三百七十六話 幕間三十九 この話だけは訊く必要があるだろ!?
※主人公とは別のプレイヤー、アル視点です。
(幕間八、十二、二十二と同じプレイヤーさんです)
【シードリアテイル】で初の公式イベント――それも、大規模戦闘をメインテーマにしたイベントがはじまってから、今日で二日目。
昨日は、いたって順調にはじまった大規模戦闘を、なんとか攻略系集団の最後尾にくっつく形で戦うことができて、かなり有意義だった。
元々、いろいろ試しながら戦う予定ではあったんだが、手持ちのスキルや魔法、それに俺自身がつくったさまざまな種類のポーションを駆使して戦ってみると、これが意外と戦えるもので――。
事前に、シードリアの魔導師こと、精霊の先駆者なロストシードさんから、オリジナル魔法の習得方法について訊き出していたかいもあって、それこそオリジナル魔法を連発すれば、浮遊大地の中央近くまで進めた……のは、まぁ、良かったんだが。
予想通りと言うか、なんというか。
――前方で普通に攻略系にまざって戦うロストシードさんが見えた時には、思わず「だよなぁ」って呟きが口から出た。
……や、アレは言うのが礼儀のようなものだろ、もはや。
ロストシードさんが強いのは分かり切っていたことだから、そこはもういちいち驚くつもりもない。
ただ――他の友人がそのロストシードさんと共闘した、なんて話になってくると、さすがにそれは別だよな?
宿屋[賢人の宿]の、石造りの小部屋の中。
作業机の椅子に腰かけて、その友人に向けてメッセージを打つ。
送り先を間違ってないか見やり、[シルラス]と、そう間違いなく刻まれていることを確認して、送信っと!
[で、だ。ロストシードさんと、共闘したって!?!?]
以前の他愛ない雑談のつづきに、いきなり送ってみたが、たぶんシルラスなら問題ないだろう。
俺たち二人ともが、エルフの世迷言板の常連だったということ自体は、シルラスのほうが先に気づいて、メッセージを送ってきたくらいだしな。
まさか、あの個性的なサロン【ユグドラシルのお茶会】に、参加したばかりだったシルラスが、常連の弓使いの人だったとはなぁ……。
現実世界でも言うらしいが、ホント、世間は狭いってやつだ。
そしてそのシルラスが、昨日の深夜にエルフの世迷言板で、あのロストシードさんと大規模戦闘で共闘をした、と言っていたものだから、もう気になって気になって……!
あやうく寝不足になるところだった。
いやまぁ、お互いが世迷言板の常連だって分かって以来、けっこう仲良くメッセージのやり取りをしていたから、今回は本当にすっかり話すのを忘れていたってだけだろうけどな~。
――それはそれとして、気にはなるわけで。
[その話だろうとは、思っていた]
そう返って来たメッセージに、すぐさま返事を送る。
[教えてくれよ~~っ! そーいう大事なことは~~っ!!]
[すまない。本当に失念していた]
[いいけどさぁ……! それで!?]
昨夜のエルフの世迷言板でも、ざっくりとした情報は出ていたが、ここではもっと根掘り葉掘り訊かせてもらうからな!
そう意気込んで、本当に訊き出してみると、まぁ、何というか……。
[――よし。つまり要約すると。
・特効攻撃の浄化魔法を使って、周囲の魔物たちを殲滅してた。
・シルラスがあいさつがわりに放った矢に気づいて、オリジナル魔法でロストシードさんがいる場所まで行けるような道をつくってくれた。
・範囲型のオリジナル魔法だけでも、十分殲滅できてた。
・むしろシルラスの矢に合わせて、十本以上の雷の矢を飛ばすオリジナル魔法を選ぶ余裕さえあるように見えた。
って、感じか]
[あぁ。そのような感じだった]
「マジかよ」
うっかり返信する前に、愕然とした声が零れた。
やっぱりロストシードさん、もう攻略系のトッププレイヤーたちと、同じくらいの強さがあるのでは??
『しーどりあ、びっくり???』
「お、おぉ、びっくりだ」
『びっくり!!!』
三体の下級精霊たちが、俺が驚いているのかどうかを問いかけるくらい、驚いている自覚は、ある。
少しだけ悩んでから、返信を送った。
[……ロストシードさんって、本当にめちゃくちゃ強いな?? や、シルラスも強いんだが]
[私も、弓の腕前が上達した自信はあるが、それでも強さは彼のほうがはるかに上を行っているだろう]
[そうか……シルラス自身がそう思うなら、そうなんだろうなぁ]
気になってはいたし、半分くらい面白事情聴取みたいな気分で訊いたが――相変わらず、とんでもない情報が連なって出てくるものだ。
[ホント、例の人はなんで攻略系ではないんだろうな? まぁ、先駆者ではあるんだが]
どうしても気になって、そうシルラスに謎を訊いてみる。
答えは、すぐに返ったきた。
[その先駆者の部分が、明らかになっていないものが多いだけで、実は多数の分野でそう呼ばれるにふさわしい功績があるのではないかと、私は思う]
――おっしゃる通りで!!
それは俺もずっと、例の人に対して予想してきたことだからな!!
やっぱりシルラスも、そこには気づくよなぁ……!
[だよなぁ!? やっぱり精霊関連以外にも、先駆者になってそうだよな!?]
[あぁ。おそらくは]
[たとえば、何の先駆者だと思うんだ? 俺はそれこそ、浄化魔法の先駆者だったりするかもって思っているんだが]
[私は、まずは高速移動の先駆者だと思う]
[あ~っ!! そう言えば、パルの街初日で、危険な左の森を高速移動して行った、みたいな話があったな!]
[あぁ、それだ]
[なるほどなぁ。あり得そうだ! 他には?]
[そうだな――]
なんかいつの間にか、昨日の共闘の件の面白事情聴取から、ロストシードさんの功績考察みたいになっているが……まぁ、似たようなものか。
この話題には、きっとシルラスも興味があるはずだ。
――お互い、大規模戦闘の合間に、ちょいと楽しむのも一興だろ!
※次回は、
・十六日目のつづきのお話
を投稿します。
引き続き、お楽しみください!




