三百四十一話 幕間三十五 儚げ美人な最強魔法使い!
※主人公とは別のプレイヤー、ウルこと、ウルヴル視点です。
【シードリアテイル】の存在を知ったのは、この最新の没入ゲームがサービスを開始して、三日目の朝だった。
急いでアイツに連絡して、一緒にざっと情報を調べてから、さっそく自身のキャラをつくって、遊びはじめた……までは、良かったんだけど。
種族によって最初のチュートリアルの場所が違うって情報があったから、種族を同じ人間族にしたのに、人間族の場合はまさかの人種によって最初の村の場所が違って、驚いた。
現実世界でも友達なアイツ――アネモスと、最初から一緒に遊ぶ予定だったのに。
ただ、すっかり予定が狂ってしまったわりには、別々の村からお互いに情報を交換しながら遊ぶのは、それはそれで結構楽しかったけどな!
スキルや魔法について学んだり、最初からめちゃくちゃ多い手持ちの金で装備を整えたり……魔物と戦ったり。
さまざまなことに挑戦する中で、特に面白いと感じたのは、自身の動きかた一つで、いろいろなスキルが習得できるところ!
ウワサによると、人間族は特に細かいスキルを習得できるらしくて、それを使って動きやすく、戦いやすい状態に整えて行けるらしい。
人間族の中でも、オレが選んだサブルム人は、獣人族ほどではないものの、ネコ科動物みたいな軽くてしなやかな動きができるから、動きに合わせたスキルを習得するのが、もう楽しくて楽しくて……!!
最初はうっかり夢中になってスキル習得ばかりしてて、あやうくレベル上げを忘れるところだったんだよな。
アネモスのレベルをきいて、焦って魔物に突っ込んでいった後、最初の神殿送りになったのは……ま、今となってはイイ思い出ってやつだけど。
そうやって最初の村でレベルを上げて、パルの街でアネモスと合流してからは、また新鮮なことつづきだった!!
これぞ街~~!! って言いたくなるようなにぎやかさと、重要な施設、売り物の多さに、すっかりはじめて現実世界の最先端都市を見学した時と同じ、目新しい物ぜんぶに目がいく子供みたいになったのは――ご愛嬌、だよな?
その後も、新しい魔物と戦ってみたり、屋台でうまい料理を食べてみたり、書館でスキルとか魔法とかの勉強をしてみたり。
アネモスといろんなことに挑戦して、時には失敗して、苦虫をかみつぶしたり大笑いしたりしながら、そろそろ次の最前線の街、トリアの街に行ってみることになった。
……ま、予想通りと言えば予想通り、トリアの街に行くまでも、結構たいへんだったんだけど。
いざ、トリアの草原で戦闘をしてみた結果、さすがに二人だと倒すまでに時間がかかりすぎる、と言う結論が出た。
結果、即席パーティーを組んでくれる人がいないか、語り板で募集して、妖精族のコロポックルの子、テトが参加してくれることになって一安心!
――したのもつかの間。
テトの魔法のおかげですごく戦いやすくなったのは、本当にありがたかったんだけど、それでも魔物の攻撃力のほうが高くて、手持ちの生命力回復ポーションがなくなりかけた段階で、正直つんだかと思った。
オレたちが戦いをつづけるから、ポーションを買ってきてくれってテトに頼んで、なんとかアネモスと二人で魔物の攻撃を避けながら戦ってたけど、それももう限界……!
そんな時、現れてくれた我らが救世主は、一見して穏やかで儚げな美人の、エルフの男性だった!!
めちゃくちゃな量の生命力が回復する、回復魔法をかけて助けてくれた見ず知らずの彼の素性を知ったのは、突発的に彼にパーティー参加をお願いして戦った、その後のこと。
テトが教えてくれた情報に、アネモスと二人でひっくり返りそうになったのは、あまりにもロストシードがすごすぎる存在だったから、だ!
まさか、あの[【シードリアテイル】の有名な攻略系プレイヤーと先駆者リスト]に姿と特徴だけが書かれてる、例のあの人だとか呼ばれていた存在だとは……さすがに予想外すぎるだろ!?
妖精族以外のプレイヤーにまで有名な、あの精霊の先駆者で、最近はシードリアの魔導師って言うなんかすごい二つ名までついた超有名人に……オレたちはパーティーを組んで、戦ってもらったってことになるんだが!?!?
いやたしかに、その片鱗くらいは最初にオレとアネモスを助けてくれた回復魔法の時点で、感じてはいた。
テトの魔法……特にオリジナル魔法は、魔力量の問題であまりオリジナル魔法が連発できない人間族であるオレたちにとって、充分すごいと思えるものだったから、ロストシードの場合はその回復魔法だけでも、すごいって思っていた、のに。
その後に見せてもらった、攻撃系のオリジナル魔法は――もう、すごいとかいうレベルでは、なかった。
攻略系ではないって言葉は、いまだにちょっと疑っている。
それくらい、強すぎたんだよな。
今日も、テトがうまく話を繋いでくれた結果、ロストシードとパーティーを組んで一緒にトリアの森でレベル上げをすることになったわけだけど。
改めて、本当にとんでもない人とフレンドになったものだと、そうひしひしと感じる。
グラデーションのかかった、長い金髪はきれいで神秘的だし、ほんわかと優しく笑う姿は、完全に穏やかで儚げな美人さんだ。
――それが、凄みのある笑顔で魔物をバッタバッタと倒していくのは、さすがにコワ……御見それしましたって、今日も思った!
※明日は、
・十四日目のつづきのお話
を投稿します。
引き続き、お楽しみください!




