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蒼海のアクアランサー ~槍に集いし海底王国の守護神たち~  作者: トモクマ
深度6000M 反逆者になるとか燃える展開じゃん!
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56.明らかになる真実

「あの飛行機事故がただの事故じゃないって、どういうこと?」


 深色がそう尋ねると、マユっちは体を起こしながら答える。


「見たのよ、私たち。――飛行機が墜落する瞬間、何か()()()()()()()()()()()が、主翼にぶつかる瞬間を」


「流れ星?」


「ええ。最初は本当に隕石か何かが当たったのかと思ったわ。でも青く光る隕石なんて見たことがないし、何より、隕石が()()()()()()()()()と思う?」


 マユっちの証言に、深色は顔をしかめた。すると、「嘘なんかじゃないよ!」と、マユっちの意見に賛同するように、カナたんが声を上げる。


「私、偶然だけど、流れ星が直撃する瞬間を手に持ってたビデオカメラで撮影していたんだよ。ほら!」


 そう言って、カナたんはずっと肩にかけていたボロボロの通学鞄の中から、チャック付きポリ袋に入ったビデオカメラを取り出した。


「カナたんそのカメラまだ持ってたの⁉︎ しかも、いつの間にか袋にまで入れてるし……」


「へへ、映画監督を志すからには、例え死んでもこれだけは離さないって決めてたからね。墜落してる間に、水に濡れても大丈夫なよう袋に入れてしっかり封をして、鞄に入れて胸に抱きかかえてたから、失くさなかったんだ」


「墜落してる間に⁉︎ あのパニックの中で普通無理でしょ! どんだけそのカメラ大事にしてるのよ!」


 ビデオカメラ一つのために命を賭けていたカナたんにミヤぴーが呆れて声を上げる。けれども、今回はそれが功を奏したらしく、カナたんの守ったビデオカメラに「流れ星」の衝突する瞬間がバッチリ捉えられているという。


 カナたんがカメラを起動させ、問題の動画を選択して映像を早送りする。


「ほら、ここだよ!」


 カナたんが声を上げ、早送りを止めた。途中まで深色たちが機内ではしゃぐ様子が映し出されていたが、やがて、機内の雰囲気は一変する。


『ねぇ……アレって何?』


 録音されたミヤぴーの声と共に、カメラが窓の外へズームされてゆく。


 青空の中を飛ぶ飛行機。下には一面の白い雲が広がっている。


 そんな雲の海からキラリと青い光が覗いて、見る見るうちにこちらへ近付き、光も強くなってゆく。


『何あれ……真っ直ぐこっちに向かって――』


 マユっちがそう放った刹那だった。眩しいほどに光を増した青い流星は、次の瞬間、飛行機の主翼に吸い込まれ、大爆発を起こした。


 衝撃でブレるカメラの映像。窓の割れる音、あちこちで上がる悲鳴。機内は大混乱に陥り、そこで映像は途切れた。


「……ね? 見たでしょ? あれはただの事故じゃない」


 決定的な証拠を突き付けられ、深色は言葉を返すこともできなかった。


「でも、あんな雲の下から昇ってくる流れ星なんて有り得ると思う?」


 ミヤぴーの問い掛けに、クロムを含めた一同が首を横に振る。


 しかし、深色だけは首を振らなかった。


「確かに、私たちの世界でなら有り得ないかもしれないけど……でも、海底ここでは別よ」



「――申し訳ありません。我が艦はアイギスの盾の旗艦であるモビィ・ディックを追い詰めたものの、あと少しのところで取り逃してしまいました」


 パトロール艦『ムーンテラピン』の館長室は、明かりが消されて薄暗かった。


 その暗い部屋の中を照らすのは、とある人物が映し出された立体映像ホログラムの青い光。映像には、分厚いローブを見に纏い、フードを被った怪しい男が映っており、その男の前で、ムーンテラピンの艦長であるランド・キルドールが膝を突き、こうべを垂れていた。


『取り逃しただと? 貴様ほどに執念深い男がみすみす取り逃すなど有り得ん話だ。さては何か事情を抱えているな。遠慮はいらん、話せ』


 フードを被った男は、ランド艦長に取り逃した理由について問う。


「はっ、我が艦は道中、危機に遭い怪我を負っていたアクアランサー殿を拾い、客人として我が艦にお乗せしておりました。ですが、モビィ・ディックを発見し追跡する途中、アクアランサー殿が突然進路変更しろと騒ぎ始めまして」


『進路変更? 一体どこへ向かえと?』


「付近に存在する小さな無人島です。そこにアクアランサー殿のお仲間が遭難していたらしく、救助したいと…… しかし、モビィ・ディックを目の前にして追跡を中止するわけにもいかず、そんなことをする猶予はないと断りを入れたのですが、脅迫まで受けてしまい、進路変更せざるを得ず、それで追跡中止を――」


『アクアランサーの仲間が遭難していただと? ……まさか、()()()()を実施した際に、まだ奴らの中に生き残りが居たとでもいうのか………だとするとマズいな。生存者がもしあの時の目撃談をアクアランサーに話せば、彼女に勘付かれてしまう可能性もある』


 フードの男は、深刻そうに眉をひそめ、低い唸り声を上げた。


「現在、生存者たちはアクアランサー殿と共に営倉へ隔離しておりますが、一体どうすれば……」


 困惑するランド艦長を前に、フードの男は少し迷った後に、彼に対して命令を放った。


「よし、アクアランサーを連れてそのまま帰還しろ。ただし、生存者たちは全員生かして返すな。アクアランサーに()()()()がバレる前に始末しろ」


「はっ、直ちに」


 ランド艦長は命令を聞くとその場に膝を突いたまま、深く礼をした。フードの男との通信が切れ、男の姿が映写機から消えると、艦長は立ち上がって、背後に控えていた上官に声をかける。


「直ちに精鋭部隊を招集。営倉前に待機させておけ」

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