第一話 楽しいはずの旅行
初投稿となります。
ラノベ好きが高じて投稿してみました。
ここ数年、外国人が日本に驚愕して褒める様なテレビをよく見かけます。
私はそれ系の番組が好きで、どうしても見てしまうのですが・・・。
本作にて、異世界で似た様な面白さに出来ないかと考えています。
保険でR15設定にさせていただきました。
よろしくお願いいたします。
2018/11/09 内容を修正しました。
薄く雪化粧をした針葉樹に囲まれた川。
川の流れは一切見て取れず、空の景色を綺麗に反射している。
静寂に包まれいたその森の中で絶叫が木霊した。
「――っあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーー」
もがき苦しむ者の顔は、皮が落ちて肉が溶け出している。
鼻も目蓋もなく、左目が落ちていた。
右腕や左腕も関節から落ちて溶けている……。
上着の間からは内臓が顔を出していた……。
その者はただ、叫ぶことしか出来なかった。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァーーーー!!!!」
本日、3度目の死の予感に不運を感じ、海外旅行にさえ行かなければ…… と、彼は過去の自分を恨むのであった。
――――
俺は、結希一也ユウキカズヤ、36歳だ。
大手会社の下請けのシステムサポートとして10年間文句も言わずに働いていたが、10年目で大きな失敗をした。
それを切っ掛けに仕事に手を付けられない精神状態に陥ってしまい、見かねた上司からの指示で、1ヶ月の有給を取ることにしたのだ。
しかし、急な有給で趣味を持たない俺は何もすることがなかったため、『○さんのダーツの旅』を真似して、地図に向けて画鋲でダーツもどきをやってみた。
そこで刺さったのがスウェーデンだ。
刺さった時、迷いはしたが、取り合えずスウェーデンに行ってからその時の気分で旅行をしてみるのもいいだろうと思い飛び立ったのだ。
俺は今、スウェーデンの凍った川を前にして、スケート靴を履いている。
スウェーデンに着いて早々、やることが見つからなかったため、昔動画で憧れた光景をやってみようと思った次第だ。
ここに来るまでは大変だったが、全てはジェスチャーと片言の英語で何とかなった。
辺りは針葉樹に囲まれた森で、薄く雪が被っている。
周りには人はおらず、大自然に囲まれた静寂。
晴天の冷気が清々しくとても気持ちがいい。
ビルや家に囲まれた生活で自然を暫く見ていなかった俺は、感動に打ち震えた。
このまま帰ってもいいんではないだろうかとも思ったが、折角なので意を決して滑ることに決めた。
スケートは小学校と中学校のときに遊びで何度もやっていたが、久しぶりなので緊張する。
目の前には川があるが、水の流れは見られず、黒い漆器の様な美しさで周りの景色を反射しつつも、うっすら底が見える。
自然に出来た氷の上を滑るのは、初めてで氷が割れないか今になって不安になってきた。
不安になったので、また暫く景色を堪能。
ざらつきのない凍った川が空と木々を反射して幻想的だ。
「よしっ!」
暫く心を落ち着けたところで、意を決して氷の上に載ってみる。
ミシミシという音はなるが割れる感じはない。
「大丈夫だよな……?」
そう呟きつつ、予想以上にツルツルで綺麗な路面を、川の道なりに滑り出してみた。
通常のスケートリンクとは違い、ゆっくりとした下り坂が所々にあるが、それはそれで面白い。
雪のためか、周りからの音は聞こえず、自分の奏でる氷の音しか聞こえない。
この森全てが自分専用の貸切スケート場のようだ。
(来て良かった!)
そう思い始めた頃、気分がのってきたので、フィギュアスケート選手をイメージして、半回転のジャンプをしてみた。
因みにジャンプは初めてである。
当然、こけて尻餅を付く結果になると考えていたが、見事に後ろ向きで着地が成功した。
(あれ? 俺スケートうまくなってるんじゃね?)
と、思ったのも束の間、後ろ向きでの滑り方がわからない。
更に正面に向き直す方法もわからず、尻餅をついてこけてしまった。
「いてー!」
尻を摩りながら立ち上がるが、テンションが上がっていることもあってか思いの他痛くはなく、楽しい。
半回転だからダメだったのかもと思い、今度は一回転のジャンプに挑戦してみる。
軽く助走をつけて、両手を右から左に大きく振ってジャンプ!
「あれっ?」
特に着地の感覚がない。
瞬間、凍える冷たさを感じ水中であることに気付いた。
氷を割って落ちたのだと理解するのに1秒程かかった。
「ヤバイ!!」と思って、慌てて地面に立とうとするが、地面に足が付かない。
かなり深いところに落ちてしまったようだ。
(――これっ、マジでヤバイ!!)
直ぐに穴に戻れば何とかなると最初は思っていた。
しかし、これは数十秒で体が冷え切り、動かなくなると直感した。
水が冷たいというより痛いのだ。
周りを振り返り、落ちた穴を探すが少し流されてしまったのか、2m程離れている。
平泳ぎで穴に向かうが、たった2mなのに全然近づかない。
むしろ流されてどんどん穴から離れていく。
焦って上の氷を叩き割ろうをするがビクともしない。
外の景色が見えているのに、出られない。
そうしている間に、穴が更に遠ざかっていく。
「やばいやばいやばいやばい死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ――っ!」
穴に落ちてものの10秒程度で打つ手がなく死の予感しかない。
既にあまりの冷たさにより、体が動かなくなってきていた。
そんな時、下流で何かが光ったように見えた……。
直ぐに異世界へ転移させる予定でしたが、思いのほか現代の話しが長くなってしまいましたので
まとめて3話分を投稿致します。
感想、評価をお待ちしております。
よろしくお願いいたします。