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【PV・文字数 100万越え!】マイペースエルフのシードリアテイル遊楽記  作者: 明星ユウ
三章 はじめての公式イベントを楽しもう
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三百四十話 [賢人の宿]で状況整理を

 



 昼から夕方の時間に移り変わり、半ばがすぎた頃。


「よっし!! レベルア~~ップ!!」


 つづけていたレベル上げのための戦闘と、合間の楽しい雑談を切り上げ、ウルさんが夕陽を注がせる空へとぐっと拳を突き上げながら、声を弾ませる。


「ここまで上げれて良かった!」

「うん。やっぱりロストが来てくれたのは、大きかったね」

「だな~っ!」

「あぁ! 俺もそう思う!」

「お役にたてたようで、何よりです。誘っていただけたおかげで、私もレベルを上げることが出来ました。ありがとうございます、みなさん!」

「おうっ! こっちこそな!」

「今日も助かったよ、ロストシード!」

「ありがとうね、ロスト」

「はい!」


 アネモスさんやテトさんも加わり、四人で笑顔を交し合うと、明日の健闘をお互いに祈り合いながらパーティーを解散して、足並みをそろえてトリアの街へと帰還。

 中央の噴水広場にてお三方と分かれ、ふぅと戦闘の余韻を吐息で流し、灰色の石盤を開く。


 お三方とのレベル上げにて、一つレベルが上がり、現在のレベルは四十四になった。

 ひとまず公式イベント開始前に、と定めた目標であるレベル四十五には、問題なく今日中に到達できそうで、自然と微笑みがうかぶ。


 サッと石盤を消し、さてと足を向けたのは、神殿やギルドへとつづく大通り。

 ログイン後の予定にともない、まだ出来ていなかったお祈りをするため、さっそくと靴音を響かせる。


 足を進めてたどり着いた、白亜の神殿の中へと迷わず踏み入り、精霊神様から順に天神様、魔神様、獣神様、技神様……としっかり《祈り》を捧ぐ。

 そうしてお祈りを終え、穏やかな気持ちで神殿を出たのち。

 大通りから、再度中央の噴水広場へと戻り、鮮やかな夕陽を眺めながら、お次はと職人通りへ歩みを進めた。


 残り半分ほどとなった夕方の時間のその後は、現実世界で夕食をとる時間になるため――残りの時間は、新しいお宿を楽しむ方針で行こう!

 口角を上げ、小さな四色の精霊さんたちにもこの後のことを告げる。


「みなさん。この後は、新しいお宿でゆっくりと、空に帰るまでの時間を楽しみましょう」

『はぁ~~いっ!!!!』


 楽しそうに幼げな声音を弾ませる、精霊のみなさんに微笑みを返して、石畳の通路を進み、岩造りの宿屋へとたどり着く。

 [賢人の宿]と宿名が書かれた看板を見やり、扉から室内へと入ると、変わらない不機嫌そうな表情をしたご主人が一人、カウンターの向こう側に座っていた。


 食事の提供はないものの、石造りの机と木製の椅子がいくつかあるこの室内では、鍛冶をのぞいた各種生産職の作業が可能で、持ち込んだ食材で料理をすることや席について食べることも出来る。

 ……とは言え、この宿を利用している客層はおおむね、二階や右隣の宿部屋の中で作業をする場合が、多いらしいのだけれど。


 チラリと注がれた、お父君である錬金技術のお爺様によく似た銀の瞳は、そのまま二階へと繋がる階段を示してくださる。

 それに微笑んでうなずきを返し、階段をのぼって二階へと上がると、アルさんと一緒に受付をした際に手渡された木札の番号と同じ部屋の扉を開く。


「ほう」


 瞬間、つい零れた感嘆の吐息と共に、石造りの室内へと踏み入った。


『いしのおへやだ~~!!!!』

「えぇ。これはまた、今までのお宿とは異なるおもむきを感じますねぇ」


 ぱっと肩と頭の上から前方の空中へと躍り出た、小さな四色の精霊さんたちが、好奇心を宿した声を上げる。

 それにうなずいて私自身の感想を紡ぎ、出入り口の扉を閉めてからゆったりと新しい宿部屋を見回した。


 床も壁も、艶やかな黒に近い濃い灰色の石で造られた部屋は、以前のお宿の蔓造りの部屋や神殿の白亜の部屋とは異なる、静かな思索の時を決してそこなわないように配慮された、物静かな雰囲気に満ちている。


 部屋の中央にあるのは、作業をするのに十分な大きさの石の机と、木製の椅子。

 左の壁側には姿見の大きな鏡と、素材を入れておくことのできる数個の箱が置かれている。

 右の壁側にはベッドがあり、正面には窓と、そのそばに一人がけのソファーが一台。


 まるで、それに腰かけて窓の外を眺めることを、オススメされているようなソファーに、つい心惹かれて腰かけ、窓から夕陽に照らされたトリアの街並みへと視線を注ぐ。

 美しい夕陽に照らされた少しばかり武骨さを見せる街の景色は、不思議ととても穏やかな心地をもたらしてくれた。

 小さな多色と水の精霊さんたちのかくれんぼを解除して、色とりどりの綺麗な姿がゆったりと舞う姿を癒しに加えつつ、改めて少し準備状況の確認をする。


 まだ夕食後の時間もつづける予定の、公式イベントに向けての準備は、いくつかの状況に分かれていた。


 まず、定期的に商人ギルドへお届けしている商品に関しては、ひとまず事前に製作を終え、お届けもすませているため、イベント開催後は大規模戦闘に集中できるような形に整っている。


 次に、事前準備として大切な二つの要素。

 一つ目の装備は、問題なし。現状の装備で良しと決めている。

 ただ、気分を引きしめるために、当日の朝におめかしをするのは好いかもしれない!

 二つ目の消耗品、特にポーションに関しても、生命力回復ポーション、魔力回復ポーション共に、すでにたくさんつくって備蓄している状況なので、こちらも問題なしだ。


「順調に、明日に向けての準備は整ってまいりましたね。後は――可能な限り、レベルを上げることに専念いたしましょうか」

『れべる、いっぱいあげる~!』

『しーどりあ、つよくなる~!』

『ぼくたちも、つよくなるよ~!』

『いっぱいまもの、たおすよ!』


 微笑みながら告げた言葉に、意気込む小さな四色の精霊さんたちが、それぞれの色の光を強める。

 それに笑みを深めながら、こちらも力強くうなずき返す。


「えぇ! たくさん魔物を倒して、いっぱいレベルを上げましょう!」

『うんっ!!!!』


 刹那、やる気に満ちた私と精霊さんたちの心は、きっと同じ熱さを灯したに違いない!

 空へと帰る時間になるまで、しっかりとみなさんと一緒に戦うための作戦会議を楽しんだのち。

 各種魔法を解除して、小さな多色と水の精霊さんたちを見送り、新しい宿部屋の新しいベッドへと、身をあずける。

 予想通り寝心地の好いベッドに口元をほころばせ、胸元へと降りて来た小さな四色の精霊さんたちにまたねを告げて――ログアウトを呟いた。




※明日は、主人公とは別のプレイヤー視点の、

・幕間のお話

を投稿します。


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