表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【PV・文字数 100万越え!】マイペースエルフのシードリアテイル遊楽記  作者: 明星ユウ
三章 はじめての公式イベントを楽しもう
400/440

三百九十九話 はじめましてのご所望は!?

 



 昼食を楽しみ、再び【シードリアテイル】へと、ログイン!



『おかえりしーどりあ~~!!!!!』

「ただいま戻りました、みなさん!」


 ぽよよっと胸元で跳ねる感触と共に、重なって響いた小さな精霊さんたちのあいさつへの返事をして、緑の瞳を開く。


 夜明けの時間を示す、薄青色の美しい光に照らされた石の宿部屋の中、小さな五色の姿が眼前で煌いていた。


 すでにみなさん、おそろいのようで。


 ふわりと微笑み、ベッドから身を起こして、立ち上がりいつもの準備をはじめようとして――ポンッと可愛らしく鳴った効果音に、動きを止める。


 この音はフレンドさんの誰かから、メッセージが届いた音だ。


 サッと灰色の石盤を開いて確認してみると、送り主はアトリエ【紡ぎ人】のお仲間の、アルさん。


 [ロストシードさん!

 急で悪いんだが、もしこの後ヒマなら、トリアの街の大噴水まで来てくれないか?

 ロストシードさんに、会いたいって言ってる人たちがいるんだ]


 そう書かれたメッセージの内容は、端的に言えばお呼び出し、だろう。

 それも、どうやら私に会うことを望むかたがいるとのこと。


 ――これは急ぎ、準備をすませて向かおう!


 素早く了承のメッセージを送り、精霊魔法とオリジナル魔法を展開するいつもの準備を終えたのち。

 さっそく駆け足で、賢人の宿から出て中央の噴水広場へと向かう。


 すぐにたどり着いた大きな噴水を中心とする広場を、ぐるりと見回して、まずはとアルさんの姿を探す。


 しかし、多くのプレイヤーたちにとって、昼食後の遊ぶ気力に満ちた時間である今は、ずいぶんと多くその姿が広場の中を行き交っていて、なかなか見慣れた姿を見つけることが出来ない。


 とは言え、あまりお待たせするわけにもいかないだろう。

 もう一度、じっくりと見て――。


「やぁ、こんにちは」


 ふと、横から優しげな男性の声がかけられた。


 少し驚きながらも、緑の瞳をそちらへと向けると、バサリと身体ほどもある大きく真っ白な翼が、一度大きく動かされる。


 両手を広げて歓迎するようなポーズをしながら、すぐ近くに立っていたのは、甘やかな美貌をもつ天人族の青年。


 襟足だけ肩にかかるように伸ばされている白金の髪は眩く、優しげな青の瞳はまっすぐにこちらを見つめている。

 少しだけ地面からういたその状態は、フェアリー族と同じで、デフォルトだったはず。


 身にまとう煌く装備から、攻略系のかただと言うことは分かる。

 ……もしかすると、浮遊大地で以前、お見かけしたことのあるかただろうか?


 いや、そんなことよりも。

 ――なぜ、この攻略系らしき天人族のかたは、私に声をかけたのだろう?


 内心戸惑いつつも、お声をかけられたからにはと、ひとまず微笑む。


「こんにちは」


 ご挨拶の言葉を紡ぎ、エルフ式の一礼を優雅におこなって、顔を上げる。

 すると、一瞬だけ驚いたように見開かれた青の瞳が、次いで眩しげに細められた。


「アンジェの僕より、後光が射しているように見えるね」

「……後光、ですか?」

「そうだよ。ちょっと優雅すぎてね」


 やわらかくさわやかな声音で告げられた言葉に、何のことだろうかと、ついつい小首をかしげてしまう。


 いや、優雅に見えるような所作を心がけておこなった一礼なのだから、そう言う意味では当然の感覚だとは思うのだけれど。


 とは言え、素朴な疑問の前に、そもそもどうしてお声がけいただいたのか、と言う大きな疑問がある。


 今私にとっての最優先事項は、アルさんを探すことなので、ひとまず素朴な疑問は横に置いておいて、大きな疑問を問いかけてみよう。


「ええっと、私に何かご用でしょうか?」


 端的な私の問いかけに、天人族の青年は嬉しげにうなずきを返す。


「君の友人から連絡があったから、ここへ来てくれたんだよね?」

「えぇ……おや?

 それでは、あなたが私に会うことを希望されていたかた、でしょうか?」


 アルさんから私に届いたメッセージの内容を、知っているような言葉。

 それに閃きたずねると、天人族の青年がぱぁっと表情を輝かせた。


「大正解! はじめまして、精霊の先駆者さん!

 僕の名前は、アドルフ。

 攻略系レギオン【タクティクス】の、リーダーだよ。

 今日は君に、お願いと提案をしに来たんだ!」


 嬉しげな声音で紡がれた、自己紹介の内容にも若干驚きつつ、こうなるとアルさん探しは一時中断か、と思考を巡らせながら、こちらも自己紹介を紡ぐ。


「はじめまして、アドルフさん。

 私は、ロストシードと申します。

 それで……お願いと提案、と言いますと?」

「まずは、お願いから。

 僕と――決闘をして欲しい」


 ――実に唐突な、爆弾発言である。


 くるりと感情が一周回って、むしろ冷静にお願いの言葉の真意を考えることができるのは……好いことだと言うことにしておこう。


 もっとも、攻略系のかたが決闘を申し込む理由が、そう複雑なものだとはあまり思えない。


 単なる力比べか、訓練、お遊び、あるいは……実力の見極め、か。


 いずれにせよ、アドルフさんにとっては、私と決闘――プレイヤー同士で模擬戦をおこなうことに、何かしらの意味があるのだろう。


 ただ、私はそもそも、あまり対人戦が得意ではない。

 いや……好みではない、という表現のほうがより正確だろうか。


 正直なところ、魔物たちと戦うことはともかくとして、他のプレイヤーであるシードリアのかたと戦うことは、出来る限り避けたいくらいなのだけれども。


「ダメ……かい?」


 何やら、眼前で子犬のように……失礼、どこかさみしげにそろりと眉根を下げて、そのように問いかけられてしまうと。


 ――さすがに、お断りすることのほうが心苦しくなる、と言うものだろう!!


 小さく一呼吸をする間に、覚悟を決める。


「……分かりました。

 決闘を、お受けいたします」

「好かった!!

 ありがとうロストシード!!」


 再び、ぱぁっと甘やかな美貌を輝かせたアドルフさんに、どこからか黄色い悲鳴が上がったが、それを気にするほどの余裕はすでにない。


 じわりとにじむ緊張は、プレイヤー対プレイヤーの対人戦と言う、珍しい状況からくるもの。


 それでも、胸の内から湧き出る好奇心や高揚が、無いと言えば嘘になる。


 淡く微笑み合う、私とアドルフさんのこの決闘は、果たして――いったい、どのような結果になるのだろう?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
400話到達!おめでとうございます⭐︎(´∀`*) おぉ〜美しいおふたりの出逢いの場面〜!これは自然と周囲の視線も集めてしまいますね♡ そしてまさかのワクワクな展開!続きが楽しみです♪
 祝 400エピソード⭐ 前話からソワソワしておりましたら「ご所望」に度肝を抜かれました! なんという予想外! ワクワクがとまりません!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