三百四十二話 高山の麓でレベル上げ、その三 ~美しき脅威~
※戦闘描写あり!
戻ってきた現実世界で夕食を楽しみ、小休憩ののち、再び【シードリアテイル】へログイン!
『おかえりしーどりあ~~!!!!』
「はい! ただいま戻りました、みなさん!」
横たわったベッドの上で瞳を開き、胸元でぽよっぽよっと跳ねる小さな四色の精霊さんたちにあいさつをして、身を起こす。
どこか涼しさを感じる石造りの宿部屋の中、見やった窓の外は夜の色にそまっていた。
まだ紺色混じりの星空に微笑み、引きつづき明日の公式イベントに向けての準備を再開しようと、魔法を紡ぐ。
小さな多色と水の精霊さんたちに〈ラ・フィ・フリュー〉と〈アルフィ・アルス〉を持続展開していただき、スキル《隠蔽 四》にてかくれんぼもお願いする。
加えて、〈オリジナル:見えざる癒しと転ずる守護の水風〉と〈オリジナル:風をまとう石杭の刺突〉の二つのオリジナル魔法を発動し、石杭のほうも隠蔽をして――準備完了!
「それでは! 神殿にてお祈りをおこなったのち――また、ラファール高山の麓で、レベル上げをいたしましょう!」
『はぁ~~いっ!!!!』
小さな水と風と土と闇の精霊さんたちの、元気な返事に微笑みを返して、さっそく宿を後にする。
職人通りを通り抜け、中央の噴水広場から大通りへと足を進め、夜の暗さに映える白亜の神殿の中に入ると、神々へと丁寧に《祈り》を捧げて、大切な日課もこれにて完了!
口元の微笑みを深め、再び大通りへと出た後は、石門を目指して靴音を鳴らす。
トリアの草原と森の中を素早く移動して、そうそうにラファール高山の麓へとたどり着くと、枝の上で改めて気合いを入れ直した。
「さぁ――レベル上げの再開です!」
『ぼくたちも、しーどりあといっしょにたたかう~~!!!!』
「えぇ! みなさんもご協力、よろしくお願いいたします! それでは――〈フィ・ロンド〉!」
小さな精霊さんたちの思いに応え、精霊のみなさんが自由に精霊魔法を使って参戦することの出来る、習得したばかりの精霊魔法を高らかに詠唱!
とたんに次々と現れた、多くの小さな水や風、土や闇の精霊さんたちの姿を緑の瞳に映し、思わずフッとうかんだ不敵な笑みを、さらに深める。
小さな精霊さんたちのご協力があれば、まさに百人力と言うもの!
私もみなさんもお互いに安心して――敵を完膚なきまでに、遠慮なく倒すことが出来る!!
私の頭上で円状に並ぶ、小さな四色の精霊さんたちを見やり、スキル《存在感知》に反応した魔物の来訪をお伝えするべく、口を開く。
「みなさん、以前戦った銀狼の魔物さんが、ご挨拶に来てくださったようです。私たちも、ご挨拶をお返しいたしましょう」
『あいさつ、する~~!!!! まもの、たおす~~!!!!』
「ふふっ! えぇ! ――鮮烈なご挨拶を、させていただきましょう!」
それぞれの色の光を強めるみなさんに、私も不敵な笑みを深めて応え、刹那茂みから飛び出してきた三匹の銀色の狼姿の魔物へと、枝の上と空中からあいさつ代わりのオリジナル魔法と精霊魔法を叩き込む!
〈オリジナル:麻痺放つ迅速の並行雷矢〉の発動と刹那の二段階目への移行にともない、計十八本の雷の矢が三匹の魔物へと突き刺さり、バチッ! と雷魔法特有の音を立てる。
同時に銀色の体躯を襲った、空中のあちらこちらでリング状になった小さな精霊さんたちによる精霊魔法の攻撃をも加え、オーバーキルとなった初撃に耐えかねた銀狼たちは、あっという間につむじ風となってかき消えた。
あぁ――やはり、精霊さんたちとの共闘は素晴らしい!
威力も申し分なく、何より精霊のみなさんが私と一緒に戦ってくださるという、この状況がそもそも心躍る展開だ!
「これもまた、エルフ生まれのシードリアとしての、醍醐味ですかねぇ」
小さく零した、心底楽しげな声音での言葉に、思わず内心で自らうなずきを返しつつ、新たに現れた銀狼たちへと油断なく視線を注ぐ。
瞬間、吠え声と共に放たれた風圧の攻撃を、身体魔法〈瞬間加速 一〉を発動して素早く加速する動きで避け、お返しにと放たれる精霊さんたちの攻撃の合間に、〈オリジナル:隠されし刃と転ずる攻勢の三つ渦〉を発動。
風の刃と細い水の針と土の杭の攻撃をすぐさま開始し、それぞれ九本の攻撃が銀狼たちを襲う。
さらに二段階目へと移行し、風と水と土の渦へと変化した魔法の攻撃に、足止めの効果が役立つヒマもないほど早く、魔物たちはかき消えた。
順調に進む戦闘に、頭上で円状になって並びうかぶ小さな四色の精霊さんたちへと、笑顔を向ける。
「とても好調な出だしとなりましたね! この調子で倒していきましょう!」
『はぁ~~い!!!! いっぱいたたかう~~!!!!』
美しくその身の光をまたたかせ、周囲でうかぶ他の精霊さんたちと共に意気込む小さな四色の精霊さんたちは、本当に頼もしい限りだ!
この可愛らしく綺麗なみなさんから、容赦のない攻撃系の精霊魔法を放たれ、そこに私の攻撃魔法まで加わる光景は、果たして……。
そこまで思考を巡らせ、つと口角が上がることを止めることができないまま、鮮やかに笑む。
面と向かって戦う魔物たちや、周囲で戦う他のシードリアのかたがたから見た、私たちの姿。
それはいったい――どれほど美しく、そしてどれほど脅威を感じるものなのだろうか?
そう、なかなかに戦いの場ならではの思考がよぎった後。
また現れた銀狼の魔物たちを見下ろし、一呼吸で冷静さを戻して、戦いを再開した。
ほんの少しの高揚感とロマンを、胸の内に残して――。




