表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/71

序言 雨のあとには

 1999年6月のある日。

 この日は突然の豪雨に見舞われた。空が急に暗くなる。青空を灰色の闇が覆い尽くすようだった。世間では7月に世界の終わりがやってくるという噂があり、まさにその前触れ、とまで言うとちょっと大袈裟だが、近年稀に見る激しい雨だ。

 その雨を4歳になるかならないかくらいの女の子が、大きめのスーパーの入り口に立って眺めていた。髪の毛は肩ぐらいまであり、前髪は眉毛が隠れるくらいの長さだ。

 どうやら親とはぐれてしまったらしい。迷子のようだ。女の子は泣くこともできず、ただただ雨を眺めている。その時間は10分以上だ。子供にとっての10分は大人にとっての何倍もの時間に匹敵する。

 その顔は空と同じくらい暗い。大人たちは誰一人声をかけることなく彼女を通り過ぎていく。風が吹く。冷たい風だ。雨が女の子に降りかかる。寒い。そんな時だ。


「こんにちは」


 女の子は後ろを振り向くと、自分と同じくらいの年齢の背の高いおかっぱの女の子がニコニコしながら立っていた。


「私、まいご! あなたは?」


 女の子は自分の名前を聞かれたと思い、雨音に掻き消されそうなほど小さな声で答えた。それを聞いたか否か、笑顔の女の子は一方的に話し始める。


「元気の出る言葉、教えてあげるね!」


 笑顔の女の子はよくわからない言葉を元気な声で言った。日本語にない様な響きだ。もちろん、暗い顔の女の子は意味を理解していなかった。


「何それ?」


「わかんない!」


 笑顔の女の子は大きな声で言った。周りの人の視線が二人に集まる。暗い顔の女の子はびっくりして一歩引く。そして、笑顔の女の子はさよならも言わずにお店の中へと消えていった。

 こんなやりとりをしているうちに雨は止んでいた。一人取り残された女の子はさっき教えてもらった言葉を呟く。

 何故だろうか。不思議と身体が温かくなった気がした。すると、女の子はあるものに気づく。


「わぁー!」


 空に大きな綺麗なものが現れたのだ。さっきまでの暗い顔が嘘ように明るい笑顔になる。そう、まるであの女の子のように。

 笑顔になった女の子は、後ろから自分の名前が呼ばれたことに気がつく。聞き慣れた声だ。女の子はすぐに後ろを振り返る。


「お母さん!虹が綺麗だよ!」


 きっとあの言葉は魔法の言葉なんだ。幸せの魔法なんだ。あの子はたぶん虹の天使だ。また会えるといいな。

 きっとまた会えるよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] プロローグが凄く可愛らしくて素敵です。 「クルシイナァァァァァァァ」ノリが好きなアニメに似ていて楽しみ。でもダークファンタジーなんですよね。そこがちょっと不安で、同時に期待も高まります。ダ…
2021/02/04 21:11 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