三百九十八話 幕間四十二 不思議な魅力を持つエルフさん
※主人公とは別のプレイヤー視点です。
※のろけと軽い戦闘描写あり!
サービス開始前から、愛しのアリーと一緒に遊ぶ約束をしていた、最新の没入ゲーム【シードリアテイル】。
待ちに待った初日をついにむかえて、サービス開始時間の少し手前に、愛しのアリーと時間をあわせてゲームにログインをして……。
それから――ゲームがはじまった瞬間に、大失敗をしたことに気づいたことは、今でも苦い思い出だ。
まさか……種族別にはじまりの地があるなんて!
僕ははじめから、愛しのアリーと一緒に美しい幻想世界を楽しむつもりだったのに!
種族を選ぶ時、妖精族のエルフにしたアリーと、天人族のアンジェにした僕。
はじまりの地が、地上の森の中と天空の浮遊大地だなんて……天と地の高低差があるような場所に、最初から離ればなれになってしまうなんて、さすがに予想外だったよ。
それでも、僕たちはもともとゲーム内でも最先端を行くプレイヤー、通称攻略系プレイヤーとして、全力でこの【シードリアテイル】を楽しむつもりだったから、一日目の終わりには、パルの街でアリーと再会できた。
……あの時は本当に、心底安心したなぁ。
パルの街に着いてからは、ようやく愛しのアリーと一緒に遊べるからと思って、自重せずに狩りをつづけた結果、一気に最前線を前に進ませすぎたり、それでアリーに怒られたりもしたけど。
結局その後、サービス開始当初から最前線を進んでいた他の攻略系のみんなと手を取り合って、攻略重視のレギオンをつくることができたから――今となっては、好い思い出だよね!
そのレギオン自体、発足当初からかなり名が知れ渡っていたことは、もちろん愛しのアリーやメンバーみんなのおかげだ。
一応、僕がリーダーで、アリーがサブリーダーという形ではあるけれど、メンバーのみんなもそれぞれが、さまざまな分野のプロフェッショナルだったから。
攻略系とひとまとめに言っても、当然いろんなプレイヤーがいて、剣や弓や槍、それに魔法やスキルの研究をしているような人たちも、僕たちのレギオンには多い。
彼らや彼女たちがいてくれたから、研究をしていない僕や他のメンバーまで恩恵にあずかることができて、最前線で戦いつづける強者のまま、今も進むことができている。
本当に、ありがたいことだ。
――それとは別に。
新しい魔法を習得するたびに他の誰よりも先に僕を呼んで、一番に魔法を見せてくれるアリーの姿は、いつ見ても本当にとっても可愛らしくて、僕としてはそれだけでもう大満足だけれどね!
ただ、僕にとってはアリーが一番なのは大前提で、アリーが大切だからと言って、他のプレイヤーを気にしていないわけではなくて。
特に、以前から愛しのアリーが話題に出す、精霊の先駆者なとあるエルフさんのことは、僕もずっと気になっていたのだけれど……。
「もういっそのこと勧誘したい」
そう、はじまったばかりの【シードリアテイル】初のイベント、大規模戦闘の最中に愛しのアリーが呟いたのを聴いて、さらに興味が出てきた!
今日もまた、イベントがはじまってから恒例になっている、集団での戦闘を楽しむ中。
ラファール高山より先のフィールドにいる魔物たちの攻撃を、バサリと大きな白い翼を動かして避けて、剣と魔法で倒しながら、僕たち攻略系レギオンの集団よりも前方――浮遊大地の奥で戦う、一人のエルフの青年を見る。
魔物たちとの間で舞う、長いサラサラとした髪は、頭頂部から半ばにかけては金色で、そこから先は僕の髪と同じ白金色。
身にまとっている銀色のマントは、ラファール高山の山頂に登るために必要な、防風のマントかな?
すごく綺麗で……不思議と目を惹く姿をしているように見える。
いろいろなオリジナル魔法を使う戦いかたをしていて、精霊魔法や特効攻撃の浄化魔法も使っているみたいだ。
アリーが言っていたとおりだね!
それに――あの数の、僕たちでさえまだ戦ったことがない魔物たちさえいる場所で、一歩も下がらずに戦いつづけている。
あの強さも、アリーが言っていたとおり、僕たちと比べてもまったく劣らないものだと、すぐに分かった。
精霊の先駆者として、初期から有名だった彼の名前は……たしか、ロストシード。
最近では、僕たちのレギオンにいるフェアリーの、すごく強い魔法使いの友人まで絶賛している、シードリアの魔導師と呼ばれるエルフさん。
この大規模戦闘の舞台で、二種類ある特効攻撃の二つともを使いながら、攻略系よりも先に、奥で戦いをつづけているプレイヤー。
あぁ……これほどすごいプレイヤーだと、さすがに僕も気になって仕方がないよ!!
本当に、なんだか不思議な魅力を持つエルフさんだ!
それに、何より。
前にアリーが、勧誘したいって言っていた!
愛しのアリーが、僕たちのレギオンに必要だと思うなら。
――他でもない、リーダーであるこの僕が、彼に声をかけに行かないとね!
※次回は、
・十七日目のつづきのお話
を投稿します。
引き続き、お楽しみください!




