二百四十五話 訓練と言う名の種は芽吹きて
夜のおとずれを感じながら食事を楽しみ、寝る準備まで終えてから、再度【シードリアテイル】へログイン!
『おかえりしーどりあ~~!!!!!』
「おや、みなさんお揃いですね! ただいま戻りました」
ちょうど鮮やかな夜明けの時間を示す薄青の光を浴びて、小さな五色の精霊さんたちが胸元で嬉しげに跳ねる様子に、微笑みをうかべる。
久しぶりにお借りした神殿の宿部屋は、変わらない純白が清らかで美しい。
いつもの準備はもう慣れたもので、小さな多色と水の精霊さんたちに精霊魔法の持続発動をお願いし、《隠蔽 三》の二枠を使ってかくれんぼをしていただいた後、〈オリジナル:見えざる癒しと転ずる守護の水風〉を発動してそよ風と癒しを身にまとう。
金から白金へと至るグラデーションのかかった長髪が、かすかにそよ風にゆれるのを確認して――今回も準備完了!
ふわりと微笑みを口元に乗せ、この後の方針を精霊のみなさんへと伝える。
「それでは。今回はこのまま広間へ降りて神々へお祈りを捧げたのち、精霊神様の祈りの間で魔法の練習……いえ、訓練をおこないます!」
『くんれん~~!!!!!』
凛と響いた方針に、わくわくと眼前で舞いながら声を上げた小さな五色の精霊さんたちへ、うなずきながら説明を紡ぐ。
「えぇ。先の星魔法の訓練だけではなく、やはり他の魔法も強さを求めていこうかと思いまして」
『しーどりあ、めいあん!』
『つよさ、だいじ~!』
『つよいてき、いっぱいいる~!』
『まほうのつよさ、だいじ!』
『まほうがつよいと、あんしん~!』
「はい! 今後もしっかりと、強い魔法を求めて進んでまいります!」
『お~~!!!!!』
精霊のみなさんの言葉に、私の決意を返すと、宿部屋に元気なかけ声が響いた。
微笑みを深め、さっそく水色のローブをひるがえして宿部屋を後にする。
今回は先に天神様や魔神様、獣神様や技神様へと《祈り》を捧げてから、精霊神様のお祈り部屋へと入り込む。
ここでも《祈り》を発動し、日々の感謝の念を捧げたのち――今回はゆっくりじっくりおこなうと決めた、久しぶりの魔法の訓練を開始する。
……なお、エルフの里の神殿での出来事を教訓にして、やはり星魔法だけは、この中で練習するのは控えておく。
「さて! それではオリジナル魔法の訓練をはじめましょう!」
『くんれん、かいし~~!!!!!』
深呼吸を一つ。気合いは充分。
ひとまずはと、習得しているオリジナル魔法をそれぞれ丁寧に、集中して一つ一つ発動し、感覚や使い方を再確認する。
それが終わると、今度はよりその魔法を磨く心持ちで、発動を試す。
手はじめに、無音で発動し敵を切り裂く風の刃を放つ〈オリジナル:無音なる風の一閃〉を、もっと素早く鋭く、を意識して放ち――次の瞬間、しゃらんと美しい効果音が響いた。
「おや」
『なになに~~?????』
思わず零した驚きの声に、小さな五色の精霊さんたちが眼前に光うかぶ文字の近くへと集まってくる。
そこには、[〈オリジナル:昇華一:無音なる風の一閃〉]と書かれていた。
「ほう……?」
つい、深みを帯びた声音が口をつく。
湧いた好奇心をそのままに、サッと灰色の石盤を開き、新しく習得したらしいオリジナル魔法の説明文を確認する。
「[〈オリジナル:無音なる風の一閃〉の昇華一。無詠唱で発動させた、単発型のオリジナル攻撃系下級風魔法。無音で敵を切り裂く、より速く鋭き風の刃の一閃。無詠唱でのみ発動する]……なるほど、こうきましたか」
予想外の魅力的な展開に、自然と口元の笑みが深まった。
「まさか、今まで習得したオリジナル魔法自体を、さらに強くする方法があったとは!」
これは、まごうことなき大発見だ!
このような形で、今習得しているオリジナル魔法を強くすることができるのであれば、魔法の可能性をより引き出すことが出来る。
それに、既存魔法とオリジナル魔法の間に無詠唱という発動方法をはさんだ分……あるいはそれ以上の、強さの違いがあったように。
もし、ただのオリジナル魔法と昇華しているオリジナル魔法とで、強さが明確に異なるのであれば。
同じ下級と付く魔法でも、強さが明確に異なる魔法が存在するという、魔法の奥深いロマンを体現しているとも言えるだろう!
あぁ――まさしく、これこそが魔法のロマンだ!!
やはりさらなる強さを求めておこなう訓練は、決して無駄にはならない。
フッと戦場でうかべるような不敵な笑みを口元に乗せ、ならばこちらのオリジナル魔法もと、二つのよく活躍してくれているオリジナル魔法を昇華できないか試してみる。
結果、見事にしゃらんと美しい音が鳴り、眼前に二つの魔法名が現れた。
[〈オリジナル:昇華一:風まとう水渦の裂断〉]
[〈オリジナル:昇華一:風まとう氷柱の刺突〉]
今やスキル《一段階攻撃系属性魔法増加 二》によって、それぞれ七つの水の渦や氷柱を出現させることが出来ている、お気に入りのオリジナル魔法が無事昇華し、嬉しさに笑みを深める。
これはまた、実戦での活躍が楽しみだ、と思ったあたりで、チリンという鈴の音が鳴った。
見やった前方には、また新しい文字が光りながらうかんでいる。
[《並行魔法操作》の発動数が増加]と[《隠蔽 三》の昇格]と書かれた光る文字に、思わず緑の瞳が煌くような気持ちで、石盤を開く。
しっかりと刻まれた、《並行魔法操作》の発動数が六に増えている説明文と、《隠蔽 四》のスキル名に――今度こそ、満面の笑みが咲いた。




