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蒼海のアクアランサー ~槍に集いし海底王国の守護神たち~  作者: トモクマ
深度6000M 反逆者になるとか燃える展開じゃん!
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57.叛乱開始っ!

 ムーンテラピン最下層にある営倉前に、銀に輝く厚いアーマーを身に着けた兵士たちが一列に並んだ。その数、総勢二十名。全員の手には巨大なライフルが携えられ、腰には剣と片手持ちの銃を下げていた。


 重装備の精鋭部隊を集めさせたランド艦長は、部隊の前に立つと、警告するように声を上げる。


「いいか、狙うは生存者のみだ。アクアランサー殿はくれぐれも傷付けぬように。プラズマライフルは麻痺パラライザーレベルにセット。後は私が事前に伝えた計画通りに動くのだ。いいな?」


 艦長の指示に、重武装の兵士たち全員が頷きを返す。それから彼らは、かぶとと思しきヘルメットを被り、エアロックを作動させると、それまで部屋に溜まっていた海水が抜かれていき、室内は空気で満たされた。営倉へ繋がる扉が開き、艦長に続いて兵士たちが中へと入ってゆく。


 営倉の牢の中には、深色とクロム、そして深色のクラスメイトであるカナたん、マユっち、ミヤぴーの三人が居た。皆、営倉に兵を連れて入ってきた艦長を怪訝な目で見つめている。


「我が艦は人間の住む陸地の前に到着した。お約束通り、アクアランサーのお仲間であるお三方を地上までお送りして差し上げましょう」


 ランド艦長は仰々《ぎょうぎょう》しくそう言って礼をすると、兵士の一人に命じて、牢の扉を開けさせる。


「三人だけ、ここを出ろ」


 兵士の一人がそう命じると、周りの兵たちが手に持っていたライフルを三人へ向けた。非力な女子高生を相手に、どうしてここまで警戒されてしまうのかも分からないまま、カナたん、マユっち、ミヤぴーの三人はおずおずと牢を出る。


「待って、私たちも三人の見送りをさせて――」


 そして、牢の中に残った深色がそう声を上げようとした時だった。


 女子高生三人が牢を出たのを合図に、兵士の一人が即座に牢の扉を閉めて施錠してしまったのである。


「ちょっと! どうして私たちだけ――ぐはっ!」


 深色が牢の扉につかみかかろうとした時、待機していた兵の一人が、構えていたプラズマライフルを深色に向かって撃ち放った。高エネルギー弾は深色の胸に直撃し、吹き飛ばされて壁に激突、そのまま地面に崩れ落ちてしまう。


「深色っ! 大丈夫――あうっ!」


 倒れた深色に駆け寄ろうとしたクロムも、兵士の持つプラズマライフルに背中を撃ち抜かれ、折り重なるようにして倒れた。


「みいろん!」


 牢から出された三人は、倒れた深色を前に声を上げるが、兵士たちに囲まれ、腕をつかまれているせいで身動きが取れない。


「……やれやれ、これでやっと邪魔者を始末できるな」


 すると、ランド艦長が手を叩きながら、三人の前に歩み寄って来る。そんな彼に噛み付くように、カナたんが声を上げた。


「ちょっとアンタ! みいろんに何てことしてくれたのよ! 事情は聞かせてもらったけど、アクアランサーになったみいろんは、あんたたちから見れば神様みたいな存在なんでしょ? その神様に向かってこんな仕打ちして、罰当たりだとか思わないわけ⁉︎」


「あぁ、彼女なら心配はいらない、少し眠ってもらっているだけだ。――それよりも、君たちは君たち自身の身の心配をしておくべきだと思うのだが?……」


 そう言って艦長は指をパチンと鳴らすと、周囲を囲んでいた兵士たちが、三人に向かって一斉にライフルを構えた。


「……やっぱり、みいろんの言った通りになっちゃったね」


「ええ、そうね」


 周りを取り囲む兵士たちを睨み付けながら、ミヤぴーがささやくようにそう言うと、背中越しにマユっちが冷静に返事を返し、それから掛けている眼鏡を押し上げて、目の前に居るランド艦長に一つの問いを投げる。


