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【PV・文字数 100万越え!】マイペースエルフのシードリアテイル遊楽記  作者: 明星ユウ
三章 はじめての公式イベントを楽しもう
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四百六話 小観光のち華の歓談

 



 大草原にて、例の魔物たちとの戦いを体験した後、つづく土の街道をさらに進むことしばし。


 ――ついに、今の最前線の街、ジオの街に到着!!


「ここが、ジオの街……!」

『わぁ~~!!!!』

「なかなか良いところだよ」

「パルの街と似てて、居心地いいのよね~!」


 昼の眩い陽光に照らされた、白亜の門をくぐった先は、アリーセさんがおっしゃった通り、パルの街のように色とりどりな屋根を飾る家々が連なっていた。


 構造上は、パルやトリアの街とそう変わらないとは思うけれど、それはそれとして新しい街への興味はある!


 ついつい踊る心のままに、お二人へと笑顔を向けて、確認を問う。


「アドルフさん、アリーセさん!

 少しだけ、観光をしてもかまいませんか?」

「あぁ、もちろん!」

「夕方になったら、あたしたちはまた戦いに行くけど、それまでは付き合うわ。

 一緒に楽しみましょ、ロストシードさん」

「はい、ありがとうございます!」

『わぁい!!!! あたらしいまち、みる~~!!!!』


 肩と頭の上で、元気に跳ねる小さな四色の精霊さんたちにも微笑みを返し、さっそくと眼前に伸びる広い石畳の大通りを歩いて行く。


 両端に各種ギルドの建物が並ぶギルド通りを抜け、白亜の神殿を右手に眺めながら進む中、アドルフさんとアリーセさんが、ジオの街の評判を語ってくださる。


「この街は、王都に一番近い街で、大草原と川の景観と、美味しい食事が有名らしいよ」

「そうそう。

 あのパルとかトリアの街にもある、大きな噴水広場の左側の通路に、美食の店が並んでるんだって」

「おや! それは美食のお店巡りが楽しみですね」

「ふ~ん? ロストシードさんは、花より団子なの?」

「いえいえ。美食だけではなく、景観もしっかりと楽しませていただきますよ!」


 思わず拳を握って宣言すると、とたんにお二人から笑い声が上がり、つられて私も笑みを零す。


 そうして進んだ先には、街の中央地点を示す、広い円形の噴水広場があった。


 広場の前方へさらにつづく大通りと、右側の通路から広がる住宅街は、もはや見慣れた街並みと言える。


 少し違う部分があるのは、さきほどの会話に出てきた、左側の通路だ。

 お話の通り、書館や職人通りがない代わりに、左側の通路には食事処が軒を連ねていて、その奥に貴族街が広がっている。


 ――ここで忘れてはいけないのは、大噴水の近くにある、ワープポルタの存在だ。

 いつでもこの街への転送を可能にするため、手早くジオの街の登録を終える。


 登録後、作業を見守ってくださっていたアドルフさんとアリーセさんを振り返ると、予想通りそろそろお時間とのことで、お二人とはこの場で解散することになった。


「今度はクラン部屋に招待するよ」

「その前にこっちに移ってると思うけどね……」

「あぁ、そう言えば……」

「ふふっ。ジオの街のクラン部屋も、素敵な場所が見つかると良いですね」

「あぁ!」

「そうね」


 そう言の葉を交わし、現在レギオン【タクティクス】のクラン部屋があるトリアの街へと、お二人が転送で戻る姿を見送ったのち。


 自然と零れた吐息に、小さく苦笑する。


 今までマイペースに遊んで来たからこそ、最前線を行く攻略系のお二人を前にして、さすがに少々緊張していたらしい。


 とは言え、お二人との時間そのものは、とても有意義で楽しいものだった。


「ぜひまた、いろいろとご教授いただきたいものですね」


 小さくつぶやき、次の機会に思いをはせる。

 きっとその際もまた、多くの学びがあることだろう。


 学びと言えば……と、一瞬だけ奥に伸びる大通りを見やり、しかし軽く首を横に振る。


 ジオの街周辺のフィールド自体にも、おおいに興味はあるのだけれども。


 この場所での冒険は、一時保留にして――緊張をほぐすためにも、サロン【ユグドラシルのお茶会】のみなさんとお話をして、たくさん癒しをいただこう!!


