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残念世界の残念勇者   作者: XT
54/96

ループワールド・勇者ケイン編 54

ーーーーパルム達が居る、林の中ーーーー

「ああああああああ」

頭を抱えるノスフェラトゥ。

「凄いわ坊や。あんな戦いもできるなんて」

「ああ、俺たちもウカウカしていられんな」

「あああああああああ」

我が子の成長に目を輝かせる、パルムとセシル。が、その横では、ノスフェラトゥが悲痛の声を上げていた。

「なによ、さっきから。どうしたと言うの?坊やが勝ったのが、そんなに悲しいの?」

気を悪くしたセシルが、ノスフェラトゥに言う。

「価値が跳ね上がってしまった。あの強さに加え、天界実力者との結びつきで、彼の価値は、算出不可能なほど跳ね上がったんだよ。さっきまでなら二束三文のチームが、どれだけ巨額になったか・・・」

「俺たちの所へ来い、と、気楽に誘えなくなったわけだな」

「その通りだ。こんな事なら、金銭トレードでも持ち掛けるべきだったよ。そもそも、君たちが、親だと言う事を打ち明けて居れば・・・。いや、先の戦いで勝ってさえいれば・・・」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ノスヘラトゥの愚痴は延々と続いた・・・。



ーーーーー天界 悪だくみルームーーーー

「・・・・・・・・・・・・」

「あらら。まさかの大勝利だね。僕びっくりだよ」

開いた口が閉まらないリリスと、目を丸くするギルバ。

「僕さ、すごく不味いことになる気がするんだよね」

「・・・・・・・・・・・・・」

「部長?ちょっと!しっかりしてよ」

「・・・あ!ああ。どうやら夢を見ていたようだ。寝てしまったか」

「気持ちは分かるけど、現実見ようね」


「まさか、あいつらが、こんな戦いをするとは・・・」

「僕も予想外だよ。でも、これって不味いよ」

「不味い?何がだ?今回は金をかけていない。失うものはない」

「違うよ。これが全世界放送と言う事だよ。あんな強いチーム。しかもヴィーナス家のお抱え宣言だよあれ。そんなチームの相手なんか、裏の連中が出来る訳ないよ。依頼は間違いなく断られるね」

「ヴぁ!」

「今依頼してる、裏トラ警備隊も、たぶんキャンセルしてくるよ。それどころか、相手の強さを偽ったって、違約金を要求してくるかも。表ざたにできない私たちは、違約金、払わざる得ないよ」

「ぐはぁぁ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

リリスのHPと預貯金額が減った。


ーーーーーー天界ヴィーナス家ーーーー

「ほよよ。言っちゃったのかな」

「まぁ、あの場は、仕方ありませんね。女神が下界民に膝間ずくなど、あってはならない事です。エクセレントも咄嗟の事ですから、よく胡麻化したと、褒めるべきでしょうね」

二女ビューティーとヴィーナス。

「ティナちんが、どうしたものかな?」

「ケインさんの相手なら、2号でも3号でも、あの子は気にしないはずです。むしろこれは、ヴィーナス家としては喜ばしいことですね」

「恋に身を燃やし、愛に身をゆだねる。家訓通りかな?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

親、姉妹は、重婚をまるで気にしていなかった。




「2号は、ティナでいいかだぞ?」

奥さん、真面目に言ってます?

「私は良いぞ。前から言っているぞ。ケインが私を好きであれば、嫁が何人いても良いぞ」

「カモミール的には、一夫多妻が主流ですわ」

「パパ!3人目は、たぶん私だから」

「よし、この際だから、義母と娘も嫁にしちゃうぞ」

平然と凄いこと言いだした。



魔王を倒した俺たちは、すぐにカモミールへ戻った。

翌日から、怒涛の如く取材の要請を受けたが、アイリスが入国許可を出さなかったおかげで、俺は平穏な生活を送れていた。

「もう3日たつのに、ティナが来ないのが変だぞ」

あんなことを言われたら、恥ずかしくて来れなくなるんじゃないか?