「――数日前、私たちが乗っていた飛行機を、()()()()()()()()()()()()()()()は、あなたなのでしょう?」


「……………」


 マユっちの問い掛けに対し、暫しの沈黙が流れ――やがて、ランド艦長の口から、嘲るような笑い声が漏れた。


「くくっ……おやおや、もう既にバレてしまっていたとは、あなた方も相当頭のキレるお方のようですな」


「私たちじゃなくて、みいろんが推理してくれたのよ。あの子、いつもはおっちょこちょいで手に負えないけど、いざとなったら鋭い勘が働くの。私たちの友達を舐めないでほしいわね」


 ランド艦長に対抗して辛辣な言葉を突き返すミヤぴー。艦長は食って掛かるような三人の態度にイラついた表情を露わにしたが、それでも「ふん」と鼻を鳴らして胸を張り、三人に向かって言い返す。


「……まったく、人間というのはつくづく野蛮で愚かな生き物だ。このような状況でも尚、相手をけん制し、強情を張ろうとする。……だが、仲間であるアクアランサー殿が居なくては、貴様らも何もできまい。私がこの指を鳴らせば、すぐにでも貴様らを蜂の巣にすることができるのだぞ。いや、それだけでは手緩いな。貴様ら劣等種のために、こうしてこの部屋を空気で満たしていること自体もおかしな話だ。今すぐコントロールルームへ連絡して、この部屋を海水で満たすことだってできる。そうなれば、貴様らは溺れてもがき苦しみながら死ぬだろう。我々の前で醜態をさらし、無様に死ぬがいいわ」


 三人を睨み付けるその目に狂気の片鱗を露わにしたランド艦長に対し、抵抗するようにカナたんが声を上げる。


「力を誇示して相手をおとしめようなんて、あんたたちマジでサイテーね! 野蛮なのはあんたたちの方でしょ!」


「なっ……こ、この餓鬼どもめっ! 今すぐその無礼な口を閉じろっ!! さもなくば――」


 とうとう艦長が発狂し、怒りに震える手で指を打ち鳴らそうとした、その時だった。




「――さもなくば、どうするのかしら?」


「なっ……!!」


 銃に打たれ、それまで牢の中に倒れていた深色が、いつの間にか牢の扉前に背中を持たせかけて、ランド艦長に向かって軽くウインクを飛ばしていたのである。


「お話はぜ~んぶ聞かせてもらったよ。全く、艦長も酷いことしてくれたもんだよね~。……まぁ、その訳は後で聞くとして―――やっちゃえクロちゃん!」


「らじゃ~!!」


 深色が合図した途端、クロムが牢の扉に飛び掛かり、鋭い牙の並ぶ口を開いて、はまっていた鉄格子を全て嚙み千切ってしまったのだ。


「がお~~~っ! 野生のハンターとしての力を見せてやるっ!」


 クロムは牢から飛び出すと、その場に居た兵士たちをつかんでは放り投げ、蹴り飛ばし、踏み倒し、まるで大はしゃぎする子どものように暴れ回った。兵士たちは、暴れるシャチ人間に向かってプラズマライフルを打ちまくるが、麻痺パラライザーレベルのエネルギー弾を受けても、クロムの頑丈な皮膚には通じないどころか、ますますクロムを興奮させる一方だ。


「三人は隠れてて! ちょっと派手にやっちゃうから!」


 深色はクラスメイトの三人を引き下がらせると、クロムの加勢に周り、彼を狙う敵兵たちを片っ端から組み伏せ、なぎ倒していった。黄金三叉槍ゴールデン・トライデントは手元に無いものの、槍から与えられる力が全身に漲ってゆくのを深色は感じることができた。離れていても、槍と自分は一心同体。たとえ槍を奪われたとしても、その力までを奪い取ることはできないのだ。


 深色は敵兵のライフルから撃ち放たれるエネルギー弾を華麗なステップでかわしながら、兵の一人が持っていたライフルを奪い取ると、周りを囲んでいた敵兵たちを次々と撃ち抜いていった。撃たれた兵士たちは全員麻痺してしまい、口から泡を吹いて陸に打ち上げられた魚のようにピクピクしながら倒れてゆく。


「はいそこまで! 両手を上げなさいランド艦長!」


 とうとう兵士全員を再起不能にさせてしまった深色は、持っていたライフルを、どさくさに紛れて逃げようとする艦長へと向けて声を上げた。

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