き出すなんて!!
もう――さすが過ぎましてよ!!
「それなら、近くにある僕たちのクラン部屋で、お茶でもして行かないかい?」
「……へっ?」
まぁ~~!!
なんて華麗なおさそいかしら!!
ロゼにはあとで、とびっきり美味しい紅茶をいれて、この感動にふるえる心からの感謝を、完璧に伝えてみせますわ!!!
ロゼのおさそいをきいて、わたくしに濃い緑の瞳を向けてきたアルへのお返しは、もちろんこの輝く笑顔ですわよ!!
「大・歓・迎!! でしてよ!!!」
「――と、リーダーも言っていることだから。
ゆっくりしていきなよ」
開いた扇子をふわりとひと仰ぎする間に、驚きが広がっていたアルのお顔も、ふっと穏やかな笑顔に戻って……。
「なら、またご相伴にあずかります」
そう言ってくださるところは、やっぱりロストシードの友人なだけはありますわね!!
「そうこなくてはね」
「嬉しいお返事ですわ!!
さぁさぁ! こちらへ!!」
ご招待が決まったからには、わたくしも【ユグドラシルのお茶会】のサロンミストレスとして、全力でおもてなしさせていただきますわよ!!
すぐにサロンの部屋へとご案内して、席についてもらったあとは、美味しいお飲み物とお菓子を出して――お茶会のはじまりですわ!
話題に上がるのは、もちろん!
共通の友人、ロストシードのこと!
「そうだ、実はここだけの話……ロストシードさん、あの超有名な攻略系レギオン【タクティクス】に参加したんですよ」
「えっ!? あの【タクティクス】に!?!?」
「それはまた……さすがは麗しのロストシード、と言いたくなるね」
「それ分かります、めちゃくちゃ分かります」
アルをお招きしただけで、こんなにすごい最新情報が聴けるなんて、夢にも思いませんでしたわ!?
もちろん、ロストシードでしたら、攻略系のレギオンに入ることも当然だと思っていましたけれど……。
それにしても、まさかわたくしでも知っているような本当に有名なレギオンに入るなんて!
それに、このことをすでに知っているアルも、やっぱりただ者ではありませんわ!!
わたくしの予想通り――アルと親しくなることは、きっとわたくしたちの未来を照らすこと、間違いなしですわね!!
そうと分かれば、こっちのものでしてよ!
これからもアルには、わたくしたちとわたくしたちのサロン【ユグドラシルのお茶会】の魅力をた~~くさん伝えて……いつか必ず!
――アルも、お茶会に誘ってみせますわ!!!
※次回は、
・十七日目のつづきのお話
を投稿します。
引き続き、お楽しみください!




