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【PV・文字数 100万越え!】マイペースエルフのシードリアテイル遊楽記  作者: 明星ユウ
一章 はじまりの地は楽しい誘惑に満ちている
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二十九話 幕間一 美しい返礼をしてくれた人

※主人公とは別のプレイヤーの視点です。

 



 わたしが最新の没入ゲーム【シードリアテイル】を知ったのは、ちょうどサービスが開始する今日から、半年くらい前だった。

 もともとゲームが好きだったから、最新のゲームとかはけっこう調べてて。

 その時に見つけて、すごくすごく、楽しみにしてやっと今日が来た。


「わぁ……!」


 見開いた視界いっぱいに、まるで本物みたいな森と空、それに他のプレイヤーのみんなが映った。

 わたしはたくさんあった種族の中から、エルフを選んだ。

 だからまわりのプレイヤーのみんなも、綺麗だったり可愛かったりかっこよかったりするエルフの姿。

 幼いころからファンタジー作品が好きだったからか、他にも妖精族の中ならフェアリーとか、天人族のアンジェとかも迷ったけど、やっぱり気になるのはエルフだったから選んだあの時の自分を、褒めたいくらい。

 それくらい、色々な姿のエルフが見られて、すごくうれしかった!

 でも、景色と他のプレイヤーを見ておどろいている間に、とっても綺麗なエルフのお姉さん――大老さん? がやってきて、それから精霊さんがぱっと出てきて。

 蛍の群れの中にいるみたいに綺麗で、その光景に夢中になった。


「きれい……!」


 ここは没入ゲームの中だから、胸の音なんて聴こえないのに、それでもドキドキしてるように感じて。胸の前で手をぎゅっと重ねていると、右斜め前の背の高いエルフのお兄さんが、手を差し出しているのが見えた。

 女性みたいに細くて綺麗なその手に、小さな青色の蛍みたいな精霊さんが留まって、びっくり!

 そんなこともできるんだ、って思ってまわりを見回したけど、他のみんなはそんなことできてないみたいで、もう一回びっくりした。

 ひとり、銀色の精霊さんをつんつんとつつくエルフの女の子がいたくらい。

 精霊さんを手に乗せてるお兄さんのほうをみると、手の上で遊んでいるみたいなその精霊さんをつんとつついている。

 角度的にお兄さんのお顔はあまり見えなかったけど、すごく優しそうに笑っていたように見えた。


 それから先は、大老のお姉さんにみんな連れられて進んで、エルフの里に到着。

 不思議な蔓のお家、綺麗な土道、いろいろなお店を見ながら歩いて広場にでたら、何人かのプレイヤーが魔法の練習とか弓や剣の練習をしてて、気になって近くに行ってみる。

 みんなの様子をすこし見て、先生みたいなノンプレイヤーキャラクターのエルフの人たちに教えて貰ってるって分かった。

 わたしも魔法をつかってみたくて、杖をもっている凛々しいエルフのお姉さんのところに行くと、お姉さんはかっこよくいくつかの魔法を教えてくれて。

 でも、思ったよりすぐに魔法をうてるわけではなくて、みんなと一緒に何回かは魔法の名前を言葉に出しても魔法そのものは出なくて、すこし恥ずかしかった。


『魔法の発動に大切なものは、想像力だ』


 そう、魔法の先生のお姉さんに教わって、やっと初級の水魔法〈アクアボール〉を出せた。

 気持ち的には、とびあがって喜びたいくらい、すごく嬉しかった!

 楽しくて、他にも風と土の初級魔法を教えてもらって、その二つは意外とすぐに使えるようになったけど、その頃にはいつの間にか広場がプレイヤーでいっぱいになってて。

 あわてて、あとから広場に来た人たちにその場をゆずって、また土道に戻った。

 もう一度ゆっくり見て回ろうと思って、お店とかをのぞきながら、来た道を里の入り口に向かって歩いて。

 里の入り口にはもう他のプレイヤーはいなかったから、まわりをあっちこっち色々見てたら、後ろのほうで優しそうな男性たちの会話がいきなり聴こえて、びっくりした。

 あわてて後ろを見たら、一番入り口に近い蔓のお家の前で、ずっと本を読んでいたはずのノンプレイヤーキャラクターのエルフのお兄さんと、あの青色の精霊さんを手に乗せてたプレイヤーのお兄さんとが話していて、さらにびっくり!

 お兄さんの近くには、青色と銀色と茶色の精霊さんが三体もいて、うっかり見つめてしまって、会話が終わりそうな雰囲気にいそいでこのあたりで色々見てます、って雰囲気をつくった。

 それでも、土道に出てきたお兄さんと目が合って、あわててぺこっとお辞儀をして。

 顔を上げると、お兄さんがすごく優しそうにすこし笑って、それから右腕を背中のほうにまわして、左手で右胸のあたりをとんとんってたたいたあと、すごく綺麗な姿勢でお礼を返してくれた。

 その返礼のようすがすごくすごく上品で、綺麗で、つい見惚れてしまって。

 顔を上げたお兄さんが、一瞬不思議そうな顔になって固まったのがわかって、そこでようやく見惚れてたって気づいて、またあわててお辞儀をすると、今度はお兄さんのほうも会釈をして、わたしが戻って来た土道を歩いて行った。


「……すてきだったなぁ」


 ぽろっと出た言葉は、まちがいなく本心で。

 別に恋心とかではなくて、本当にただすごく素敵だと思った。

 精霊さんを連れてたり、優しそうな雰囲気だったり、スマートで上品な返礼をしてくれたり。

 エルフのプレイヤーとして、すごく理想的な素敵さがあるような気がして。

 好きな作品の中で、好みのキャラクターを見つけた時のような。あとは友達がよくやってた、アイドルに光る文字を飛ばして応援するような……。とにかく、そんなドキドキ感とわくわく感があった!

 また、会えたらうれしいな。

 そう思いながら、わたしはさきほどお兄さんと会話をしていたのが気になって、読書をしているノンプレイヤーキャラクターのお兄さんに話しかけた。

 それがきっかけで、書庫の本を読ませてもらえて、いろいろなことを知ることができたのは――きっと、あの優しそうなお兄さんのおかげだと思った。



※本日二話更新につき、21時に再度ログインするお話しを投稿いたします。

ぜひ併せて、お楽しみください。


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― 新着の感想 ―
[良い点] これは…あの時の!✨ 他のプレイヤー視点で語られるこれまでの流れも新鮮で良いですね♪ そしてロストシードさん…これはニヤニヤしてしまいますw 1日2回も更新して下さるの凄いです〜! また夜…
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