三百五十一話 見えざる共闘と密やかに煌く星魔法
※戦闘描写あり!
久しぶりに冒険者ギルドでの依頼を楽しみ、魔物の情報収集もした後は――昨夜に引きつづき、ラファール高山でレベル上げをしよう!
冒険者ギルドから大通りへと出ながら、小さな四色の精霊さんたちへと小声でこの後の予定を紡ぐ。
「みなさん。お次はレベルを上げに、またラファール高山へとまいりましょう」
『はぁ~~い!!!!』
小さな精霊さんたちが、肩と頭の上で楽しげにぽよっぽよっと跳ねる様子に微笑み、まずはトリアの街へ向かうためにワープポルタがある、最初の噴水広場へと向かって歩き出す。
現在の私のレベルは、昨夜のレベル上げにより、四十九になっている。
毎回、九から次の数字へと至るためには、それ以前よりも多くの魔物を倒す必要があることを考えると、今回もレベル五十に至るためには、少々時間がかかるだろう。
ふっと微笑みを深め、思うことは一つ。
じっくりコツコツと戦闘を楽しむこともまた――レベル上げの醍醐味だ!
『れべるあげ、わくわく!!!!』
「えぇ。今回はみなさんもご一緒に、戦いましょうね」
『うんっ!!!!』
昨夜の閃きにより、すでに精霊のみなさんと共闘するための手段は、思いついている。
今回は文字通り一緒にレベル上げを楽しむことができると、どうやら小さな精霊さんたちも分かっているようだ。
お互いが高揚感を胸に、ワープポルタへと手をかざし、蒼光に導かれてトリアの街の中央広場へ転送!
切り替わった景色を横目に、迷いなく石門へと足を進め、草原と森を素早く優雅に駆け抜けて、ラファール高山の麓にいるラファールウルフたちも振り切り、高山の砂利道をのぼりはじめる。
ちょうど、夕方から宵の口へと時間が移り変わり、少しだけ残念さをにじませた小さな光の精霊さんをお見送りして、わくわくの雰囲気を放つ小さな闇の精霊さんをお迎えしたのち。
遠くでスキル《存在感知》による、魔物の反応を感知したところで、《隠蔽 四》を意識しつつ、小声で精霊のみなさんに共闘を願う。
「それでは、みなさん。かくれんぼをおこないながらの共闘を、よろしくお願いいたします。――〈フィ・ロンド〉」
『まかせて~~!!!!』
まだ明るい夜のはじまりの青に染まる周囲に、それぞれの色を輝かせてリング状に並ぶ姿を見せるのは、私の頭上で円になった、小さな四色の精霊さんたちのみ。
それでも、普段からかくれんぼをしてくださっている、小さな多色と水の精霊さんたちと同じく、周囲にたくさんの小さな精霊さんたちが現れてくださったことは、不思議と分かった。
見えざる共闘の状態が、しっかりと整ったところで――いざ、戦闘開始!
前方の曲がった道を駆けのぼり、銀色の立派な角が見えたところで、かくれんぼの状態を保ったまま、土と風の精霊さんたちが鋭い石を風圧で射出する。
鮮やかな先制攻撃は見事に銀色の牡鹿の魔物、ラファールディアーへと打撃を与え、数歩後退させた!
さすがは精霊さんたちだ、とつい自然と口角が上がるが……これは、精霊さんたちと私の共闘。
私も、のんびりしているわけには、いかないというもの!
すぐさま隠して一段階目で止めていた〈オリジナル:風をまとう石杭の刺突〉を二段階目に移行して、石杭の攻撃を放つ。
またたく間に他の精霊さんたちの攻撃まで加わり、ラファールディアーは反撃の突進さえできないまま、かろうじて砂利を蹴り飛ばして跳ね、回避を試みている。
……とは言え、残念ながらこちらも、逃がすつもりはない。
刹那ののち、〈オリジナル:暗中へいざなう白光紫電を宿す闇霧〉を発動し、銀色の体躯を濃い闇の霧が一瞬にして包み込むと、その内側で眩い小さな白い閃光と紫の雷光が煌き奔り、目くらましや麻痺効果と共に、痛手となる攻撃を与える。
結果、さらなる精霊さんたちからの追撃が入る前に、ラファールディアーは銀色のつむじ風となってかき消えた。
「さすがは精霊のみなさん! 素晴らしい攻撃でした!」
『えっへん!!!!』
思わず弾んだ声音で紡いだ私の称賛の言葉に、頭上で円になっている小さな四色の精霊さんたちが、代表して得意気な声を響かせる。
それに微笑みながら、この調子で精霊さんたちには精霊魔法を、私はいろいろなオリジナル魔法を使って戦闘を進めていこうと考え――はたと、閃きに笑む。
「そうです! せっかくの夜のお時間なのですから……こっそり、星魔法も使いながら、戦いましょう!」
『おぉ~~!!!!』
イタズラ心に似た閃きを紡ぎ、楽しげな声を上げる四色の精霊さんたちへ、不敵な笑みをフッとうべなおしてお見せする。
とたんにきゃっきゃと楽しげな笑い声が響き、どうやらご満足いただけたようだとさらに笑みを深めた。
方針が決まったのならば、後は実践あるのみ!
砂利道に落ちていた素材を回収し、次のラファールディアーを探して道を進んで行く。
すぐに見つけた二頭目の銀色の牡鹿は、素早く赫い炯眼をこちらへと向けた刹那――問答無用だと告げるかのように、いきなり突進をしてきた!
「おっと!」
容赦のない突進を、昨夜昇格したばかりの身体魔法〈瞬間加速 二〉を発動し、身体速度を二段階引き上げて加速することで、余裕をもって回避する。
まさしくまたたく間に右斜め前方へと移動した、自らの移動速度にまだ少しばかり驚きつつも、突進のお返しに放たれる精霊さんたちの攻撃に微笑み、サッと周囲を見回して他のシードリアのかたがいないことを確認したのち。
小さくも凛と、かの魔法名を宣言した。
「〈スターリア〉」
瞬間、頭上から素早く、銀と蒼の光の尾を引き鮮やかに流れ落ちた漆黒の星が、ラファールディアーの身体をつらぬく。
あっという間につむじ風へと姿を変えた牡鹿の魔物を見つめ、本当に星魔法は必殺の一撃だと、しみじみと感じ入りながら。
――大規模戦闘での、この美しくも脅威的な魔法の活躍が、今から楽しみで仕方がないと、つい心が弾んだ!




