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三百十六話 たまにはのんびり読書でも

 



 屋台の美味しい食べ物を味わい、満足した後は――少しゆっくりと楽しめることをしよう!

 閃きに微笑みを深め、さてと片手を口元にそえて考える。

 商品用の装飾品やポーションづくりは……先日商人ギルドへお届けしたばかりなので、もう少し後でもかまわないだろう。

 他にゆっくり楽しめることと言えば、おつかいクエストのような戦闘の必要性がない依頼か、腰をすえてのんびりとする読書か……。

 戦闘つづきだった半日を振り返り、何が一番穏やかな時間を楽しめるだろうかと悩んでいると、橙色の夕陽が落ち切り、宵の口の時間がおとずれた。


『しーどりあ、またね!』

『きたよ~、しーどりあ~!』

「はい。小さな光の精霊さんはまた遊びましょうね。小さな闇の精霊さんは、いらっしゃいませ」

『またね~!!! いらっしゃ~い!!!』


 三色の精霊さんたちと共に、光の精霊さんを見送り、闇の精霊さんをお迎えして、嬉しげにぽよぽよと肩と頭の上で跳ねる精霊さんたちの様子に微笑む。

 ……いっそうのこと、このまま精霊さんたちとたわむれる、という案もあるかもしれない。

 そう考え、うっかりゆるみそうになる口元を、かろうじて整える。

 たいへん魅力的な案だとは思うのだけれども、宵の口ならばまだ各種施設もギリギリあいているので――この時間はとりあえず、書館で読書を楽しもう!


「みなさん。この後は、ゆっくりと読書を楽しみに、書館へまいりましょう」

『ほん~~!!!!』


 決まった方針を小さな四色の精霊さんたちへ告げ、わくわくとした雰囲気を放つ精霊のみなさんと一緒に、さっそく書館の通りへと足を踏み入れる。

 すぐにたどり着いた書館の中に入り、今回は最初から魔法関連の本があるほうの部屋へと司書のかたへ案内をお願いした。

 踏み入った特別な部屋に広がる、紙の本の香りを楽しみながら、前回はここで中級魔法についての学びを得たことを思い出す。

 それならばと確認した本棚には、予想通りのタイトルが書かれた本を見つけた!


 [中級属性魔法の一覧]


 そう書かれたタイトルを見やり、口角を上げる。

 以前、エルフの里のクインさんの書庫で読んだ本の中には、[初級・下級属性魔法の一覧]とタイトルが書かれた本があり、その本からは既存の属性魔法を学ぶことができた。

 であれば、既存の中級属性魔法を学ぶ本もあるのではないか、と。

 そう巡らせた予想は、見事的中したと言えるだろう。

 そっと丁寧に本を本棚から抜き取り、近くの椅子へと腰かけ、机の上で表紙を開く。


 [〈アクアランス〉

 単発型の攻撃系中級水魔法。水の槍を敵へと飛ばす。詠唱必須]

 [〈ヴェントスランス〉

 単発型の攻撃系中級風魔法。風の槍を敵へと飛ばす。詠唱必須]

 [〈テラランス〉

 単発型の攻撃系中級土魔法。土の槍を敵へと飛ばす。詠唱必須]


 開いたページに書かれていた、連なる魔法名と説明文に、いつかの日に見た初級や下級の魔法の一覧を思い出し、デジャブを感じて小さく笑みを零す。

 今回の本には他にも、小範囲型の攻撃魔法が載っていて、視線で説明文をなぞる。

 [〈アクアボルテックス〉]は水の渦、[〈ヴェントスボルテックス〉]は風の渦、そして[〈テラボルテックス〉]は砂の渦をつくり出し、複数の敵を巻き込んで攻撃する、小範囲型の攻撃系中級属性魔法らしい。

 視線で読み上げた説明文に、思わず緑の瞳をまたたく。

 渦、とはこれまた、なんとも見慣れた表現だ。

 案外、私が創ったオリジナル魔法は、既存魔法の形態に近しいものだったのかもしれない。

 渦の形をとったいくつかのオリジナル魔法を頭にうかべながら、読み終わった本をパタリと閉じる。

 本棚へと戻しつつ、以前から薄々気づいていたことではあるが、本だけでは既存魔法もその多くを学ぶことはできないようだと改めて理解し、素直に残念だと感じた。

 小さくため息を落とし、しかしだからこそオリジナル魔法という魔法形態があるのだろうと、魔法のロマンに気をもち直す。

 微笑みを口元に戻し、他に何か気になる本はないだろうかと本棚を見て行き……見つけて、しまった。


 [アナタを輝かせる! 装飾系魔法について☆]


 ――まさかの、装飾系魔法の本!!

 私が習得している装飾系の魔法と言えば、あの動作にともなって白光の粒を煌かせるだけの光魔法、〈グロリア〉のことだ!

 実際に〈グロリア〉を使った時のことを思い出し、もう一度ずいぶんとクセの強いタイトルが書かれた背表紙を見やる。

 どんな学びも、この大地ではきっと役に立つ、はずだ。

 覚悟を決め、それでも若干緊張をしながら、本棚から本を抜き取って机へと戻り、椅子に腰かけて表紙を開く。

 めくったページの最初に書かれていたのは……。


 [装飾系の魔法は、攻撃に使えるようなものはほとんどないの。けれど、安心して! アナタが輝けば、どんな敵にだって打ち勝てるのよ☆]


 一瞬、やはり読むのをやめようかとまで考えて、いやしかしと首を横に振る。

 つい先ほど、知は力だと考えたばかりなのだ。

 一行目で屈するわけには、いかないというものっ!

 深呼吸を一つして、改めて本を読み進めて行く。


 [キラメキを、輝きを、彩を、その身や物にまとわせる。つまり、装飾系の魔法は、より良く魅せるための、魔法なの☆]


 たしかに、〈グロリア〉はキラメキをまとう魔法だった。

 闇夜では間違いなく、さぞ人目をひくことだろう。


 [基本は光魔法だから、はじめは天神様の祈りの間でお祈りをすることを、オススメするわ!]


 これはまさしく、〈グロリア〉を習得した時の状況だ!

 やはり神々へのお祈りは、どのような魔法を望むのだとしても、重要であることに変わりはないと言うことだろう!


 [あとはぜんぶ応用よ! アナタ自身や、アナタが輝かせたい物、人を思って、素敵な装飾系魔法を見つけてみてね☆]


 いや、さすがに意図して装飾系の魔法を探すような展開は、少なくとも私の【シードリアテイル】での冒険の中では、そうそうあることではないとは思う。

 ……無い、はずだ。たぶん、きっと。


 [アタシの魔法は……ここでは、ヒ・ミ・ツ☆ また別の本で、お会いしましょう☆]


 最後に綴られた文字を、うっかり口元から広げた笑顔で読み終えて――最後までなかなかに独特な書き手だったなぁ、と思いながら、パタリと本を閉じた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 装飾系魔法〜〜っ⭐︎(´∀`*)✨ 存在を忘れ掛けていましたw どうしましょう…やはりちょっとツボな分野なんですよねw 著者の方も含めてとても気になります(笑)
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