第4話:ボクっ娘少女とパーティ結成
1
「男成分が欲しい」
ミナミとシュガーは、目を丸くして、こちらを見つめた。
「何ですか、お兄ちゃん。BL体質にでも目覚めたんですか?すいませんが私、そういうの興味ないんで」
「不健全、よくない」
「いや、そういう意味ではなく…」
こいつらは、とんでもない誤解をしていたらしい。まあ、あの言い方だとされてもおかしくないのだが。
「改めてお前らに聞く。今俺たち三人に、足りないものがあるとすれば、それは何だ?」
二人は、しばし考え込むと、先にミナミが声を上げた。
「お兄ちゃんの、私への積極性!」
「はーい、他にないかー」
「ちょ、スルーは良くないですよー!?」
ミナミを完全にスルーし、二人に呼びかける。すると、またもやミナミが声を上げた。
「貴族令嬢!」
「さっきよりまともになったけど、それじゃない」
「むぅ、ちゃんと考えたのに…」
「わかった」
すると、今度はシュガーが声を上げた。こいつなら、結構考えてたし、ミナミよりかはまともなことを言いそうだ。
「お金」
「確かに、それは俺たちには必要だけど!」
「じゃあ、何が必要なんですか?」
「うんうん」
二人は、結局何も俺の言いたいことがわからなかったらしい。仕方ない、もう答えを話すことにしよう。
「仲間だよ!男の仲間が欲しいんだよ!」
「お兄ちゃん、やっぱりBLに…」
「だから違う!いいか、俺が言いたいのはな、疚しいことは何一つなく、ただの男の仲間が欲しいんだよ!話し相手として!」
俺の切実な願いに、ミナミが質問してきた。
「なんでですか?話し相手なら、私たちがあるじゃないですか」
「いや、シュガーは良いとしても、同性の話し相手が欲しい」
「ヒドい!!」
ミナミには申し訳ない気もするが、実際その領域まで来ている。
「それに…」
『それに?』
俺の言いかけた言葉を、繰り返すように二人が声を被らせた。
「お前らロリだし」
…。
しばしの沈黙の後、二人は俺に襲いかかって来た!
「ミナミ、私がユウマ抑えてるから、思いっきりやっちゃって…!」
「シュガーちゃん、ちゃんと抑えててくださいよ!」
「ちょ、お前らやめろ!」
その言葉も耳に入らないのか、ミナミは拳を固め始めた。
「私、年齢お兄ちゃんと一つしか違いわないんですよ!?」
「私なんて、もっと年上なのに…!」
「うるさい、見た目ロリなら全員ロリなんだよ!文句があるならもっと成長して出直してこいグハァ!」
言いかけたところで、ミナミの腹パンが飛んで来た。
前回は、防具を付けていたから良かったものの、いや、あれも十分に痛かったが、今回のは比にならない。ばったりと床の絨毯に崩れ落ちる。
「何か言いたいことは?」
「すいませんでした…」
「ユウマ、今度は私も殴る。魔法で」
「いや…それ殴るじゃなくてただの魔法じゃん…」
「とにかく、今度言ったら容赦しませんからね!」
いや、今の完全に容赦してなかっただろ!実際、一つしか変わらないとはいえ、兄が妹のパンチで床に崩れ落ちたのだ。
「はい、本当にすいませんでした…」
俺は、しばらく傷を慰め、痛みが引いてからまた新メンバーの条件について話し出した。
少々脱線したが、完全に自業自得なので触れないでおく。
「あと、出来れば前衛が良い。俺一人じゃ心細いからな」
「うん、ユウマが言いたいこと、なんとなくわかった。それに、もう一人増えたらパーティが結成できる」
俺の言いたいことが伝わったらしいので、良かった。こいつは、以外と話がわかるのかもしれない。
…って、あれ?
「なあ、シュガー。俺たちってパーティじゃなかったのか?」
「そうだったんですか?結構一緒に居ますけど」
俺とミナミの質問に、シュガーが答えた。
「うん、パーティ結成には、最低四人が必要。ギルドカードのパーティの欄も、空白でしょ?」
シュガーに言われた通り、ギルドカードを見てみると、確かに空白だった。
「確かに、空白だな。でも、あと一人どうやって集めるんだ?」
「ギルドの中に、パーティメンバーを募集する掲示板があるんだけど、そこに条件を書けば良いんだよ。年齢とか、性別とか、役職とか」
ほう、結構絞れるんだな。
「でも、それを見た人がもし俺たちのパーティに入りたいってなった時はどうするんだ?」
「その時は、受付嬢の人が知らせてくれる。
心配ない」
そうか、この機会にもう一人勧誘して、パーティ結成と行こう。
「よし、じゃあとりあえずギルド行くか!」
「はい!」
「おー」
俺の呼びかけに、二人が返した。
さて、いざパーティ結成だ!
