どこにでもいる付与術師の俺が、大魔王を倒す為に伝説の剣を作ってみた。
人気のない宿屋の一室。
ここには今、俺とエルフの女の子……ミリアの二人っきりしかいない。
宿の人間には金を渡して、近づかないように言ってある。
もちろん、これからすることがバレないようにするためだ。
「じゃぁ、始めるか。」
俺はミリアを見つめてそう言うと、ミリアは少し怯える様に身体を小刻みに震わす。
「ほ、本当にするんですか?」
「今更何を言ってるんだ?お前も乗り気だったじゃないか?」
今になって怖気ついたのか、ミリアの声が震えている。
「あの時は、その……。でも私、こういうの初めてで……。」
「大丈夫だよ、ミリアは俺の言うとおりにしていればいい。」
俺はミリアの肩に手を回し優しく告げる。
「……わかりました。優しくしてくださいね。」
◇
「アッ、ダメっダメですぅ!」
「大丈夫だよ。」
「だ、ダメですっ。そんなに強くしたら……アッ。」
「くっ……きついな。」
「ダメっ、ダメですぅ……あぁ……壊れちゃうー。」
ミリアが、ダメ、ダメと首を振るが、ここまで来てやめられるか。
俺は穴の場所を確認すると、力一杯押し込んだ。
「あぁぁぁぁーーーーーーーー。」
ミリアの悲鳴が部屋中に響き渡る。
◇
「ダメって、ダメって言ったのにぃ。」
目じりに涙を浮かべて、責めるようにミリアが言う。
「いや、行けると思ったんだよ。」
「どこがですか!どう見てもムリじゃないですか!」
ミリアが指さす先には、割れてしまった魔石の残骸が残っている。
俺の手に持っている剣の柄には魔石をはめ込む穴をあけてあり、そこに無理矢理押し込んだ結果だった。
「やっぱり、この剣の強度に対して、その魔石じゃ無理だったか。」
「そもそも、普通の剣を『伝説の剣』にしようとしたのが無理があるんですよ。」
俺のつぶやきにミリアが応える。
「計算上では、これで行けるはずなんだけどなぁ……今度はもう少し質の高い魔石を使うか。」
そう言って俺はミリアの胸元を見る。
俺の視線に気づいたミリアが、さっと両腕で抱きかかえるようにして胸元を隠す。
「ダメ、この石はダメです!」
「大丈夫、今度こそ成功するからさ。」
「信じられません……イヤぁぁぁぁ……。」
俺は魔石を取り上げようと、ミリアに襲い掛かり、室内にはミリアの悲鳴が響き渡る。
伝説の剣の完成までは、まだまだ時間がかかりそうだった。
※ 下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ対象応募作用に考えたショートストーリーです。
人気があれば、この設定の本編を書いてみたいなとも考えていますが、とりあえずは現在連載中の作品の応援よろしくお願いします。