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蒼海のアクアランサー ~槍に集いし海底王国の守護神たち~  作者: トモクマ
深度6000M 反逆者になるとか燃える展開じゃん!
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59.コロちゃんを追いかけよう!

 乗組員の居なくなった無人のパトロール艦「ムーンテラピン」が、海上をゆらゆらと漂っていた。亀の形をした船の甲羅部分には、深色とクロム、そして深色のクラスメイトである女子高生三人組が座り込んでいる。


「さて……どうにかこの船を脱出はできたものの……これから一体どうすればいいのかな? 結局、艦長から飛行機を墜落させた理由も聞けなかったし……」


「あれ? 麻酔銃で気絶させたんだから、目が覚めてから聞き出せば良いんじゃないの?」


 クロムがそう言って首を傾げる。


「いやそれがさ……銃のエネルギーレベルが麻痺パラライザーのMAXにセットされてたみたいで、一発受けたら後々一週間は目覚めてくれないって乗組員たちが言うから、一度王国に連れて帰ってもらったんだ」


「えぇ~っ……じゃあ何であの時艦長を撃っちゃったのさ?」


「だって、私が撃たれた時はくすぐったい程度にしか感じなかったから、まさかそんな威力があるなんて思ってもみなくて……」


「もう……本当に深色はどこか抜けてるところがあるよね」


 クロムは呆れて首を振り、溜め息を吐いた。


「……でも、どうして私たちの乗った飛行機を撃ち落としたりなんかしたんだろう?」


「それはあれだよ。海底人たちが人間世界へ戦争を吹っ掛けるために狼煙を上げたんだよ! 私たち、海底人たちに宣戦布告されちゃったんだ!」


 深色の疑問に対して、カナたんが興奮気味に声を上げる。


「もう、あんたはその手の映画を見過ぎなのよ。少しはまともに考えられないの?」とミヤぴーが言葉を返すが、そこへマユっちが、冷静な態度で掛けていた眼鏡を指でクイと押し上げ、語り始めた。


「――いいえ、今回の件ではその可能性が大かもしれない。だって考えてみて? 無実の人々が乗った他国の飛行機を無差別で攻撃するなんて、それこそ外交問題どころか、正体不明国からの宣戦布告と捉えられてもおかしくないわ」


「そんな……」


 深色は思わず声を漏らしてしまう。海底人と地上の人間が戦争するなんて、それこそSF映画のような話で、とても想像がつかない。


(そもそも、あのアメル国王が私たち人間と戦争しようなんてはかりごとを企んでいること自体、考えられないんだけど……)


「……でもとにかく、また私たちを狙う不届き者が現れるかも分からないから、三人はどこか安全な場所に身を隠していた方がいいよ。……とはいっても、パッと思いつく安全な場所なんて、如月さんたちの乗っているピュグマリオンの潜水艦くらいしか思い付かないけど、油田の火災ではぐれてから、どこに居るのか見当も付かないし――」


 そう言って深色が頭を抱えていた時だった。


「――あっ、ミイロ! やっと見つけた!」


 ふと海面の方から、何処かで聞き覚えのある声が耳に飛び込んでくる。


「どこ探しても、見つからない、とっても心配してた。でも、やっと見つかった! 良かった良かった!」


 少しつたない言葉で話す相手を前に、深色の顔に笑顔が戻る。


「その声……マシロちゃん!? こんなところまで来てくれたんだ!」


 海の上に現れたのは、真っ白で大きなおでこを持つ、喋るシロイルカのマシロだった。


 深色は盛り上がった甲羅の上を滑り台のように降りていき、海の中に飛び込むと、一目散にマシロに抱き着いた。


「私と探してここまで来てくれたの? ありがと~~~っ!! すっごく嬉しい!」


「きゅ~~~~ん!」


 再び会えたことに舞い上がっている一人と一匹を横に、カナたん・マユっち・ミヤぴーの三人は、目をぱちくりしながらその様子を眺めている。


「ねぇ、シロイルカが喋ってるよ……」


「うん……みいろんってば、ここ数日の間に凄く変わった子たちと仲良くなっちゃったみたいね」


「凄いよね……私だったら、あんな牙の鋭いサメ人間となんか、怖くて絶対仲良くなれないと思う」


「はいそこっ! 聞こえてるぞ! ボクはサメじゃなくてシャチなんだってば!」


 三人がひそひそ交わしている言葉を聞き逃さなかったクロムが、すかさずそう言い返していた。



「ねぇマシロちゃん、お願いがあるの。今すぐクラムタウンに行って、如月博士を呼んで来て。私の友達三人を保護してほしいんだ」


 深色はマシロにそう懇願すると、マシロは深色の周りをクルクル回りながら、「任せて! 如月博士、すぐに呼んで来る!」と言い残して、猛スピードで泳いで行ってしまった。


 それから深色は、ムーンテラピンの甲羅の上に居る三人に向かって声を投げる。


「三人とも! 今あの子が助けを呼んで来てくれるから、少しの間ここで待ってて。如月博士っていう、パレオに白衣姿の女性が助けに来てくれるはずだから!」


 深色の言葉を聞いた三人は、「パレオに白衣?」と互いに顔を見合わせ首を傾げるも、助けに来てくれると言われてホッと胸をなでおろし、「分かった~~!」と深色に向かって手を振った。


「でも、みいろんはこれからどうするの~~?」


 そうカナたんに問い掛けられ、深色は少し考えるように間を置いてから、答える。


「私は潜水艦『モビィ・ディック』を追いかける! あの潜水艦には『コロちゃん』っていう私の大事な友達が乗ってるの! ムーンテラピンから攻撃を受けて酷く傷付いているはずから、行って助けてあげなきゃ!」


「え――っ! あいつ、深色を殺そうとした極悪人なんだよ! どうしてそんな奴を助けなきゃいけないのさ!」


 クロムがすかさず反論するが、深色は聞く耳を持たずに言い返す。


「クロちゃんが来ないのなら、私一人で行く! だって、あの子を放っておけないんだもん!」


 そう言って、深色は超高速で水中を滑るように泳いで行ってしまう。


「ちょっ……もう待ってってば!」


 置いて行かれたクロムは、苛立ち気に地団駄を踏みながら海に飛び込み、深色の後を追いかけて海の中へ飛び込んでいった。



 ムーンテラピンの甲羅の上に残された三人は、深色とクロムを見送ってからも、心配そうな表情をにじませて、二人の行ってしまった方角をずっと見つめ続けていた。


「……みいろんって、教室で話してた時は、いつもどこかぼんやりしていて、何考えてるか分からないようなところがあったけど――」


「うん。……でも、あんなに真剣な表情をしたみいろんを見たの、初めてだよ」


「多分、それだけ必死なのよ。何せ、一国を守る海の守護神――そんな肩書を一人で背負っているんだから」


 三人とも、ミイロに対する思い思いの言葉を漏らす。


 ――この時、彼女たちの中にあった深色に対するイメージが、少しだけ変化していた。その変化がどんなものであったのかは分からないが、今回の出来事を通して、三人と深色の絆がより強固なものとなったのは、言うまでもないことだった。

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