2
イグラットのギルドにて、俺たちはパーティメンバー募集の張り紙を作成していた。
「えっと…こんな感じでどうだ?」
俺は、一通りの条件を書き終えた。条件としては、『役職:前衛・年齢:15〜18くらい』と、こんな感じだ。
「うーん、ここに貴族令嬢が欲しいですね…」
「それだと絶対集まらないだろ!見つけるのに何年かかるんだよ、それ!」
「ミナミ、もっと現実見たほうがいい」
「シュ、シュガーちゃんまで…」
シュガーは味方をしてくれるとでも思っていたのか、ミナミはかなり落ち込んでいる様子だ。
「じゃ、ミナミ。これを受付まで持って言ってくれ」
「はいはい、持っていけばいいんでしょー持っていけば」
「おう、よろしく頼む」
ミナミは、わざとらしくため息をつきながら受付まで歩いて行った。
「ユウマ、コミュ障」
「それは自分でも自覚している」
そんな会話をシュガーと交わしていると、ミナミが帰って来た。
「うー、なんで私がこんな雑務を…」
「雑務というな雑務と」
「でも、雑務みたいなものじゃないですか。
こんなの…」
まぁ、その理由としては、俺が他人と話すことが苦手なとこにあるのだが、ここは適当な口車に乗せておこう。
「あのな、ミナミ」
「何ですか…?」
「俺がお前に接客を任せるのは、お前がそれに匹敵する信頼関係を持ってるからなんだよ」
「お、お兄ちゃん…!」
よし、食いついて来た!あとは適当に丸め込めば…!
「俺は、たった一人の妹として、お前を信頼して接客させてるんだ。これからも、受け持ってくれるか?」
「私が間違ってました!お兄ちゃんがそこまで私のこと信頼してたなんて知らずに、わたしは雑務を押し付けられたなんて勘違いを…」
「いいんだよ…わかってくれれば」
「お兄ちゃーん!一生ついていきますー!」
「チョロいな…」
「ユウマ、悪党」
シュガーの言葉を、俺は聞かなかったことにした。
3
あれから2日後、どうやら俺たちのパーティに入りたい奴が現れたらしく、俺とシュガーが出向くことにした。
ミナミと一緒にすると、「えー貴族令嬢じゃないんですかー?」などと失礼なことを言う可能性があるからである。
待ち合わせは、ギルドの酒場付近ということになっているのだが…。
「なあシュガー、本当に来てくれるのか?その俺らのパーティに入りたいってやつは」
「入りたいからここで待ち合わせてる。それに、場所指定したの向こう側」
「ま、まあそうだな。…き、緊張するな…」
「ユウマ、コミュ障」
「お前のそれ、口癖なのか?ほぼ毎日聞いてるんだけど」
そんなことを話していると、一人の青年がこちらに向かって歩いて来た。
「あ、あの人かも?」
「え、まじかよ!?ま、まだ心の準備が…」
新しい仲間になるとはいえ、初対面だと緊張するものだ。まあ、俺は常人の何倍も緊張すると思われる。
「ねえ、君たちがパーティメンバー募集してた人?」
「あ、はいぃ!?」
「ユウマ、コミュ障出てる」
俺は緊張のあまり、声が裏返ってしまった。
「う、うるさいな。初対面で緊張したんだよ…」
「ね、ねえ、立ち話も何だし、座って話さない?」
「え!?あ、あぁそうですね。す、座って話しましょうか…」
緊張が解けず、思わず敬語になる。ぎこちないまま酒場の一席に座る。俺の横にシュガー、前に青年という配置になった。
「では、改めて自己紹介するね。僕の名前は、ルキア・エリエル。ルキアって呼んでよ。役職は剣士。よろしくね」
「あ、自己紹介!?お、俺の名前は、イリヤ・ユウマ。ユウマって呼んでもらえたら…役職は、剣士…」
「私の名前は、シュバリエむぐっ!?」
俺は、シュガーの口をとっさに塞いだ。
(な、何するの、ユウマ)
(お前はバカか?仮にも魔王の時と名前一緒なら、偽名使え偽名!)
(確かに一緒だけど…わかった。偽名使う)
「あ、あの、どうかした?」
俺たちの小声で会話していると、ルキアが訪ねて来た。
「いや、なんでもない。私の名前はシュガー。魔法使い。よろしく」
「うん、よろしくね。ユウマ、シュガー」
良かった。なんとか気付かれずに済んだようだ。こいつの正体がバレたら、きっと大混乱になるに決まっている。
「あ、あぁうん。よろしく」
これで、仲間にはなってくれたのだろうか。パーティ結成だ!俺は心の中で、ガッツポーズを決めた。いまは、かなりテンションが上がっている!