「姉と大喧嘩してるんだよ。それで来れないんだよ」

アリッサの読みも、いい線だ。

「バカ言うなだぞ。ティナはケインが大好きだぞ。全世界公認ともなれば、喜んでパンツ脱ぐぞ」

何故脱ぐのか、意味不明だ。


「でもケイン、いい事ばかりではないぞ。エクセレントは1つ、大きなミスをしたぞ」

???

「ですわね。チームと言ってしまいましたわ」

「ダメなのか?」

「私たちは、事実上ヴィーナス家のお抱え勇者チーム、と言う事に成るぞ」

「ヤバいね、それ」

みんな分かってるようだが、俺には今ひとつピンとこなかった。

「私たちの失敗や失態が、全部ヴィーナス家の評価につながるんだぞ」

「あ!」

「今後は、嫌でも世間の注目を集めますわ。私たちの一挙一動が、報道されますわよ」

「パパ!隠れてエロ本も買えないよ」

エロ本の購入は無いが、失態には自信が無い。

色々やらかしてしまいそうだ。全員に注意をしないと。


「ケイン!大変だ!」

「TVよTVを見てみて」

レナ!?セレス?どうした?

2人が慌てた様子で駆け込んできた。

アリスがTVのスイッチを入れる。


「こちらアトランのルーン神殿です。ルーン像の横に、新たな女神像の設置が始まっています。あ!関係者の方がいます。訊ねてみたいと思います」

レポーターが、マイクを向ける。

「スミマセン、関係者の方でしょうか?」

「インタビューでござるか?良いでござるよ」

トーレフ!なんでお前が!

「これは、ターナ像でござるよ。拙者は建造と設置を依頼されたでござる」

ござるじゃないだろ!


「天界は、一つの世界に女神一人の唯一神方針だぞ。ターナが割り込んだら大問題になるぞ」

「ママ!見て!ターナさんだよ」

ターナがカメラに向かって歩いてくる。ハウルも一緒だ。

「ハウルの後ろにルーンも付いてきてるぞ」

レポーターがすぐさま、ターナ達に駆け寄った。


「ターナさん、女神像の事で、一言お願いします」

「ルーン。説明しろ」

ターナに変わって、ルーンがマイクに向かって話し出す。

「私は、ターナ様のターナ教に入信いたしました。私の神殿に、私が信じる方の像を置くことに、何か問題でも?」

大問題だ。

「女神が新興宗教に落ちたぞ」

「女神が入信って、前代未聞です。司教であるターナさん、一言!」

「信仰するなら、金をくれ」

何もかも終わりそうな一言だ。


「ケインさん」

あ、エクセレント。

「私の発言で、ご迷惑をおかけしてしまって・・。ティナの事でご相談があってきました」

いや、今はそれどころではない。

「TV見てないのかだぞ?ターナがやらかしてるぞ」

「はい。知っています。アトランのターナ像ですよね?」

「あれ、不味いよね。ターナさん死刑に成るのかな?」

アリッサ・・物騒な方向に向かうな。


「ケインさんもご存知のように、女神の質は落ちています。ディーバのような女神が、増えているのです。これは唯一神制度のせいです」

ディーバ。ここで思い出すとは思わなかった。

俺の嫌い女神ランクダントツの一位の奴だ。

「そして民は、女神を選べません。能力が低い女神の担当世界は、よくない方向に向かいます。これは以前から問題視されていた案件です」

「ターナを当て馬に使う・・と言う事か?」

「言葉は悪いですが、その通りです。唯一神を良いことに、胡坐をかく女神たちに、鉄槌を振るいます。ルーンはターナさんをリスペクトしています。ターナさんも女神を蔑ろにする方ではありません、この二人なら、上手く競い合ってくれるはずです」

