二百六十一話 幕間二十七 やっぱりロスト兄はかっけぇ!!
※主人公とは別のプレイヤー、ルンこと、ルンベルン視点です。
(幕間三、幕間十四と同じプレイヤーさんです)
【シードリアテイル】がはじまって、十一日目!
再挑戦ってことで、サロンのみんながそろってチャレンジした今日の釣りで、ロゼ姐さんが夜明けの時間にしか釣れない幻の魚、幻魚ってのを釣り上げたのは、めちゃくちゃかっこよくてすごかった!
――けど、おれにとってはやっぱり、その釣りの帰り道で、あのめんどうな緑ウルフ相手に、ロスト兄の強さが炸裂した戦闘が、いっちばんすごかったとおもう!!
「やっぱり、ロスト兄はかっけぇよなぁ」
「ですね……!」
釣りのあとには毎回開催する、魚料理を食べながら話す会でつぶやいたおれの言葉に、アルテちゃんが水色の目をキラキラさせて、ノッてくれる。
だよな!? って気分でうんうんうなずいて、あのロスト兄の「ステイ」をまた思い出す。
何回思い出しても、振り向きながら流し目で緑ウルフを見て、一瞬で足止めする魔法を使うの、かっこよすぎるって!!
「あのステイ、ほんと~~にかっこよかった!!」
「ルンがそんな風に目を輝かせて伝えたから、恥ずかしがり屋な麗しのロストシードは、急用ができてしまったんだよ」
「うっ……! そこは反省してる!!」
たしかに、どんなにかっこよくても、それを直接本人に伝えたら、急用もできるよな……。
たぶんだけど、おれだってやっぱり、はずかしくなると思う。
ロスト兄には、わるいことしたな……。
ガックリ肩を落とすと、姐さんがフッて小さく笑う声がした。
「冗談だよ、ルン。まぁ……気恥ずかしかったのは、事実だろうけど」
「頬が真っ赤でしたものね」
お嬢まで真顔でいうんだから、やっぱりはずかしいって思ってたんだろうな、ロスト兄。
――それでも、おれはあの時のかっこいいロスト兄の戦いかたに、憧れたんだ!!
「でもさ!! やっぱり最初の魔法とか! ステイの時の魔法とか! それにアルテちゃんの緑の子をおそってたやつを倒した魔法とか最後の魔法とか!! ぜんっぶめっちゃ! かっこよかったんだよな~~!!!」
「分かります……!!」
たまらず叫ぶと、いつもおとなしいアルテちゃんが、めずらしいくらい全力で同意してくれて、二人でやっぱりそうだなよなってうなずき合う。
「ルンはともかく、アルテまで熱が入っているね」
「仕方がありませんわよ。だってロストシードの戦闘姿が素敵だったのは、事実ですもの」
「そうだよ!! どう考えたって、あんなのかっこよすぎるから!!」
「です……!」
姐さんとお嬢の会話に、すかさずアルテちゃんと一緒にいきおいよく混ざる。
お嬢もロスト兄の戦いかた、かっこいいとおもってたんだな!
ま、お嬢はロスト兄のファンみたいなものだから、もしかしたらおれ以上にホントはかっけぇって思ってるのかも?
にやって笑ってお嬢を見たら、パッて広げた扇子で顔をかくしたから……おれの予想は、アタリかもな!
おれが笑顔でお嬢を見つめてたら、アルテちゃんが「でも、あの後本当は……」と困ったような声でつぶやいた。
「この子を助けてもらったから、お礼を言いたかったのですけど……」
「なに、それはまた今度会った時に伝えればいいさ」
「そうですね……はい、そうします!」
姐さんもすっごく気が利くよな~!
困った顔のアルテちゃんを、すぐにいつもの笑顔に戻すの、すげぇや!
そういえば、ロスト兄もお嬢のことをお嬢様呼びしてよろこばせたり、おとなしいアルテちゃんとも普通に話せたりするから、気が利く人なんだろうな。
それであれだけ強くてかっこいいって、やっぱりおれが憧れるのも、もう当然ってやつだ!!
でも、さすがのおれでもわかったことが、一つある。
それは――ロスト兄の前で、精霊たちが痛い思いをするようなことは、ぜったいしたらダメだってことだ。
普段怒らない人が怒る時ほど、こわいものはないってやつ。
だってさ、ステイですんだら……まだマシなほうだと、おもうんだよな。
どうがんばって考えても。
いやホントに、マジでそんな気しかしない。
そもそも、あのロスト兄なら、もっととんでもないことが――できるはずだろ?
ならやっぱり、アレでも手加減してたってことだ!
よし、決めた。
これから先、何があってもぜったい、精霊たちをまもることだけは、忘れないようにする!!!
どれだけステイがかっこよくても、アレを向けられるのは……さすがに、こわすぎるからな!?
※明日は、
・十一日目のつづきのお話
を投稿します。
引き続き、お楽しみください!




