三百七十一話 奥地への前進
※戦闘描写あり!
ゆっくりと数えた小瓶を、再びカバンへとしまい終えた頃。
パァ――と美しく、深夜から夜明けへと時間が移り変わり、眼前にぱっと小さな光の精霊さんが姿を現した。
『きたよ! しーどりあ!』
「いらっしゃいませ、小さな光の精霊さん」
『いらっしゃ~い!!!!』
お迎えのあいさつののち、白く光る小さな身が頭の上の定位置に乗るのを待ってから、そっと立ち上がり、口角を上げる。
「それでは――二回目の参戦とまいりましょう!」
『いっぱいたたかう!!!!!』
充分な気合いと共に、小さな五色の精霊さんたちと言葉を交し合い、また神殿の宿部屋から浮遊大地へと転送し、二回目の参戦へ!
転送直後に〈プルス〉の白光を放ち、〈フィ・ロンド〉で精霊さんたちと共闘する状態を整えたのち。
〈オリジナル:昇華一:風まとう水渦の裂断〉や〈オリジナル:昇華一:風まとう氷柱の刺突〉を天空へと放ち、空で舞う魔物たちを削りつつ、〈オリジナル:残痕刻む雷花水の渦〉で周囲の魔物たちを倒していく。
追撃に石の杭と雷の矢を放ちながら、改めて魔物たちとの戦闘を観察した結果、やはり地上のラファール高山で戦った魔物たちよりも、この場にいる同じ種類の魔物たちは、簡単に倒すことができていると気づいた。
間違いなく、これは創世の女神様の守護のおかげだろう。
しかし――であるならば。
このことをふまえて……さらに奥にいる魔物たちとの戦いも、そろそろ試してみたくなってきた!
空白地帯のすきまから、前方へ静かに投げた視線の先。
赤が混ざる穢れた黒霧につつまれ、その姿の全貌を見ることができない、いまだ戦ったことのない魔物たちが埋めつくす奥の地を見やり、フッと不敵な笑みをうかべる。
創世の女神様の守護により、あれらの攻撃が無効化され、安全が確保されるこのイベント期間中の今こそ。
――挑戦あるのみ、だ!!
「小さな精霊のみなさん。今回は少々、あの奥の魔物たちと、戦ってみましょう!」
『まかせて!!!!! しーどりあ!!!!!』
重なり響いた、五つの確固たる思いを宿した声音の、なんと頼もしいことか。
刹那、タッと軽やかに地を蹴り、前方で群れるラファール高山にいた魔物たちの間をぬって、奥へと駆け出す。
見慣れた魔物たちが埋めつくす場所を抜け切ると、そこには穢れに染まり姿の詳細な判別ができない、未知なる魔物たちがうごめいていた。
いかなる戦場においても、すでに倒すと決めている敵に対してならば、遠慮など必要ないだろう。
ここは一つ――先手必勝、容赦ない特効攻撃で、ご挨拶だ!
すぅっと息を吸い込み、魔法名を宣言する!
「〈スターリア〉!」
凛、と紡いだその名に応じて、頭上から鮮やかに蒼と銀の光の尾を引く漆黒の星が、一条眼前へと降り落ち――またたく間に、かろうじて狼姿だと分かる穢れの魔物をつむじ風へと変えて、かき消した。
予想通り、周囲にいた同じ姿の魔物たちも、道連れにして。
正直なところ、ここまではもはや、予定調和だ。
なにせ特効攻撃の威力は絶大で、そうなるように、きっと創世の女神様が手を加えてくださっているのだから。
問題は……他の魔法が通用するか、否か。
『しーどりあ!!!!!』
「っ!」
頭上で円を描く、小さな五色の精霊さんたちの声に、反射的に身体魔法〈瞬間加速 二〉を使って、真横に飛ぶ。
流れるような視界の中、ついさきほどまで私がいた場所の地面から生えてきた、土の杭が見えた。
――おそらくはこれが、さきほど倒した狼の輪郭をもつ新しい魔物たちの、魔法攻撃!
ザッと地面の土を擦りながらも、空中に投げていた身体を上品に着地させ、お返しにとすぐさま〈オリジナル:吹雪き舞う毒凍結の花細氷〉を発動する!
ぶわりと周囲に吹雪いた、細氷と毒のある花弁や葉が、細々と射し込む薄青色の夜明けの光と共に美しく煌き、周囲の魔物たちを見事、凍結と毒状態にした!
「ひとまず、オリジナル魔法でも戦えるようで……!」
緊張を感じながらも戦意を秘めて呟くと、姿を隠した精霊さんたちも、それぞれの精霊魔法を氷漬けとなった魔物たちへと放つ。
一つの精霊魔法では倒し切ることができないものの、重ねて複数の精霊魔法を受けた魔物は、その姿をつむじ風に変えた。
どうやら、精霊魔法も問題なく通じるようで、思わず安堵の吐息を零す。
私が追撃を放つ必要もなく、精霊魔法によって次々とかき消えて行く魔物たちを見る限り、ひとまずラファール高山の先にいるもっとも近場の魔物たちとの戦闘は、それほど心配する必要はないだろう。
しっかりと魔法攻撃を避けることさえできれば、今まで戦った魔物たちとの差は、さほどないとさえ感じる。
と言うことは、だ。
戦う際に問題が生じる可能性のある相手は、さらに先……もっと奥にいる魔物たち、と言うことではないだろうか?
「――ここで立ち止まっていては、既知の先を知ることはできませんよね」
静かに、深い声音で呟き、覚悟を決める。
さらなる奥地にいる魔物たちは、果たしてどれほど強敵なのか。
それさえ分からないままに、しかし戦う意志はすでに、この胸に灯った。
ならば、行こう。
既知の先を――知るために!!




