三百二話 白き癒しの腰飾り
精霊神様のお祈り部屋での《祈り》と用事を終えた後は、新しく習得した付与魔法を付与するための、装飾品をつくろうと思い至った。
「お次は、職人ギルドで素材を買ったのち、新しい装飾品をつくりに、あの職人通りへ行ってみましょう!」
『はぁ~~い!!!!!』
小さな五色の精霊さんたちに次の方針を告げ、神殿から大通りへと出ると、トリアの街の職人ギルドで必要な素材を買い込み、再び中央の噴水広場へと戻る。
夜明け色に染まった噴水の煌きについ見惚れつつ、パルの街では書館のある通りに建ち並ぶ、職人通りへと踏み入った。
作業部屋のような家々が連なり、カンッ! と高く鎚を振るう音が響く。
時折魔法の光さえ垣間見える通りを進んで行くと、開け放たれた入り口から装飾品をつくっている人々が見える家を発見!
近くに立てかけられた木の看板には、[細工師の作業場 利用はご自由に]と端的にこの場所について書かれていた。
最適の場所を見つけたからには――ここで作業しないわけにはいかないと言うもの!
さっそくと数名の細工師であろう、ノンプレイヤーキャラクターの人々が作業をしている室内へ、静かに入る。
石の長机と木の椅子が並べられた広い室内の端の席に座り、まずはと必要な素材をカバンの中から取り出していく。
蒼い遊色のゆらめきが美しい、艶消しの灰色めいた石である魔導晶石に、淡く光る光属性の白色の魔石と、光属性と相性の良い艶やかな白石、それに自作の水晶をそろえて――いざ、作業開始!
今回新しくつくる装飾品は、今までとはまた異なる形にしてみよう。
腕輪、指輪、首飾りに足輪……リリー師匠に案をいただいた足輪以外は、どれも私自身ぱっと思いつく装飾品の形だ。
しかし、せっかく新作をつくるのであれば、ここは一つ、髪飾りやマントの留め飾りでさえないものにしてみたい!
脳内で思いうかんだ形は――ベルト型の、腰飾り!
……とは言え、腰飾りと言っても、さまざまな形状がある。
綺麗で素晴らしい形状はいくつか思いつくものの、まだまだそれを形にする技術が私にない以上、高望みは難しい。
ここはやはり今までの作品たちに近しい、編み込みで形を整えるとしよう。
そうと決まれば、実際につくっていくのみ!
魔導晶石と白石と水晶を混ぜ合わせ、ほんのりと光沢を帯び、少しだけ透けた白い軟体にしてから、焦らずゆっくりと編み込んでいく。
ベルトの帯にあたる部分は、他の紐などで代用しても良かったのだが、せっかくなので今回は魔石と純性魔石をはめる部分だけではなく、帯そのものも編むことにする。
はじめての試みだが、パルの街と同じく、トリアの街には技神様による技術系の土地の加護があるため、きっと上手く装飾品を完成させることができるはずだ。
はじめてトリアの街をおとずれた時、いずれ私もこの職人通りでお世話になるかもしれないと思っていた記憶が懐かしい。
――まさに今、お世話になっております!
そうして、夢中になって編み込みをつづけていると、ぱぁっと窓の外が一段と明るくなった。
夜明けの時間から、朝の時間へと移り変わったらしい。
『またね、しーどりあ~!』
「えぇ、また遊びましょうね」
『うんっ!』
ふわりと眼前へと降りて来た小さな闇の精霊さんと、小声でまたねを交わして、その姿が消えるのを見届ける。
引きつづき紐のように細くした素材を編み、なんとか帯の部分を編み上げて、ふっと吐息をついたのち。
さすがに少しだけ休憩をはさむことにして、肩と頭の上に乗る小さな四色の精霊さんたちを、指先で順に撫でて行く。
それぞれ、涼しさやあたたかさを感じる小さな身を撫でると、お返しにと精霊さんたちが私の頭と肩をよしよしと撫でてくださった。
ほっとひと心地がつくような癒しの時間に、ゆるむ頬をなんとか穏やかな表情の範囲内におさめる。
本当に、小さな精霊さんたちはいつもとっても可愛らしい!!
特上の癒しをいただき、気力を回復させて、また作業を再開する。
お次は、魔石と純性魔石の形をナイフで整え、魔力を通して磨いて行く作業!
今回の魔石と純性魔石の形は、ひし形にしてみた。
特に深い意味はないのだけれど、なんとなくオシャレな気がする!
……本当にそのような気がするだけで、実際は特別オシャレではないだろう、という事実はそっと横に置いておく。
芸術は必ずしも、すべてが計算されつくした上で形作られるものではないのです!
きっと、たぶん、おそらくそうだと思う、ということにして、磨きの作業に入る。
シルクのような艶やかさをもつ真白の布を当て、魔力を通しながら磨いていくと、白の魔石も蒼の純性魔石も、まるで宝石のように煌きを増していく。
満足のいく輝きに仕上がり、自然と口角を上げた後は、帯へとはめこむ最後の作業をおこない――ついに、新作の装飾品が形になった!
朝の陽光をたっぷりと浴びて、艶やかな白色を煌かせる、編み込みが美しい帯状の腰飾り。
じっくりと新しい装飾品の出来栄えを確認し、にこりと微笑む。
我ながら、なかなかに素敵に仕上がったと思う!
両手で持ったまま、忘れずに新しい付与魔法〈オリジナル:見えざる癒しの白光の付与〉を持続付与して――白き癒しの腰飾り、完成!!




