二百四十四話 幕間二十五 憧れのあの人をご招待できましたわ!!!
※主人公とは別のプレイヤー、レディ・フローラ視点です。
親睦会と称した魚釣りと魚料理での食事会の後、今日のサロン【ユグドラシルのお茶会】の集まりは、解散することにいたしまして。
一度現実世界へ帰ることにしたアルテとルンを見送ってから、先に一人美しい一礼をして外へ出た、ロストシードの見えない背中を追うように、扉へと視線を注いでしまうのは……仕方がないことよね?
だって、まさかあのエルフの世迷言板で見かけた時から、ファンのような気持ちで少しずつ明らかにされる情報を楽しみに見てきた、当の本人に!
出会えて!? その時は知らなかったとは言え、サロンにお誘いして!?
それから本当に入ってもらえるなんて――わたくしは夢でも見ているのかしら!?
「夢ではないよ、現実だよ、フローラ」
「まぁ!? わたくし声に出していましたかしら?」
「いいや。でも、これは夢かしら? っていう顔をしていたよ」
「まぁ、ロゼったら!」
一緒にサロン部屋に残った、現実世界でも幼馴染で一番の親友のロゼが、いじわるな笑みをうかべるのに抗議をしてみても、効果はイマイチですわ。
分かっていますわよ! ロゼはイタズラ好きなのですもの!!
それにしても……!
「ロゼ。あなたがロストシードの姿を知っていたのに、教えてくださらなかったことだけは、わたくしけっこう根に持っておりますわよ?」
「はは! ごめんって」
ジトっと視線を注いで、【シードリアテイル】を遊びはじめてから一番根に持っていると言っても過言ではない不服を指摘しても、ロゼったらどこ吹く風みたい。
「も~~!! 本当にあなたって人は! ぬかにくぎ、ですわ!!」
「ははは! 豆腐にかすがい、のれんに腕押しかい?」
「そうですわ!!」
「んっふ! ふふふっ」
「んも~~!!! 笑っている場合ではありませんことよ!!!」
ツボにはまったのかしら?
お腹を抱えて机に突っ伏して笑うロゼに、扇子をトントンと軽く机に打ち付けて、抗議の声を上げても、まだ笑っていますわ!
不服さに頬をふくらませたところで、ようやく顔を上げたロゼが、心底楽しそうに瞳を細めてくるのに、もう、と眉を下げてしまいましたわ。
まぁ、こう言う場面でも思い切り楽しめるところが……ロゼらしい、素敵な一面ですから、仕方がありませんわね。
気持ちを切り替えるため、お気に入りの扇子を広げて、ぱたぱたと軽くあおぐと――あら不思議!
すぐに次の、弾むように嬉しい感情が、胸に広がりますの!!
「何はともあれ。麗しのロストシードをサロンに参加させることが出来たのは、本当にお手柄だったよ、フローラ」
「そうでしょうともそうでしょうとも!!! わたくしも、自画自賛しておりましてよ!!」
その点は、本当に心底胸を張れますわ!!!
なのせ、あ・の!
精霊の先駆者!
オリジナル魔法の使い手!
オリジナルポーションや作りからして異なる装飾品の製作者!
攻略系ではないのに最前線の街に行ったり、ご自身が有名なことに気付いていなかったり、謎でちょっと抜けている感じがある例のかた!
何より!! 美しいものの評価に手厳しいロゼをうならせるほど、見目もお声も所作も美しくて、さらには物腰もやわらかで礼儀正しい、わたくしの憧れの人!!
このような素晴らしいかたを、わたくしのサロンにお招き出来たことは、本当に我ながら偉業でしてよ!!!
フローラお嬢様、と呼んでいただけた瞬間には、この薄ピンク色の扇子に[ロストシード様!][一礼して!]、なんて文字を書いてひらひらさせたいくらいには、心底からのファンを名乗りたくなったほどですもの!!
……もちろん、わたくしはこの【シードリアテイル】では、レディ・フローラと言う名の華やかなお嬢様ですから、そのようなことはいたしませんけれど。
「これからが楽しみだね」
「えぇ!!」
そう言って、かっこよくて素敵な笑みをうかべるロゼに、わたくしだって負けないくらい、素敵な笑顔で返しますわ!!
とにもかくにも!
ロストシードをサロンに誘えて、やっぱりすごく嬉しいですわ!!!
※明日は、
・十日目のつづきのお話
を投稿します。
引き続き、お楽しみください!




