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二百十九話 幕間二十三 中級魔法を習得したい!

※主人公とは別のプレイヤーの視点です。

(幕間二、五、十六、二十のプレイヤーさんです)


 



【シードリアテイル】がはじまって、九日目の夕方頃。

 今の最前線の拠点、トリアの街の宿屋の中で、頭を抱える。


「うそでしょ~!? なんであたしより先に、あいつが中級魔法使えるようになってるのよ!?」


 予想外も予想外!

 ロストシードさんとか、もう一人の友人ならまだ納得できるけど!


「なんで魔剣士型のあいつのほうが、魔法使い型のあたしより先に中級のオリジナル魔法を習得してるの~~!? 普通にめっちゃ悔しいんだけど~~!?」

『しーどりあ、なでなで~~』

「みんなありがと!! も~~かわいいな!!」


 荒ぶるあたしの頭を、三色の下級精霊たちが優しくなでてくれるの、本当に可愛すぎるんだけど!!

 いつも本気で癒されてるよありがとう!! って気持ちを込めて、叫ぶ。

 ついでに、いったん落ち着こう。

 ハイ、深呼吸。


「す――は――! で。中級魔法って、どうやって習得するの?」

『そうぞう、だいじ?』

『ぞくせい、なれた?』

『れべる、だいじょうぶ!』

「想像に属性にレベル、かぁ」


 疑問の独り言に、精霊の子たちが伝えてくれた言葉が、きっとヒントのはず。

 元々、あたしに限らず、戦闘も楽しんでいる攻略系のみんなは、下級魔法より威力とか範囲とかが上がる中級魔法について、前から情報を探してたけど……。


「[試してみたら、なんだかできてしまったよ]って。そんな典型的な無自覚系先駆者みたいなことして! あんたは普通に攻略系でしょ!?」


 ついさっき、届いたばかりのメッセージを見直して、もう一回頭を抱える。

 具体的にどう試したのかとか、何ができあがったのかとか、とりあえず思いつく限りの疑問は、もう返信で送ったけど。

 たぶん、返事が来るのはもう少し後でしょ。

 なら――今のうちに、分かっている事だけでも、整理しておく!

 腕組みをして、小さくうなる。


「う~んと。とりあえず、レベルはたぶん今の段階で問題ないってことよね」


 サッと開いたステータスボードに書かれている、あたしのレベルは四十。

 今の攻略系プレイヤーのレベルは、だいたい三十五から四十くらいだから、これでも高いほうなんだよね。

 中級魔法を習得した友人も同じくらいのレベルだったから、たぶん四十くらいが必要なレベルかな?

 他は、精霊の子たちが言ってた、想像と属性だけど……。


「オリジナル魔法自体が、想像がだいじって感じだから、想像はそれとして……属性って、なに?」


 つい、そのまま目の前でふよふよしてる精霊の子たちに声をかける。

 くるくるって可愛く回った三色の子たちは、それぞれの光を少しだけ強めて、答えてくれた。


『まほうのぞくせい~!』

『いっぱいつかってるまほう!』

『ぞくせいとなかよし、だいじ~!』


 えっと……属性っていうのが、魔法の属性のことなのは、間違いなさそう。

 それから、いっぱい使ってる魔法の属性と、属性と仲良しになることがだいじっていうのは……たぶん。


「たくさんある魔法の中でも、特によく使っている魔法の属性と、仲良しになることがだいじ、ってこと?」

『うんっ!!!』

「な~るほど! 仲良しになる、がまだちょっと分からないけど、要するによく使ってる魔法と同じ属性の中級魔法を、習得することができる可能性があるってことよね!」

『うんっ!』

『なかよしは、ぼくたちといっしょ!』

『いっぱいいっしょにいると、なかよしになるの~!』


 ――そう言うことか!

 やっと謎の一つに答えが出て、ふふんって得意げな笑みが出た。


「つまり、みんなと一緒にいると仲良くなれるみたいに、よく使う魔法の属性とは仲良くなれるって意味だったのね!」

『うんっ!!!』

「よっし! ありがと! けっこう習得方法、分かってきたかも?」


 さっき理解した部分とあわせると――。


「レベルはだいたい四十くらいは必要。習得できる魔法は、よく使っている魔法の属性と同じ属性。あと、想像がだいじ、っと。こんな感じかな!」


 呟きながら、メモ用の真っ白な石盤に指先で文字を書き込んで、読み返す。

 正直、思ってたよりは、習得の基準自体はシンプルかも?

 ……これなら、とりあえず試してみてもいい気がする。


「案外、あっさり習得できるかも?」


 なんて、そう簡単にはいかないだろうけど。

 フッと笑って、メモをした石盤を消して伸びをする。

 ずっとこの部屋の中で悩んでいても、中級魔法は手に入らない。

 なら――神殿にでも行って、今分かっている情報で習得できるか、試してみればいいのよね!

 ぐっと伸ばしてた手を下ろして、気持ちを切り替え……れない!!


「や~~っぱり納得いかない! ぜったい! いろいろ情報もらうんだから! 覚悟しててよねっ!」


 何回考えても、やっぱり一番悩ましいのは、メッセージを送ってきた相手が気心の知れた友人ってところだよ!

 ――先を越されて、悔しいってだけだけど!!

 思いっきり称賛混じりの不満を叫んでから、ふいに昨日の心底意味がわからなかった出来事を思い出した。

 パルの街初日なのに、このトリアの街で姿を見かけた、ロストシードさんのこと。

 あんなことが出来たのって……もしかして!?


「あの人! 中級魔法習得してるってこと!?」


 あり得る、あり得すぎる!!

 というか、もう逆に中級魔法くらい習得してくれていたほうが、トリアの街に来れた状況に納得できるよ!

 もう一度、頭を抱える。

 ……なんていうか、もう友人が先に習得して悔しいとか、どうでもよくなってきた。

 スッと頭から手を下ろして、決意する。


「――よし。ぜったいあたしも中級魔法、習得する!」

『お~~!!!』


 覚悟を決めた呟きに、精霊の子たちの可愛い声が響いた。




※明日は、

・九日目のつづきのお話

を投稿します。

引き続き、お楽しみください!


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― 新着の感想 ―
[良い点] わぁ確かに魔法使いタイプの方が魔剣士タイプの方に先を越されたら悔しいでしょうね〜。闘争心を燃やす彼女を応援したくなりましたっ(*ฅ´ω`ฅ*) そしてこちらの精霊さんたちも可愛ゆいですねぇ…
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