「ところで、君たちって二人だけなの?」
「いや、もう一人居るんだけど、いまは宿で待ってる」
「そっか、その人にも挨拶しに行ってもいいかな?」
「い、いやでも、少し失礼なこと言うかもしれないけど…」
「失礼なこと?」
ルキアの質問に、シュガーが答えた。
「例えば、貴族令嬢じゃないとか」
「ど、どういう意味…?」
「とにかく、今から連れてくるから、シュガー。お前はルキアと一緒に居てくれ」
その場を立ち退こうとした俺に、シュガーが訪ねて来た。
「うまくやれる?」
「うまくやるよ、なるべくな…」
4
あれから、宿に一旦戻ってミナミを説得していた。案の定、「貴族令嬢じゃないんですかー!?」と喚いていたが、なんとか説得して酒場に帰って来た。
「お兄ちゃん、本当にこの人が新メンバーなんですか?」
「あぁ、そうだよ。俺たちの仲間になるって言ってくれるんだから、ありがたく思え」
ミナミは、少々不機嫌だったが、なんとか割り切ったようで、自己紹介を始めた。
「私の名前は、イリヤ・ミナミです。こちらにいる、イリヤ・ユウマのたった一人の信頼ある妹です。役職はプリーストです。よろしくお願いします」
「そっか、よろしく、ミナミ。僕はルキア・エリエル。ルキアって呼んでよ。君たち兄妹、仲良いんだね」
本来ならただの褒め言葉だが、ミナミは別の解釈をしたようだ。
「そうです!私たち兄妹は、互いのスリーサイズをも把握して、共に風呂に入り、共に同じベッドで眠る仲なんです!」
「お前適当なことを言うな!なんだよ、俺のスリーサイズって!信じるだろ、ルキアが!ルキア、違う、違うから!!」
ミナミがまたバカなことを言い出したため、ルキアに訂正する。
「でも、同じ宿の部屋で寝てる」
「それは、こいつが泣き喚いてうるさかったからだろ!」
「でも、実際寝てるじゃないですか?」
「う、うるさい!お前ら黙ってろ!」
「えっと、仲良いんだね、君たち三人」
や、やばい!完全に引かれてる!!
「えっと、まあ、こんな奴らでもいいなら、俺たちのパーティに、入ってくれるか?」
正直、断られる覚悟でここまで来た。シュガーはともかく、コミュ障と、ブラコンのいるパーティだ。
だが、ルキアは…
「うん、いいよ。これからよろしくね、三人とも!」
なんと嬉しい返答だろうか!このパーティにも、ついにまともな常識のある人間が現れた!
「おう、よろしく。いやぁ、俺も良かったよ、同性の仲間ができて」
「同性?」
ルキアが、なぜか俺に返して来た。なぜだろう。
「いや、ルキア。お前、男だよな?」
すると、予想もしない回答が返って来た。
「僕、女だよ?」
…。
「いや、そんなことないだろ。お前、男だよな?」
「いや、だから女だって。ほら、ここ見て?」
すると、ギルドカードを差し出された。そこに書いてあった性別は…。
「女ぁ!?」
まじかよ、一人称「僕」だから、完全に勘違いしてた!
「お兄ちゃん、もしかしてこの人ボクっ娘ってやつじゃないですか?ファンには、たまりませんね!まあ、私はお兄ちゃんにしか興味ないですけど!」
「ユウマ、泣いてるの?」
「う、な、泣いてねー、泣いてねーよ!」
あれ、条件に書いてなかったか?俺は立ち上がり、掲示板まで見に行った。
そして、俺は目を疑った。
「性別の条件、書き忘れてた!?」
なんてことだ!?俺としたことがてっきり条件が一つ抜けていた!
「ぼ、僕、いない方がいいかな?」
「いや、もう私たち仲間だし」
「そうですよ!ね、お兄ちゃん!」
「あ、うん…そうだな…」
二人の言う通り、今更断るわけにもいかない。
「三人がそれでいいならいいんだけど…あ、それと、僕と仲間になってもらう上で、知っておいてもらいたいことがあるんだけど…」
「知っておいてもらいたいこと?」
「うん、僕…」
そう言った次の瞬間、ルキアの口からとんでもない言葉が飛び出した。
「鬼の一族だから」
『えっ!?』
俺とミナミは、驚きのあまり、間抜けな声を上げた。
「あ、やっぱりダメだよね…昔から鬼だってことを話すと、みんなから嫌われるんだよ」
そう言うと、少し寂しそうに俯いた。
「あ、いや、別に気にしないよ。なぁ、二人とも?」
「そうですよ! 種族の違いなんて、気にしませんよ!」
「うん、気にしない」
正直、もう元魔王を仲間に引き入れている俺たちにとって、鬼の一族なんて大したことはなかった。
「本当…?」
「ああ、そう言っただろ?」
俺がそう言うと、ルキアの目からは涙が溢れた。とっさに顔を俯け、必死に堪えようとした。
「あれ…なんでだろう…止まんないや…涙…」
「ルキア、辛かったんだね」
「そうでしょうね…ずっと種族の違いで嫌われてたんですから…」
二人がそう言うと、ルキアは涙を拭き、笑顔を見せた。
「ありがとう、三人とも。こんなことを言ってくれたのは、君たちが初めてだよ。これからもよろしくね!」
「おう、よろしくな」
「うん、よろしく」
「よろしくです!」
よし、これでパーティ結成だ!そのあと、またもやミナミに頼み、パーティ結成の手続きを済ませた。