「みなさん。

 お次はパルの街に戻って、サロンのみなさんに、逢いに行きましょう」

『はぁ~~いっ!!!!』


 楽しげな精霊さんたちの声に微笑み、目の前のワープポルタを使って、またたく間にパルの街へと帰還!



 昼から夕方へと、眩く移り変わった時間の中、夕陽に照らされる大通りを進み、サロンのクラン部屋へ。


 足早に歩いてたどり着いた扉の前で、一呼吸置いてから扉を開くと――。


「おっ! ロストシードさん! お邪魔してるぞ~!」

「……アルさん?」


 なぜか、サロン【ユグドラシルのお茶会】のクラン部屋に、アルさんがいらっしゃる。


 あまりにも不思議な状況に、ぱちぱちと緑の瞳をまたたいていると、そろっているサロンのみなさんが現状の説明をしてくださった。


 ――いわく、商人ギルドのフィードさんへと商品を届け、トリアの街に帰るところだったアルさんをフローラお嬢様が見つけ、ロゼさんがヒマならばぜひにとクラン部屋へ招いた、とのこと。


 ……そう言えば、クラン部屋にはサロンの参加者だけではなく、招かれたプレイヤーも入ることができたことを思い出して、納得にうなずく。


 説明の間に、フローラお嬢様がいれてくれたお茶がいつもの席の前に置かれ、ようやく優雅に席へと腰かけて、お茶を楽しむ。


 アルさんがいらっしゃることには驚いたけれど、当初の予定はこうしてみなさんとお茶を楽しみながら歓談して、癒されることだったので何も問題はない。


 むしろアルさんは、楽しさを引き立たせる言動がお上手なかたなので、どちらかと言わずとも、大歓迎だ!


 ――と、油断していた結果。


「それで?

 あの超有名な攻略系レギオン!

【タクティクス】に参加した感想を教えてくれよ、ロストシードさん!」


 ……あやうく、美味しいお茶が口から噴き出るところでしたよ、アルさん。


 ロールプレイの都合上、ロストシードとしては、そのような失態をおかすわけにはいかないというのに……。


 心なしか、サロンのみなさんまで瞳を煌かせているような……気がするのは、気のせいではないようなので、しっかりお答えしよう。


 ゆっくりと、口の中の美味しいお茶をのどへ通してから、アルさんの質問に答える。


「いえ、なにせまだ本当に参加した直後なものですから……正直な感想としましては、あの【タクティクス】に参加したと言う実感も、あまりありませんねぇ」

「おぉ? それは意外だったな。

 俺は、ロストシードさんがついに攻略系になったと思うだけで、結構感慨深いんだが」


 私の返答に対して、言葉通り意外そうに眉を上げて返されたアルさんの言葉に、ついついこちらは眉が下がった。


「いえ、私自身は、攻略系ではないのですが……」


 戸惑いながらの訂正に、なぜかアルさんは視線を遠くへと飛ばしながらつぶやく。


「――もうややこしいから、攻略系ってことでもいいと思うぞ、ロストシードさんの場合は」

「いえいえ。

 精霊の先駆者としての参加という点は、その通りだと理解しておりますが。

 攻略系とは、とても」

「……マイペースに遊んでるだけ、だからかぁ」

「はい! マイペースに遊んでいるだけ、ですので」


 にっこり笑顔で告げると、どうしたことか、アルさんは目の前の机に突っ伏してしまった。


「麗しのロストシードは、こうでなくてはね」

「ですわね!!」

「だよなぁ~!!」

「ですね……!」

「あぁ」

「うんうんっ!」


 そう、ロゼさんからつづいたサロンのみなさんの肯定に、一人だけ事態の流れがつかめず、つい小首をかしげてしまう。


 ……アルさんは、いったいどうしてしまったのだろうか?

 そしてみなさんは、いったい何を肯定していらっしゃるのだろう??


 頭の中に増えていく疑問符は、その後につづいた歓談の中でも、残念ながら消えることはなかった。




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― 新着の感想 ―
予想外の攻略系のおふたりとの交流に、ロストシードさんも本当に内心緊張していたんですねぇ(´∀`*)お茶会のサロンが癒やしの場所となっている事が微笑ましかったです〜♡ マイペースに遊んでいるだけのロスト…
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