三百三十二話 幕間三十四 その二つ名にふさわしい人
※主人公とは別のプレイヤー視点です。
魔法、幻想、神秘――子供の頃から、そういった非科学的なものが好きで、ファンタジーな種族や、むかしむかしにはこの世界にも実在したらしい、魔法使いに憧れていた。
だから、そのような存在として、幻想的な世界で五感を使って楽しむことが出来る、最新の没入ゲーム【シードリアテイル】のトリコになったのは、ある意味では当然のことだったと思う。
ゲーム開始前、この幻想的な世界で新たに誕生するシードリアの一人……プレイヤーである自身の新しい姿として、選べる多様な種族の中から、妖精族のフェアリーを選んだ。
妖精族の中でも、エルフやコロポックルあたりとフェアリーとでかなり悩んだけれど、低空飛行ですぅ――と移動する異種族感あふれる動きと、綺麗な翅に惹かれたことに、後悔はない。
波打つ蒼色の長い髪と、淡く煌めく水色の翅、それに翅と同じ水色の瞳は結構お気に入りで、色鮮やかなフェアリーたちが集うフェアリー族の里の中でも、穏やかにその場に溶け込んでいた。
サービスが開始した日の半日近くは、まるで本物の異世界のような神秘さをかもしだすフェアリー族の里の中で、色々なものに視線を奪われていたけれど……。
元々この没入ゲームでは、攻略系の立場には収まりたいと思っていたから、その後は大本命の学びを優先することに決めた。
僕の大本命――それはもちろん、魔法!!
そうそうにオリジナル魔法を習得して、他の攻略系のプレイヤーたちと一緒にパルの街にたどり着いてからは、本当に楽しい瞬間の連続だった!
実力があるたくさんの攻略系プレイヤーのみんなとフレンドになれたこと、パーティーを組んで一緒に最前線を切り拓いていったこと……。
楽しさだけではなく、やりがいさえも感じる日々の中で、僕自身オリジナル魔法の学びを深めていたある日。
この【シードリアテイル】に、僕たちプレイヤーを導くような偉大な魔導師が、現れた。
それはもちろん、嬉しいことに攻略系の中でも凄腕と言われている、フェアリー族の魔法使いである僕、ではなく。
――かの初期から有名なエルフのプレイヤー、精霊の先駆者たる彼が、[シードリアの魔導師]と、そう新たに呼ばれることになったのだよね。
この事実がフレンドたちの間に広まった当初は、なぜそう呼ばれる者が、一応攻略系の筆頭の一人である僕ではないのか? と数名から疑問の声が上がり、少しだけ説明が面倒……いや、大変だったのは、状況的には必然ではあったけれど。
そもそも、その点ではフレンドのみんなが、僕のことを過大評価してくれていることは、明らかだった。
僕としては、さすがに僕自身が魔導師と呼ばれるほど、オリジナル魔法についての情報を伝授出来ていなかったことくらいは、分かり切っていたのだから。
ではなぜフレンドたちが、彼が魔導師と呼ばれ、僕がそう呼ばれないことを意外に思ったのか……それは、実は単純なことだった。
いつの日だったか、あるフレンドに、僕は外見や語り口調から、知的な理論派に見える、と評価してもらったことがある。
今回は完全に、この認識が問題の原因だった。
つまり、精霊の先駆者である彼が、精霊たちのことを詳しく知っているに違いないと、そう思われているように、僕も攻略系の知的な理論派魔法使いとして、オリジナル魔法についての情報を一番多く提供しているだろう、と。
要するには、そう思われていたらしいのだよね。
まぁ……実際のところは、残念ながら僕は結構な感覚派だから、オリジナル魔法を習得すること自体は早い段階で出来ていたけれど、情報提供をすることまでは出来ていなかったのだけど。
けれど、だからこそ、だろうか?
[シードリアの魔導師]の二つ名が誕生したその日から、そう呼ばれる彼のオリジナル魔法には――ずっと、強い興味をいだいていた。
【シードリアテイル】のサービス開始から、十四日目の今日。
第一回目の公式イベントの開始日が、いよいよ明日に迫っている!
というタイミングの朝にもたらされた、イベント情報の追加分が、予想よりも詳細で嬉しかったことは、さておき。
大規模戦闘イベント、と最初から開示されていたイベント内容を参考に、攻略系のみんなはここ数日、そろってレベル上げにはげんでいた。
それは僕も例外ではなく、今日もレベル上げのために、ラファール高山の麓をおとずれていたのだけれど……。
――まさかこの場所で、ずっと気になっていた彼のオリジナル魔法を、実際に目にすることが出来るとはね!!
攻略系ではないことが不思議なくらいの彼が、ついに文字通りの最前線のすぐ近くであるこの場所でレベル上げをしている、という事実だけでも、おおいに世迷言板が盛り上がる事態な気しかしない。
そう半ば確信しながら、とにもかくにもお手並み拝見、とそっと観察した彼のオリジナル魔法は――想像以上に、凄まじいものだった!!
魔法として放たれる攻撃の一つ一つの威力は、現状僕が使っているオリジナル魔法と、そこまで差があるとは思えない。
けれど、一つのオリジナル魔法として完成された形を考えるのであれば、まず一度に攻撃として放てる雷の矢の数は多すぎるし、もう一つのオリジナル魔法も各種状態異常の使いかたが上手過ぎる。
すでに四十五レベルを超えている者も多い攻略系プレイヤーの場合、レベルの高さが魔法の強さを補っていることは多い。
僕もその例にもれないのだけれど……彼の場合は、そもそもレベルの高さに頼った魔法の使いかたを、していないと気づいた。
「あぁ……うん。これはたしかに――魔導師、だね」
結論として、思わずそう呟いてしまったのも……無理のない話だと、今度初日から彼の凄さに気づいていたらしいエルフのフレンドに伝えて、一緒に笑ってもらおう。
ところで……あの精霊たちの攻撃も、いったいどうなっているんだろうね??
精霊魔法を唱えることなく、精霊たちが精霊魔法を連発していた、と今見たことを説明したとして、果たして妖精族のフレンドの何人が、信じてくれるかな?
――精霊の先駆者に、シードリアの魔導師。
まったくもって、彼にふさわしい二つ名だと、納得するしかないね。
※明日は、
・十四日目のつづきのお話
を投稿します。
引き続き、お楽しみください!




