三百六十六話 浄化魔法もレアだった
昼へと移り変わった時間を示す、細くも眩い陽光を時折浴びながら、しっかりと一時間戦闘をおこなったのち。
再び蒼光によって――賢人の宿の宿部屋へ帰還!
荒れた地面とは異なる頑丈な石の床の感覚に、閉じていた緑の瞳を開き、〈フィ・ロンド〉を解除して、ふぅと吐息を零す。
サッと開いた公式イベント専用のページでは、一本目の評価ゲージのほとんどが淡い金色に染まっており、もう少しで右端まで届くというところで止まっていた。
「この染まり具合では、また浮遊大地での戦闘に参加する前に少し別の用事をするだけで、一本目のゲージがすべて染まってしまうかもしれませんねぇ」
『うんっ!!!!』
……のほほんと、あり得ないと思いながら冗談で紡いだ言葉だったのだが。
小さな四色の精霊さんたちが、元気な肯定を響かせると言うことは、すなわち。
――本当に、おそらくポーションなどの製作分の評価だけで、本日分とおぼしき評価ゲージが染まり切ってしまうと言うことなのだろう。
創世の女神様のご期待に応えるためにも、たくさん戦闘での貢献をしたいところだが……まぁ、根を詰めても仕方がない。
ここは大人しく、まずは休憩を楽しむとしよう。
脳内で予定を整理し、イベント専用のページを消した後、次いで語り板のページを開く。
「少し、浄化魔法について調べてみますね」
『はぁ~~い!!!!』
四色の精霊さんたちにお伝えしつつ、開いたページの中から、さきほどの戦闘中に気になったことの答えがないか、探してみる。
攻略系のかたの中にも、習得しているかたがいらっしゃることを、この目で確認した浄化魔法。
この魔法もまた、星魔法のように実は、それなりに珍しい魔法なのか。
それとも、エルフの里の神官ロランレフさんからうかがった通り、〈プルス〉が珍しいがゆえに、右隣で戦っていた攻略系集団のお一人である、エルフの少女の視線が注がれていたのか。
どうにもその点を不思議に感じたまま、一時間の戦闘を終えて戻ってきたため、ぜひとも疑問の答えを見つけたいところだ。
[公式イベント関連 特効攻撃について]
[大規模戦闘での特効攻撃について]
[浄化魔法の習得方法を教えてください]
並んでいるタイトルの内、疑問の答えが書かれている可能性があるものを選んで、読み込んでいく。
そうして、語り板だけでなく、世迷言板にまで目を通した結果。
「やはり……星魔法ほどではないようですが、それでも浄化魔法自体、現時点では習得難易度の高い魔法だったようですね」
『しんかんが、いっぱいつかうだけ~!』
『おぼえるこ、すくないね~!』
『みんなしってるけど、おぼえてないまほう~!』
『しんかんのみんなの、まほう!』
「えぇ。そのようです」
小さな四色の精霊さんたちの言葉にうなずき、肯定を返す。
どうやらこの浄化魔法と呼ばれる種類の光魔法は、やはり光魔法の中でも特殊な分類のものであるらしく。
いわゆる、神官のロールプレイをして遊んでいるわけでもない限り、なかなか習得できるものではない魔法のようだった。
その点……よくよく振り返ってみると、定期的にお祈りをするために神殿へとおもむいている私は、結果的には神官のロールプレイをしていた、と言うことになるのだろう。
――現に、神官として神々から認めていただいているのだから。
「なるほど。そうなりますと、根本的に浄化魔法を習得できているかたが少ないのですね。それで目をひいてしまっていた、と」
さきの戦闘中、右隣から注がれる視線の意味は、これで答えが出た。
……案の定、その原因は、物珍しさ。
それによって視線を集めていたのだと気づいたことで、気恥ずかしさがじわりと湧き出た。
「……やはり、目立つのはあまり得意ではありませんねぇ」
『しーどりあ、よしよし~~!!!!』
「ありがとうございます、みなさん」
少しほてる頬の熱を感じて、気をまぎらわすために呟くと、四色の精霊さんたちが頭と肩をよしよしと撫でてくださる。
その優しさに感謝して、しばらく癒しにひたったのち。
気を取り直して、笑顔で紡ぐ。
「それでは! お次はここで魔力ポーションをつくりましょう!」
『わぁ~~い!!!! ぽーしょんつくるの、みる~~!!!!』
嬉しげにぱっと眼前へと躍り出て、くるくると舞う精霊さんたちに微笑みながら、一緒に移動して作業机へと着き、カバンから材料を取り出していく。
この宿部屋は、作業部屋でもあるため、錬金術師にとっては便利な宿なのだと、錬金術師のお爺様がおっしゃっていた言葉を思い出して笑みを深め、さっそくと魔力回復ポーションをつくりはじめる。
スキル《同調魔力操作》を使い、手元にうかせた素材を、融解・拡散・精錬と手順を踏んで、青色のポーションへと変えていく。
もはや手慣れた高速錬金を楽しみながら、つくりつづけることしばし。
唐突に開いた灰色の石盤に書かれた文字を視線でなぞり、なるほどとうなずく。
[本日のあなたの助力に、感謝を。
これより先は明日にそなえ、心穏やかに休息の時をすごしてください]
そう、おそらくは創世の女神様から授けられたお言葉の意味を、プレイヤーとして解釈するのならば。
――本日獲得できる評価の上限に到達しました、と言ったところか。
どうやら本当に、評価ゲージ一本分が、本日の評価上限を示すものだったようだ。
念のためにと当の評価ゲージのページを開いて確認すると、やはり五本連なるゲージの一番上、本日分の評価ゲージの端から端までが淡い金色に染まっている。
つまるところ、これにて初日の貢献は、無事終了した、と言うことだ。
……あくまで、表面上は、だが。
ポーション製作をつづけながら、静かに浮遊大地へと思いをはせる。
今回の公式イベントは、厄災を防ぐための第一段階のようなもの。
かの上空で、今もなお繰り広げられている大規模戦闘は、明日も明後日もつづいていく。
評価ゲージとしては区切りがあったとしても、大規模戦闘に果たして終わりがあるのか……。
とにもかくにも、創世の女神様の願いに応えるため、明日以降もしっかり大規模戦闘に参戦して、より多くの魔物たちを倒してみせよう!
――せっかく、特効攻撃である二種類の魔法を、二種類とも手にしているのだから。