「なるほどですわ。ターナさんなら適役ですわ」

「新興宗教に落ちた女神と、金欲女神だぞ。アトランの民の選択肢が悲惨だぞ」

「アトランは、新しい形のモデルケースとして、16評議会でも承認済みです。間もなくアルテミスが、記者会見を開き説明します」

「パパ!ターナさん死刑にならないで済んだんだよね?よかったね!」

パパは、よくない事が起りそうな予感がする。


「ケイン、このターナ像、凄いぞ」

TVを見入っていたレナとセレスが、ターナ像について説明してくれた。

「これは、単なる像ではない。むしろロボットと言うべき兵器だ」

「ええ、魔道エンジン搭載よ。各種武器も装備しているわ」

それでトーレフが居たのか。

「AIによる制御ではないが、戦力は30万うププある。以前のセイレーン並みだ」

「ちょっとした敵なら、これだけで十分守り切れるわね」

「ターナさんのアイディアで、戦える女神像『マジンターナ』と言う事です。頭部に操縦席があり、オプションで空も飛べるようです。

女神は戦えませんが、ターナさんは戦える方なので、防衛には使えそうです」

好き勝手だな。

「・・・いいかもだぞ」

おい。なに目を輝かせている。

「基地も作るぞ。秘密基地を作って、指令室にするぞ」

「モデルケースとして承認があります。アトランは、皆さんのお好きなように使って構いません」

アリスがガッツポーズをした。



「で、ケインさん!ティナの事です!困っています」

俺とのことだよな?

「そうです。TVを見たティナは喜びました。嬉しさのあまり、派遣先でパンツを脱いで、旗にして振り回すという暴挙に出ました。しかし、私が戻り、胡麻化すための詭弁だと説明すると、今度は落ち込んでしまい・・」

「分かりますわ。喜びから、突き落とされた衝撃は、凄まじいものですわ」

「で、今落ち込んでいるのか?」

「いいえ。心の葛藤があったようで・・」

葛藤?

「真面目なティナと、お気楽のティナによる葛藤です」


「大丈夫ティナ。ケインさんは可愛いティナが大好き」

「はい。私もそう思います」

「何をお気楽なことを。分かっているのティナ?ケインさんにはアリスさんが居るの。貴方が割り込んで、お二人に何かあったらどうするつもり?」

「はい。ごもっともです」

「カモミールは、一夫多妻だから、アリスさんは気にしない。可愛いティナに愛されて、ケインさんも大喜び」

「はい。一夫多妻万歳です。可愛い私は妻に最適です」

「ティナ、あなたは良くても、迷惑するのはアリスさん達よ。それにアリスさんは最近、お尻も開発したらしいの。あなたにお尻でご奉仕できるの?」

「はい。おっしゃる通りです。私には無理です。また切れてしまいます」



「まぁ、こんな感じの、脳内3者会議が、3日ほど続きましたが、結論は出ず。今は精神がやられてしまい、庭で蝶々を追いかけています」

自分会議で可愛いとか凄い自信だな。

「ケインさん、どうか結論を。今のティナでは、ごみの役にも立ちません」

結論と言われてもな・・・。

「俺は重婚に抵抗がある。まだ一夫多妻に慣れていないし、何より、重婚をすることで、少しでもアリスに寂しい思いをさせたくない」

「パパ!キュンと来たよ」

「私も、ジュンと来ましたわ」

「私なんか逝っちゃったぞ。凄い殺し文句だぞ」

「とは言え、状況が許される中で、断ることは、俺自身に嘘を付くことに成る。実際、アリスと出会わなければ、俺はティナに・・・」

アリスに配慮しながら、本音を言うのは難しい。


「分かったぞ。ケインの気持ちはよくわかったぞ。うれしいぞ。ケインに変わって私が結論を出すぞ。

この縁談受けるぞ。ただ、結婚は5年後だぞ。お互いに気持ちが変わって無ければ、5年後に結婚を許すぞ」

あんたは俺のパパか!

「なるほど、いい考えですわ。婿殿も5年で一夫多妻に慣れればいいし、女神のティナ様にとっては、5年などアッという間ですわ」

「ティナは3号だよ。それまで私が2号で、パパに一夫多妻を慣れさせてあげるよ」

アリッサは、俺の娘の守備位置を一生キープだ。


「分かりました。婚約OK、籍は5年後ですね。ティナに伝えます」

ああ、頼んだ。

本来なら、男の俺から言うべきなんだがな。

「いいえ、今のティナをお見せしたくありません。あり得ない程、間の抜けた顔で蝶を追いかけています。私から伝えた後、ケインさんにお任せします」

エクセレントは戻って行った。

ターナの方も問題にならないようだし、ハッピーエンドだ。

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